あたいにたりないもの
たりないものだらけ。
あたいにたりないものがあるとすれば
風を纏い 天高く舞いあがる翼と
雷をはなち 螺旋に捻れながらも
まっすぐ尖ったつのと
炎で廻る大車輪のような情熱と
白熊が棲みついた氷山が浮く
きんきんに冷えた頭脳に
水も滴り大河をつくらんばかりの色気と
大陸ぜんぶをひっつけて
パンゲアをよみがえらせたくらいの広大な愛
あたいにたりないものがあるとすれば
それはきっと あたいじゃあないものだ
それがぜんぶ あたいにもあったのなら
そしたらもう
あたいは あたいじゃあなくなってしまう
三日月に欠けたぶぶんが
ぜんぶもどってきたのなら
それはもう満月だし
欠けてるとこまでが三日月なんだって
あたいはちゃんと知ってる
だから あたいは
あたいにたりないものがあるとしても
そのことを
恥じたり 嘆いたり
もうちょっと あれやこれやがあるといいなあって
ないものねだりしながら
欠けてるこのかたちがあたいなんだって
ちょっとサイズがたりない胸をはるのだ
むしろ、なにがあったっけ?