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第8話 アニカとアニタ。


******アニカ



 あの日……、サガルマータ(エベレスト)に穴があいたあの日から、全部変わっちゃった。

 お母さんが病気で死んじゃってから、シェルパをしているお父さんと私とアニタ、3人で暮らしていたのに……

 お父さんを雇った登山家に盾にされて、バケモノに殺されたと――死んじゃったと、お父さんのシェルパ仲間から聞いた。


 アニタといっぱい泣いた。お父さんはもういなくなっちゃった。これからどうしよう。


 3人で住んでいたお部屋の大家のおじさんは、やさしくしてくれたけど私とアニタにベタベタ触ってくるから、止めてって言ったらいっぱい叩かれて追い出されちゃった。


 今日なんか仲間を連れて私達を探していて、逃げたけど追いつかれちゃった。

 捕まっちゃってどこかに連れて行かれそうになったその時、何かがおじさん達に当たって手が離れたの。


 そしたら、突然違う男の人が出てきて私とアニタを助けてくれた……

 ミケさんっていう女の子に抱きついて男の人を見たら、あっという間、本当にあっという間にみんな倒しちゃった。


 アニタもビックリしてるみたい。

 もうダメかもと思ったけど、あの人が助けてくれた。命の恩人だわ。私とアニタの恩人。

 ――いえ、運命の人よ! そうよ、私の運命の人に違いないわ。

 この人ともっと一緒にいたい。ずっといたい。



 アニタが私の服の裾を引っ張っている。


「ねぇ、このお姉ちゃんね、お耳と尻尾があるよ!」

「え? アニタ、何て言ったの?」

「アニタとやら、シーじゃ、シーッ!」


 お姉さんに連れられてあの人の所へ行って、お礼を言ったら「良く頑張ったな」って撫でてくれた。嬉しかったのと安心したのとで、泣いちゃった。……ちょっと恥ずかしい。



******ユウト



「2人の恰好、だいぶ汚れてるな。大変だったんだな」

「そうじゃな。ホテルに戻ってみるか? ここじゃとあのクズ共が戻って来るやもしれんし」


 俺たちは他に知っている場所があるでもなし、ホテルに戻ってみる……

 

 チェックアウトしてから1時間くらいしか経っていないのに門扉に頑丈にチェーンが巻かれていて、しばらく休業の張り紙がしてある。


「あのオーナー、判断と行動力すげーな。……でも、他に行く当ても無いし……忍び込むか?」

「そうじゃな。これさえ越えれば、我が内側からカギも開けられよう」


 入口も目視できるし、ちょっと試しに昨日解放された《転移(トランジション)》を使ってみるか……

 アニカをおんぶし、アニタを片手抱っこ、ニアはずっとスマホにいる、ミケは白狐で頭の上。

 スマホをタップする。


 ヒュッ!


 一瞬でみんな無事に転移できたようだ。

 アニカとアニタは目をきょとんとさせ、何が起こったのか解っていないようだ。


「我のこの扱いはなんじゃ!」


 ミケは不機嫌そうだが……凄いな、転移って。




 2人にシャワーを浴びさせ、とりあえず俺のTシャツを着てもらう。

 こうやって見ると顔立ちも瞳の色もほとんど日本人と変わらないな。

 アニカは美人でおとなしそうだが、しっかり芯はありそうだ。

 アニタは天真爛漫、髪の毛クルクル、見るからに活発な女の子。


 だが、2人には――いや、子供には有ってはならないものがあった。


「2人ともアザだらけじゃないか、ちょっと待ってろ」


 《ヒール》を他人に使うのは初めてだが、効いてくれよ。

 優しい光が2人を包み込むと、アザが消えていく。


「わぁ! 痛くなくなったよお姉ちゃん!」

「そうね。よかったね? アニタ」


 2人が喜んでいると、グゥ~っとアニタのお腹が鳴ったのでパンとケーキを食べさせる。


「我はケーキだけでよいぞ」


 朝、食べただろうに……


 食べながら俺やミケの紹介と、2人の事情を聞いた。


「お父ちゃん……。グスッ」


 まだ幼いアニタにつらいことを思い出させてしまったな……


 気のせいかスマホからも鼻をすする音が聞こえている。


「大変だったな。2人は行く当てはあるのか? 送って行ってやるぞ?」


 クズ3人組から巻き上げた金を差し出す。


「私たちに行く当てなんて……ないです……」


 アニカは俯いてしまったが、意を決したように言った。


「あ、あの! よかったら一緒にいさせてくれませんか? 何でもしますから!」

「いや、俺たちは、あの穴に入りに行くんだ。一回入ったら帰ってこられるかわからないんだぞ?」

「穴にですか……。だったらお父さんの仇をとらせてください!」



「ニアよ、聞いておったか? こ奴らを連れていくことは出来ようか?」


 ここまで黙っていたミケがスマホに話しかけると、ニアが出てきて、2人はまたきょとんとしている。


「はい。大丈夫だと思われます。あちらの世界の人間は生まれた時にスキルを与えられています。おそらくですが、皆さんはあのダンジョンに足を踏み入れた瞬間に何かしらのスキルが付与されるでしょう」


 更に続ける。


「アニカさんとアニタさんも、スキルとユウトさんの保護があれば、ダンジョンを抜ける頃には大人と同等以上の力を身につけられるでしょう。生き抜ける力を」


「ふむ、そうか……どうじゃユウト?」

「そうだな……どうせ行く当てがないなら、生き抜く力を得やすい方に行った方が良いのかもしれないな……」

「ゆ、ユウトさん! ありがとうございます!」

「アニタも一緒? やったー!」


 2人が戻りたいといった時にこちらに来られるように、俺も魔法を鍛えないとな。




「そうじゃユウト、アニタじゃが、こ奴相当目がいいぞ? 我の耳と尾が見えておるようじゃ」

「何!? そうなのか?」

「うん! みえるよー。ミケちゃんね、白いおけけがフワフワなの!」


 ミケちゃん?? ミケちゃん!? いや、そこじゃないか。

 単純に目がいいのか、注意力が高いのか……いずれにしても有望だな。


「アニカは何か好きなこととか、得意なことはあるか?」

「いいえ、私は……」


 自信なさげに俯いてしまった姉に代わってアニタが、


「お姉ちゃんはねぇ、とっても足が速いんだよ~、それにアニタよりもず~っと遠くまで走れるの!」


 自分の自慢の様に誇らしげに教えてくれた。


「ちょっとアニタ!」


 アニカは、恥ずかしそうにアニタをたしなめる。


「お友達のなかで1番なだけ……です」

「男の子にも勝ってるのに~」


 ほう、この2,800m以上の高地で同年代の男子より速く、持久力もあるなんて……


「アニカも凄いじゃないか」

「まあ、こ奴らの得意なところを伸ばしてやればええじゃろ。ユウトも我もついておる! やれるな? おぬしら」


「はい!」「うん!」



「よし、何はともあれ2人の服とか必要な物を追加で買って、今度こそ行くぞっ!」

「「「おーっ!」」」


「あ、うまいケーキは売ってるかの?」

「アニタが教えてあげるね! ミケちゃん!」


 ……締まらんな。


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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