第39話 姉妹だけでの深層フロアボス戦。
「いや~、昨日のミケにはびっくりしたなー、しかし」
「こらっ、言うでない!」
ミケも昨夜の事は覚えているようで、恥ずかしいらしくて慌てて止めてくる。
今日はゆっくり起きて、みんなで朝昼兼ねたブランチを食べている。
ミケは、昨夜俺が飲んでいたのを新手の炭酸ジュースだと思ったので飲んだそうだ。
以前「酒は良かったの~」なんて言っていたのは、盃に注がれて時間が経ってアルコールの飛んだものをペロペロ舐めていただけらしい。
アルコールの飛んだ日本酒を良いって言うのは、俺には考えられない感覚だ……
名前 : ユウト ババ
レベル: 63
スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈9〉
A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐ B・探知〈2〉
名前 : アニカ クマル
レベル: 59
スキル: A・言語理解 A・強靭〈8〉 C・槍技〈9〉 C・光属性魔法〈8〉
C・察知〈7〉
名前 : アニタ クマル
レベル: 59
スキル: A・言語理解 A・感知〈8〉 C・短剣技〈9〉 C・無属性魔法〈9〉
57階層へ向かう前にステータスの確認をする。
当然、かなり上がっている。ガンダーの軍勢5,000を倒したのだから当然だな。
ミケもレベルが64に、【探知】が〈4〉になったそうだ。俺も【探知】〈2〉になっている。
ステータスも確認し、57階層へ向かおうとしたらガンダーの槌が壁に突き刺さっているのを見つけた。
「あー、昨日、風呂を作ったりして忙しくしてたから忘れてたな、……ピッケルもどこかに転がってるはずだな」
「あったよ~、これでしょ~」
アニタが見つけて持って来てくれて、ガンタ―の槌も取りに駆けて行った。
「ぐににに~、ふにー! ……お、重い~、とれない~」
俺が槌を触って《ストレージ》に簡単に収納すると、アニタはその手があったか的な顔をしていた。
56階層を出発した俺達はアニカ達を中心に戦い、順調に進んだ。
マグマを撒き散らしながら転がってくるマグマヘッジホッグや、先に炎のついた尻尾を振り回してくるフレアリザード、口から火炎放射をしてくるフレイムバイパー。
これらのモンスターを狩り進め、59階層も掃討し、60階層を目前に1泊した。
暑かった。風でバリアしなかったら、とても寝ていられなかったな。
気力体力スタミナ、充分に回復した俺達は、朝からフロアボスに挑む。
扉を抜け、60階層に入ると、一面にマグマが広がり、ボコボコとマグマの湧く音がしている。
暑い。最高潮に暑い。汗が噴き出し、シャツが肌に貼り付く。
そのマグマ地帯の中央には、まるでステージの様に平らな円形の地面があり、そこには真っ赤な鱗で、全身に炎を纏った大型のトカゲがいた。
「サラマンダーか……」
全員に《ストームフィルム》で膜を張り、《フライ》で天井付近まで飛んで作戦会議をする。
「アニカ、どう見る?」
「はい。見た感じだと火も吐きそうですし、リザードとおんなじで尻尾の攻撃もある。引っ掻きもありそうですし、立って来るかもしれませんね」
うん、冷静に観察出来てるな。
「どう戦う?」
「基本は同じですね。相手は大きいのでバランスを崩してから《ライトバインド》で拘束してひっくり返す。そしてお腹への集中攻撃。問題は私とアニカの攻撃力ですね……」
アニカは、アニタを見つめて続ける。
「アニタの《ブースト》の魔法で身体・感覚・武器を強化して武技を叩き込めれば、そんなに時間も掛からないと思います」
「うん、合格だ!」
「いや、我に参加を頼めば一瞬で決着がつくぞ? まだ甘いの~?」
「いや、合格だ」
「なっ?! 何故じゃ!」
不服そうなミケは置いておいて……
「アニタはどうだ?」
「お姉ちゃんのゆー通りにする~」
アニタは何も考えていないか……
アニカとアニタの2人に戦闘を任せて、俺とミケはそのまま天井付近で観戦する。
ミケは白狐姿になり、自分の足爪を天井に引っ掛けて蝙蝠のように逆さづりになりプラプラ揺れながら見ている。
……そんなことも出来るのか、器用なもんだ。
アニカとアニタは、直前に2人で軽く打ち合わせをしてから戦いに臨んでいた。
普段ならアニカが敵の注意を引き、アニタが周りをうろついてアタックするのだが、今回は逆の様だ。
「こっちだよ~! こっちこっち!」
アニタがサラマンダーの前をうろちょろして注意を引いている。炎や攻撃を避けながら器用に動いている。
徐々にうろちょろする範囲を拡げていくと、サラマンダーも身体だけではなく首も大きく振りながらアニタの姿を追い始めた。
そして、アニタが《トランジション》でサラマンダーの視界ギリギリの所に転移して、それに追いつこうとしたサラマンダーが半身を上げて大きくバランスを崩した。
「《ライトバインド》!、アニタ、ナイス!」
ドーーーーン!
サラマンダーがひっくり返ったところで、2人でしばらく集中攻撃を叩き込む。
そして……
「貫通撃!」
「すくりゅ~~しょっとー!」
「トルネードショットッ!」
「ダブルらんぎり~」
「ぎいぇぇェェエエエエーーーー!」
無事に2人だけでサラマンダーを倒すことが出来た。
「2人とも無傷で撃破だな。よくやったな」
「うむ。よくかわしきったな」
「えへへ、ありがとうございます!」
「ます~!」
2人だけで深い階層のフロアボスを倒せたという事で、だいぶ自信がついたことだろう。
頑張った2人に便乗する形で、皆でジュースを飲んで一息つく。
アニカとアニタもレベルが60を超えただろうな、よしよし。
「よ~し! この調子でドンドン攻略していくぞー!」
「「「おーーーー!!」」」
「さぁ! アニタ、一緒に頑張ろうねっ?」
「うん! いけいけだ~!」
俺達は意気揚々と61階層へ下りて行った。
「びえ~~~~!いやだ~~~~~、ごわいよ~~~~~、おうぢがえる~~~~!」
「ユユユユユ、ユウウウ、ユウトトトさん~ん、……たた、たすけてーぇえぇえ!」
アニタはギャン泣きで治まる気配がない。
アニカはブルブル震えて俺の後ろに隠れていて、使い物にならない。
ミケは……?
「あんな臭いヤツに触りとうないー!」
……ダメだこりゃ。
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長編小説です。
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