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第31話 ミケのかくしごと。


 ドガーン!ドンッドンッ、ドガーン!


 まあ、予想はしていたのだけれどね……。朝っぱらからうるさい!!

 振動も伝わってくるし。


「アニタったら、こんな騒音の中でよく寝てるんだから……」

「むにゃ~」

「むむむ~、うるさい奴らじゃ、どうじゃ、懲らしめに行くか?」

「いや、まずは朝食を食べてゆっくりしよう。どうせ今日も大変になるんだろうし」




「――で、準備はできたぞ。どうするのじゃ?」

「岩壁を一気に取り除くよりも、ちょっとしたスペースを作って呼び込めばやりやすいだろうな」



 そうしてスペースを作って待っていると、ぞろぞろと列を成してライノが入ってきた。


「ライノだと2~3体でスペース一杯になるな」


 ライノの防御力というか皮膚の固さはワイバーンと同じくらいだな。ワイバーンにダメージを与えるのに苦労していたアニカやアニタは、レベルが上がって少し楽になったようだ。

 ライノを倒して収納、そしたらまたライノが入って来る、倒す、収納を繰り返す。



「なぁ、ミケ? 下の階層を見に行きたいんだけど、俺通れるかな? このスロープ」

「無理じゃろうな。(ひし)めきあっておるこ奴らの上を飛び抜けるのは。……じゃが、我なら出来るのではないか?」


 結局姿を隠せるミケが白狐になって、大群をすり抜けて偵察してきてもらう事にした。

 その間は3人でライノを相手していく。




「戻ったぞ!」

「――うわぁ! ビックリした~。後ろに回り込むなよー」

「ははは、アニタは気付いておったぞ?」

「で、どんな階層だった?」

「黒いゴツゴツした岩場が広がっておった。所々に溶岩が湧いておったのぅ」

 

 溶岩地帯か……


「モンスターは?」

「う~ん、恐らくじゃが、トカゲみたいなのがダンジョンのモンスターだろうな。他には一本角の一つ目の巨人がおったな」


 一つ目と言うと……サイクロプスか。


「で、どのくらいの数が来てる?」

「いっぱいじゃ。溢れかえっておる。あの“馬鹿”の時以上じゃの」


 うげぇ、あれ以上か……


「今と同じように、我だけ行って最後尾から攻めても良いか?」

「ああ、頼む。無理しないで途中途中で戻ってこいよ?」

「ケーキか!?」

「違う違う! どんな様子か教えてくれってことだよ! ……さっき食べたばかりだろー」


 ミケは再び姿を隠して51階層に向かった。



******51階層、ミケ



「ここが最後尾かの? ……よし、ユウトも来てはいないな。……やるか!」


 最後尾で気を抜いてブラブラしておる連中は格好の練習相手じゃ。


「ほれ《ファイアボール》、あっちにも《ファイアボール》! ……やっぱり火の玉はかっこいいの~、それにライノに使った時よりも大きくなっておる気がするのぅ」


 まあ、まだそれほどの数を放てないが、ニアもレベルが上がればもっと使えるようになると言っておったしな、練習あるのみじゃ。



******アニカとアニタがニアから魔法についての独り言を聞いていた日の深夜



「ぉぃ」


 ミケがスマホに向かって小声で話しかける。


「ミケさん、なんでしょう?」

「我もお主の独り言を聞きたいのじゃが……」

「――? ミケさんには雷があるじゃないですか?」

「そうなのじゃが……。て、適性が出てなくてもできるかの?」

「ええ、それは大丈夫ですよ。適性は伸びが良いものを表しているのですから、無くても練習次第で使えるようになりますよ?」


 ミケの顔が嬉しそうに明るくなる。


「そうか! 実はのぅ、火を使いたいのじゃ」

「火属性魔法ですね。どうしてですか?」

「誰にも言うでないぞ? ……か、かっこいいからじゃ」

「…………」



 それから数日、深夜になるとニアの独り言と、ミケの練習の時間が続いた。


「ふぬ~ぅ! 《ファイア》」


 ぽわっ


「あ! 出ましたよ! ミケさん! やったー!」

「こら! し~っ! し~っ! みんなが起きてしまうじゃろ?」

「すみません! 嬉しくてつい……。早くみんなに教えましょう?」

「ま、まだじゃ。もっと出来るようになってからじゃ。それまでは内緒じゃぞ?」



******51階層、グンダリデ



「ライノが進んでいるという事は、壁を壊せたという事だ! どんどん進め!」


 グンガルガが気になるのでいつもより前方で指揮を執っているけど、進みが遅い!

 この軍勢が上に行くのにどれだけ時間が掛るか分かったもんじゃないわ。


「グンダリデ様! 我が隊の後方で何か騒ぎが起こっております」

「何!? こんな時に……。おい、お前! 見て来い!」

「はっ」



 物見に出した配下が戻ってきた。

 上にいたはずの獣人の幼子がまた暴れているそうだ。


「どこから湧いたのだ! ここには我々がいたから通りようがないだろうが!」

「そ、それは……」

「それに火魔法だと? 獣人のくせに器用な事をしおって!」


 は~っ、配下に当たってもしょうがないか……


「仕方ない、私が向かう。何人かついて来い」



******ミケ



「ほれっ、ほれぃ、《ファイアボール》《ファイアボール》――むっ?」


 誰かが向かってくるのう。……10人程か、1人強者がおるな。

 我がやっても良いが……。一応ユウトの所へ戻るか。



******50階層、ユウト



 入ってきたライノと魔人族を片付け続けていると、ミケが戻ってきた。


「お~、お疲れー。どうだった?」

「魔人族とサイクロプスを狩っておったが、いかんせん数が多すぎる。減った気がせなんだ」

「ほぉ、サイクロプスとやったのか? どんなだった?」

「3体じゃがの。まぁ、力押しの体力馬鹿じゃ。木や腕を振り回して叩いてくるぞ。アニカ達は倒すのに時間が掛かるだろうな」


 魔人族もまっすぐな角の奴らだったそうだし、この部隊はパワー系の部隊か。


「あとな、おそらくじゃが、相手の指揮官がおったぞ。1人だけ抜きん出て強そうじゃった。我のおった後方に向かって来たから戻ってきたのじゃ」

「雷は使ってないか?」

「う、うむ。使っておらん。肉弾戦だけじゃ」

「そうか、考えてみれば51階層には蓋をしてないから、攻勢に出る前に蓋しておきたいな」


 逃げられでもしたら面倒だし、あの数の敵を後回しにするよりも余裕のあるうちに潰しておく方がいい。


「蓋をするには俺が行くしかないな」

「我もスロープを下りた所で、奴らがこちらに登って来ないように邪魔してやろう。援護じゃ。それに……、その指揮官を釣れるかもしれん」


 今いるライノは無茶さえしなければアニカ達で十分倒せる。


「アニカ、アニタ、また一網打尽作戦みたいな事するから準備に行ってくる! その間無理せずに凌げよ?」

「はい、わかりました!」

「いってらっしゃ~い」


 よし、2人は大丈夫そうだな。


「ミケ、じゃあ行くか!」

「おー!」


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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