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第3話 白狐様、憑いてくるって。


******カストポルクス



 地球とは異なる次元にある星、カストポルクス。

 地球より一回り小さいその星には、ヒト族とエルフ・ドワーフ・獣人、さらに魔人族やモンスターが存在する。

 大地は小さな島々を除いて、魔人族に完全に掌握されている魔大陸と、それよりも大きいが魔人族の侵攻を受けているユロレンシア大陸とに分かれている。



******魔王城



 魔大陸にある魔王城では魔王メルガンの座る玉座の前に、4人の配下が膝を折りメルガンを仰ぎ見ている。

 魔人族を魔人族たらしめるのは、対になっている角を持つことである。

 その大きさによって“力”を、カールの具合によって“魔力”の大小を、それぞれ示す。

 魔王メルガンは大きく、そして見事にカールした一対の角を、ウェーブのかかった深い青色の髪の間から覗かせている。



「さて、皆の者。ようやく父……いや、先代魔王の(かたき)であり、我が魔人族の覇道の最大の障壁となりうる憎き勇者バハムートの魂の居所がつかめた。あ奴め、全く関係ない世界に飛ばされておったわ」


 バハムートは、先代魔王がユロレンシア大陸に大規模侵攻をしかけた際に、魔人族以外の種族を束ねて抵抗し、激闘の末に相討ちという形で先代魔王の野望を阻んだカストポルクスの英雄だ。


「異なる世界におるとはいえ、奴は我らの最大の障壁に変わりはない。我は万に一つの障壁も許さん。……よって、我が四天王筆頭、<力>のガンダー!」

「はっ」


「お前にはバハムートの魂を持つ者の討伐を命ずる。メルティナの作る道が繋がるまでに軍団を招集せよ」

「ははぁ」



「第2席、<魔法>のメルティナは我の魔力も使い、かの地に道を繋げよ!」

「はい。お姉さま」



「第3席、<謀略>のテミティズはそのままユロレンシア大陸への侵攻を継続。ユロレンシア側に道を開くゆえ、万全な候補地を選定せよ。早急にな」

「しかと拝命致しました」



「第4席、ドラゴニュート――龍人族――の王、ハウラケアノスは配下のドラゴンと共に魔大陸全土の警戒をせよ」

「御意」


 4人は終始姿勢を崩さずに命令を受け、散開した。



******ユウト



「今日もいい天気だ。……いるかぁ? ミケ」


 昨日の色々な衝撃的な体験がありすぎて、だいぶ寝過してしまった俺は遅い朝飯と買い物を済ませて昼過ぎに神社に着いた。

 社殿にはもう巫女姿に変化しているミケがソワソワしている。

 お供えものを入れてきたエコバッグを社殿の端に置かせてもらい、早速試し打ちだ。


「おお(贄が)来たか、(贄を)待っておったぞ。今日も魔法とやらをするのか?」


 チラッ


「見物しながら(贄を)待つとするか」


 チラッ


 昨日と同様――まだできない魔法もあるが、試し打ちをする。


 

 しばらくして、「あれ? バッテリー残量が少し回復してないか?」と、1%ずつ回復しているのを発見した。


“周囲に漂うエネルギーを取り込んでいますので、少しずつですが回復します”


“昨日からそうですよ?”



 魔法に関しては、火・水・地・風属性はそのままそれぞれの現象を操り、光属性は治癒や浄化、闇属性は影の操作や対象の精神や感覚への干渉などが出来るそうだ。

 そして、無属性魔法は肉体や物質の強化や空間を操作して収納や移動ができるとの事。


「無属性魔法が俺の性に合ってそうだし役立ちそうだな」



 小一時間ほどした頃、背後から「ユーウート~~~~! 贄はまだか!」と怒声が飛んできた。


「あ! 悪い悪い。ちゃんと持ってきてるよ」



 ミケのために用意したお供え物をエコバッグから取り出す。


「まずは……、お供えといったらこれだな! 油揚げ――」


「――いらんいらんいらん、いら~ん!! どいつもこいつも油揚げ!! 白狐が油揚げを好きだと言ったのは誰じゃ!! 天誅じゃ!! ○~す!!」

「おいおいおい。ゴメンゴメン悪かったよ。それだけじゃないぞ。はい、甘い物」


 同じくスーパーで買った、小さめのケーキが6つ入った詰め合わせパックを渡した。

 すると、今まで怒りで(たけ)っていた表情が一瞬でパァッと明るくなった。


「はわぁ~、ユウトよ、何じゃこの白やら黒やら黄色いのは~?」


 ショートケーキにチョコケーキにモンブランだな。見たことなかったかな?


「ケーキだよ。甘味ってやつかな。フォークでどうぞ」

「甘味とな~。我が知るのは大福やおはぎ、だんごくらいじゃぞ。はわぁ~、食べてもよいか?」


 ケーキを一口食べた瞬間。つやつやの髪や立派な尻尾がゾワゾワと逆立った。


「あまーーーーーーーーーい!! 美味じゃ美味じゃ!!」と至福の表情になった。



 あっという間に6個全部を食べ終えたミケは、幸せそうな顔で言った。


「はー美味じゃったなぁ~♪ これまで、たまに贄があったと思えば米や野菜、甘味はもっと稀で、あんこやみたらしじゃった。あ、酒は良かったの~。じゃが、こんな美味なる贄は初めてじゃったぞ。ユウトよ!」

「ミケに喜んでもらえて良かったよ」


 そのまま俺は、両親はもう亡くなり独り身の暮らしをしていることや俺の身の上話をした。

 ミケはこの地に来てからの1000年余りのことなど、とりとめもなく会話した。




「おっ、もうこんな時間か……」


 帰ろうかな? と考えていると、ミケが俺の顔をジィーっと見つめて言った。


「よし! 決めたのじゃ! 我はユウトに憑いてゆくのじゃ」

「えっ!? ついて来るって……家に?」


 ミケは、文字通りキツネにつままれた様にしている俺をマジマジと見ている。


「そうじゃ。我がお主と暮らしてやろう」

「いやいや、家には祠なんてないぞ。……あ、神棚はあるか」

「祠も神棚もいらん。お前がおるし、贄があればそれで良い、お前に憑いてゆくのじゃ」


 なんか微妙に話が噛みあってないような気がする……


「待て待て。神棚も要らないで俺についてくるって、もしかして取り憑くってことか?」

「そうじゃが? 害なんぞ何もないぞ。始終くっついているわけでもないのに……。なんじゃ、嫌なのか?」


 シュンとして聞いてくるので、ちょっと可哀そうな気がしてくる。


 聞くと、ミケはこの社殿にいただけで、別に『ここら一帯を守護している』とかでは無かったようで、ここからいなくなっても地域に害は無いらしい。


「……わかったよミケ。よし! じゃあ一緒に俺たちの家に帰ろうか」

「おー!」


 嬉しそうにしながらついてくる。


「あー、ミケ? その恰好だとご近所さんに見られたらややこしいから、戻ってもらっていいか?」

 

 事案や通報案件はごめんなので、立派な猫で通そう。

 ミケは白狐の姿になって俺の肩にちょこんと座ると、「ふふ~ん」と嬉しそうに鼻を鳴らした。


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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