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第21話 見えない所から来るモンスター。


 久々の風呂を満喫してリフレッシュ出来た俺達は、気持ちも新たに早朝から31階層へ降りた。


「ありゃ、森は終わっちゃったか……」


 目の前には、砂漠と岩、見渡す限りの荒野が広がっている。

 また天井が高くなっていて、鳥型のモンスターが飛んで大きく旋回しているのが見える。


「鷹か? 鷲か?」

「ねぇねぇ、何かいると思うんだけど見えないよ? どこだろ?」

「おいユウトよ、真上から何か来るぞ! 散るのじゃ!」


 ドガーーーーン!


 ミケの言葉で俺達が散った瞬間、階層に入ってすぐの岩場に何かが落ちて来て大穴が開いた。

 穴からはデカイ鷲が、ゆっくりと羽ばたきながらせり上がってきた。


「デカイ! 飛ばれるとまた面倒だぞ」


「あれは、スティングコンドルです。上空から一直線に獲物に突き刺さって来ます」

「厄介そうだな。まずは俺が翼を奪うから、落ちたところをやってみろ」


 アニカとアニタに指示を出す。


「「はい!」」


「ミケは、他のがまた上からとか周りから来ないか警戒してくれ」

「任されたのじゃ」



「じゃあ、コイツは炎で攻めるか」


 ファイアブレードの上位魔法である《フレイムブレード》を、囮として奴の頭上に飛ばして上への逃げ道を押さえ、《フレイムランス》を2つ、両翼目がけて放つと、片翼にヒットし燃え上がる。


「落ちるぞー」

「はい! アニタ、私が先に行くからトドメを刺してね! ……燕返し!!」

 

 斜めに斬り込んだアニカの薙刀が、Vの字を描くように斬り上がってスティングコンドルの胸を斬り裂いた。


「よ~し! 二刀流のすらっしゅー!」


 それに続いてアニタが、両手に持ったククリナイフで、下から上へとスラッシュを放つ。


「あ~んど! ふぁるふぁる~」


 あ~やっちゃってるよ、おい。……まあ、スラッシュでトドメになってるからいいか。


「終わったか? ユウトよ」

「ああ、ミケが気付いてくれて良かったよ」

「うむ、気配はあるがなかなか見えにくい敵もおったぞ。2体ばかり倒したが」

「ミケさんが倒したのはアサシンホークというモンスターです。姿を隠して飛び、死角から鋭い羽根で斬り裂きます」


「今のといい、アサシンホークといい、見えにくい敵だな。俺も《ディテクトマジック》で探知しとくか」

「アニカは自分とアニタに《ライトフィルム》で防護膜を張っとけよ」

「はい!」


「あと、アニタはファルファル禁止な」

「え~~~~~~~~!」



 31、32階層はこの2種類に加えて、毒を持つポイズンホークとスティングコンドル以上の速さで飛び回るソニックコンドルが出た。

 見つけたら俺とミケが翼の自由を奪い、姉妹が命を奪うパターンで倒していった。



 33階層に降りて来たが、あいつらは見当たらない。


「あれ、ここにはいないようだな。……でも魔力の反応はあるぞ?」

「ほんとだね~見えないね~? あー、下かも知れないよ!」


 確かに微かに振動が伝わってきて、徐々に強くなっている。


「近づいておるぞ。合図するから、また散るのじゃぞ。……3、2、1、今じゃ!」


モコモコモコッ!


今度は大穴をあけて巨大モグラが飛び出してきた。


「モールだったか、潜られる前に仕留めよう!」


 闇魔法の《コンヒュージョン》で混乱状態にすると、モールはひっくり返って手足をバタバタさせている。


「おっ! これは有効だな。ミケは新しい気配があったら雷を地面に撃ってみてくれ、効くかな?」

「ある程度は地中まで届くから効くじゃろ。後は強弱だけじゃ。効き過ぎると出て来られんじゃろ?」


 ああ、そうか。なんて話している内に姉妹が倒している。



 ニアによると、あのモグラはロックモールというモンスターで、目が退化したぶん周りの魔力の動きを感知する器官が発達しているという。

 そして、岩をも砕く鋭い爪を持ち、獲物を死角から突きあげて仕留めるらしい。


「今度は下からか……。でも感覚を乱す闇魔法は有効だったな。あとは、隠蔽系だけど……まだレベル的に使えないな」


 それからも色々と対処法を試しつつ倒していく。


 モールが飛び出てくる直前に壁を作って勢いを削ぐには、土の《ウォール》でいいのか、《ロックウォール》の方がいいのか? そして、止めるには何枚の壁が必要か。

 水攻め、火攻めはどうか? 等々試している。



「結果としては、ロックウォール2枚で止められて、フレイムウォールに突っ込ませれば弱るし、闇魔法で感覚を狂わせるのも有効だな」


 対処法を決めた俺達は、33階層を狩り尽くし、34階層へ降りた。


 34階層はロックモールに加えて、ワームという大きいミミズ系モンスターがいた。

 掘り進んで来るモールとは違い、ワームは土や岩を口に取り込み排泄しながら進むということを学んだ程度で、特に対処法は変わらなかった。



 31階層から目視で発見しづらく、注意力が必要なモンスターばかり続いているので、昼食がてらひと休みする。



 名前 : ユウト ババ

 レベル: 24

 スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈8〉

      A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐ C・察知〈4〉 


 名前 : ミケ

 レベル: 27

 スキル: SS・操雷〈10〉 A・言語理解 C・察知〈6〉

        

 名前 : アニカ クマル

 レベル: 28

 スキル: A・言語理解 A・強靭〈3〉 C・槍技〈5〉 C・光属性魔法〈5〉

      C・察知 〈1〉


 名前 : アニタ クマル

 レベル: 29

 スキル: A・言語理解 A・感知〈4〉 C・短剣技〈5〉 C・無属性魔法〈4〉



「集団戦やゴブリンキングとの戦闘で、相当レベルが上がってるな」


「アニタいちば~ん!」

「そうだな、よくやってるぞ。でもアニカも察知を身につけたし、光属性が5になってるな、すごいぞ」


「お二人の10歳、7歳という年齢を考えると、当然同年代最強ですよ」

「じゃろうな。ほぼ戦いに明け暮れておるからなのう」


「アニカは《ハイヒール》も使えそうだな。使う機会はまだ無さそうだが」

「はい、これまで通り照明や防御系で熟練度を上げていきます」


 自信がついたのだろう、出会った当初から比べて、もっとしっかりしたお姉さんになってるな。


「アニタはもう少しで《フィジカルアップ》から《フィジカルブースト》に上げられるかな。《フライ》ももうちょっとだぞ?」

「うん! とびた~い!」



 35階層からは再びコンドル、ホークも出てきて上も下も注視しながら進んだ。

 4人1組を崩さず、ミケとアニカが空、俺とアニタで地面の索敵をしつつ狩り続ける。


 37階層の奥に進むと、新たに額から一本角の生えた黒いウルフ型モンスターが出て来た。

 荒野には似つかわしく無いなと思いつつ相手をするが、弱かった。



「あれ、ユウトお兄ちゃん!」

「どうしたアニタ?」

「あのオオカミ、消えないよ~?」


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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