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第19話 パーティーみたいに戦ってみるか。


 ジャイアントオークの襲来に文字通り叩き起こされ、それを撃退した俺たちは準備を整えてから25階層へ進む。

 これまでの階層は手前の草原と、奥には3mほどの木々の森だったが、それは巨木の森に変わった。


 モンスターも巨体のジャイアントオークや、ゴブリンジェネラルといった2~3m級と、その巨木の間を飛び回るジャイアントモンキー、ロングレッグモンキーなどが増えた。

 アニカとアニタも地上に撃ち落とされたモンキー共はもちろん、ジャイアントオークも――時間はかかるものの――単体で倒せるようになった。


「ゴブリンジェネラルは素早さもあり、知恵も多少あるから、1対1ではまだ難しいな」

「はい、2人でなら何とかなりそうなんですけど……、私やアニタだけだと……」

「なんかね~、引っかかってくれないの。フェイントとか」

「ビシッとやらんからじゃ。ビシッと!」

「お前だけだよ、この中でビシッと雷を撃てるのは……」



 ここら辺まで来ると、ニアが言っていた薬草類が見つかるようになってきた。中級以上のポーションやマジックポーションという物の材料になるらしい。

 バハムートは王族だったから詳しい素材までは知らないみたいだ。

 なかなか高価な物だと聞いてからは、はぐれないように広がり、索敵しつつ採取していった。



 昼休憩を挟んで29階層へ到達。


「ちょっと中途半端な時間だな。頑張って30階層をクリアしてからキャンプだな」

「さっきの階層からあのデカイ、ゴブリンジェネラルが率いる集団と戦うことが増えたのぅ」

「そうだな。少し知恵のある奴がグループを作ってて、バラバラにうろつかなくなってるな」


 ゴブリンジェネラルがジャイアントオークやハイオーク数体を率いて小集団で動いているので、こちらがバラけて進むと一対多、二対多の戦闘になってしまうのだ。

 俺やミケならばそれでもやり様はあるが、アニカやアニタにはまだ慣れが必要だ。


「次のフロアボスがさ、1体のデカイ奴だったらアニカとアニタをアタッカーにしてパーティー戦にするから、ここで練習して行こう」

「ほぉ、その時我らはどうするのじゃ?」

「ミケは白狐になってもらって、攻撃を回避しつつ敵の気を引いてもらう。俺は一番後ろでフォロー係だ」

「了解じゃ。じゃが、ここで我だけで練習してきてよいか?」

「いいよ。ここは俺が盾役するから、一人で暴れてきたら?」

「うむ。では後での。――あっ! 魔石を入れる袋をくれぬか?」

 

 ミケは、ボワンッと小さい白狐の姿になり、袋を咥えて階層を駆けていった。



 俺達も3人一組でモンスターの小集団を探す。


「お兄ちゃん見つけたよ~。こっちとあっちにいる。どっちいく?」

「多い方」

「は~い。行こ! お姉ちゃん」



 アニタが見つけた2つの集団を片付けると、別行動のミケが戻ってきた。

 パンパンに膨らんだ袋を咥えて、前足や胴体に大量に浴びた返り血を体をブルブルして撒き散らしながらの帰還だ。


「雷の音がしないと思ったら、小さいままで肉弾戦か?」

「まあの。攻撃を避けながら斬り裂いておったら血塗れになってしもうた」


 《清浄(クリーン)》をかけると、艶のある綺麗な白い毛並みに戻った。


「もうここにはモンスター共はおらん。一気に行ってしまおうぞ」

「そうだな。ミケのおかげで随分時間を節約できたな」



 

 30階層の扉を開けて入る。


「フロアボスの部屋は森じゃないんだな」


 奥の扉の前に1体のモンスターが胡坐で座っている。


「ゴブリン系だな。ジェネラルか?」


 そいつがゆっくりと立ち上がる。


「おーおーおー! でかいな! ジャイアントオーク以上だぞ。ニア、キングか?」

「ゴブリンキングです。攻撃力も然ることながら、体の皮膚が厚く固いので防御も強いですよ」


 ジャイアントオークとは違い、引き締まった体をしている。ごつごつとした金棒を持っている。


「絶対速いぞ! 気をつけろよ!」



 ドスドスとこちらに走ってくる。やはり身のこなしは軽いな。


「さて、まずはその防御力を見せてもらおうか。ミケ! 気を引いてくれ!」

「よし」


 アニカとアニタも準備万端でいつでも行ける。


 ミケがヒュンっと一見無防備にゴブリンキングの顔の前に飛び出ると、ゴブリンキングは一瞬そちらに気を取られた。

 その瞬間にミケは空を蹴って姿を消し、俺はそれに合わせて光魔法の《フラッシュ》を発動させる。



******少し前



「なあ、ミケ」

「なんじゃ?」

「ミケって、消えることが出来るだろ? あれって、本当に消えてるの? 見えなくなってるだけ?」

「見えなくなってるだけじゃ。耳や尻尾を消しても実際にはあるのじゃ。アニタが見つけたようにの」


「なんだ、ミケのいた場所に《フラッシュ》打てれば、眼潰し出来ると思ったんだけど……」

「ほう、よいではないか。何も、見えなくなるだけが“消える”ことではなかろう?」

「どーゆーこと?」

「我は(くう)でもう一段動けるぞ。それでそこから居なくなれば“消えた”ことになるじゃろ? ほれ」

「おお! これ、使えるな。」



******今



 ピカッッッッ!


 ミケに焦点を合わせるつもりが、《フラッシュ》に焦点を合わせてしまったゴブリンキングは、金棒を手放し、両手で目を抑えてもんどリ打って倒れた。


「グガー! アーーー! グワァーーーーー!」


「ダブルスラッシュ!」

「れんげき~! とうっ!」


 アニカとアニタは両サイドに分かれ、キングの首筋めがけて現時点で最強の技を打ち込み、素早く退く。


「グヲーーー!」


 ミケは敢えて攻撃しない。


「情報通り固いな」


 ゴブリンキングの首筋には浅い傷しかつけられなかった様だ。



 ゴブリンキングが涙を流しながら手探りで金棒を探すが、ある訳無い。

 俺が《ストレージ》へ入れたのだから……

 金棒(武器)もダンジョンモンスターの一部と見做されるようで、ゴブリンキングが死んだら消えるらしいが、使われたら面倒だ。


「もう一丁!」


 アニカが立ち膝になったゴブリンキングの背中にダブルスラッシュを打ち込む。


「ぱられるすらっしゅー」


 アニタは足首を狙って技を放つ。


 しかし、これも傷つく程度だ。

 《フィジカルブースト》と武器への《マテリアルブースト》も当然掛けている。

 ゴブリンキングは立ち上がって、柔道家の様な構えをとる。


「仕方ない。ちょっと大人しくなってもらおう」


「《スロウ》《パラライズ》」

 

 闇魔法の重ね掛けだ。

 ゴブリンキングは低い呻き声を上げ、膝をガクガク揺らしながらも、なんとか立っている。

 麻痺で三半規管が揺らされたような感覚になるだろうに、よく倒れないな。……だが倒れないようにするので精一杯みたいだ。


「さあ、動きが止まったぞ。皮膚への攻撃が通りにくい相手だ。どうする?」


 アニカとアニタは少し考えて、お互いにアイコンタクトを取って行動に移した。

 ゴブリンキングの後ろへ回り込み、ひざ裏に攻撃を叩きこむ。

 3m超もあるゴブリンキングだが、カックンと膝が折れ、ドスンと立ち膝になる。

 すかさず前へ回り込み、焦点の合っていない――泳いでいる――目に向かって技を繰り出す。


「二段突き!」

「れんげき~」


「ヴァァァァーーーー」


 頭部への攻撃を受け、仰向けに倒れた相手に対して、2人は手を止めずに容赦なく目に攻撃を打ち続けていく。


「うわぁ、ちょっと同情しちゃう……」


 2人の血も涙も無い攻撃に、ゴブリンキングは力尽き、アニカのこぶし大の魔石を残して消えた。


「これ、誰が教えた?」


 引き気味に小声で言ったはずなのに、聞きつけたミケが言い放った。


「お主じゃ」


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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