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第17話 景色が変わって嬉しい。


 20階層をクリアした俺達は、小休止を終え21階層へのスロープを下りた。


「おお!」

「ほぅ! これは……」


 それぞれが感嘆の声を上げる。


 1階層からここまで、ずっと洞窟のようなところを進んできた。

 今、目の前には草原、そして奥には低い森が広がっている。


「わあ! ユウトさん! 明るいですよ!」

「お外みた~い! あっ! あれは鳥さんかな?」



 ニアが言うには、アニタが気づいた通り鳥系のモンスターがいるらしい。

 他にもヘビ系と、森にはサル系のモンスターがいるそうだ。

 鳥やヘビといった飛べたり発見しにくいモンスターがいること、そして俺が天井を気にせず飛行できるほどの高い空間……


「こりゃ高い確率で取りこぼしが出るな。階層間は厚めに塞がないとな」

「で、ニア。ここはどうして明るいんだ? 夜にもなるのか?」

「ここは壁面や天井に、魔力に反応して光る苔がびっしりですから明るいんです。モンスターを倒していって、溜めこまれた魔力が尽きるに従い徐々に暗くなります」

「太陽的なものがあるわけじゃないんだな」



 アニカは不安そうな表情で辺りを見回している。


「どうしたんだ? アニカ」

「……あの、私……へ、ヘビが苦手なんです! う~~」

「アニタは平気だよ~」


 身震いするアニカを見て、この娘はヘビを克服できるのだろうか? と不安がよぎる。



 どうしても不安だというアニカをおんぶして飛行し、空中からノイジークロウというやたらとうるさいカラスの様なモンスターや、草原をうろつくウルフ共を倒していく。

 ミケとアニタは、地上で俺が落とした魔石を拾いつつ、ブラッドスネークやポイズンスネークを狩りながら追ってくる。



 森の入り口付近に降りると、程なくミケとアニタが追いついた。

 アニタが笑顔で「こんなに魔石とれたよ~」と言っていたが、笑顔のまま急にドサッと倒れた。


「おいアニタ!」

「アニタ! どうしたの?」


 アニカが青ざめた顔で駆け寄っていくと、アニタの足首付近に傷を見つけた。


「ユウトさん、これ……」


 ヘビに噛まれた痕だ。


「何じゃアニタめ、噛まれておったのか」

「ニアの言っていたポイズンスネークか……。アニカ、心配するな。すぐ助けるから」


 光属性魔法の《デトックス(解毒)》《ヒール》で回復させると、アニタは起き上がり心配する姉に声をかける。


「ヘビに噛まれちゃってた~、てへっ」

「心配したんだからね! この馬鹿アニタ!」



 少しの間アニタの体調を窺って、大丈夫そうだったので森に入る。

 アニカは、ずっとアニタがヘビに噛まれないように警戒し、自らヘビを探して歩いている。

 ヘビが苦手なのに妹の為なら向き合うか……、お姉ちゃんって強いな。



「あっ! お姉ちゃんあれ!」


 足元ばかり見ていたアニカは、アニタの声に導かれ顔を上げると――


「わぁ~! 実が生ってる! 果物ですかね?」


 森の木々には鮮やかなオレンジ色のバナナのような実や白いりんごのような実が生っている。


「あれらは果物で、もちろん食べられますし、木の根元にはキノコもありますよ。ただし、どちらも黒い物には毒がありますのでご注意を」

「じゃあ少し貰っていこうか。もともと果物は少なかったし、現地調達だな」


 俺がそう言う前に、ミケとアニタが木に登って実を採ろうとしている。


「これは我のじゃ!」


 急にミケの声がしたので、そちらに目をやる。

 よく見ると、ミケが果物をめぐってフォレストモンキーと喧嘩になっている。

 まあ長くは続かず、猿は雷一撃でさらさらと消えていったが。



「ニア、あと何か食べられたり、役に立ちそうなものはあるか?」

「この階層にあるか分かりませんが、一般的にダンジョンにはダンジョンにしかない薬草、つまり薬の原材料になる草花がありますよ。探してみてもいいかもしれません」


 ニアに薬草の特徴を聞きながら探していたが、なかなか見つからない。

 この階層には無いのかもな……



 森を進むと少し開けたところに出た。

 そこには透き通った綺麗な水をたたえた池があった。


「お~い! お前達! 池があったぞ~」


 モンスター狩りをさぼって薬草を探していた俺とは違い、狩りに勤しんでいた3人が、魔石をいっぱい持って合流してくる。


「おお! 綺麗な池じゃの~。水浴びができそうじゃの」

「あ! いいですね、それ! ユウトさんいいですか?」

「アニタ入りたい~」


 タンジョンに入って2泊、《クリーン》で体は清潔にしているが、水浴びでさっぱりしたいだろうな……


「ああ、いいぞ2、30分で終わりだぞ~。上がったら昼飯にしよう!」


 あ~俺も風呂に入りたい……


「「はーい!」」

 歓声をあげて岩陰で準備をはじめた。


「ユウトよ、覗いてはならぬぞ。もし覗いたらぁ……雷が落ちるぞ!」

 

 ――どっち? 説教? 本物の雷? ……その両方だろうな。

 背中の方からは3人の楽しそうな声と、パシャパシャと水の音が聞こえてきた。




 昼食後、攻略を再開。

 順調と言えば順調なのだが、時間がかかっている。

 もちろん狩りをしつつ食料採取している事もあるが、いかんせん広い。

 今、23階層の終盤だが、1階層ごとに少しずつ広くなっている。


「広範囲魔法を使えば、アニカ達の経験にならんしな。……ちょっと24階層であれを試してみるか」


 みんなを集め、考えを伝える。


「ほうほう、一網打尽作戦とでも名付けるか?」

「探す手間が省けるんですね」

「わ~い! 楽しみ~」



 24階層に入り、作戦の準備に入る。


 いつものように23階層からのスロープを塞ぎ、20階層のフロアボス戦のようにセーフティーゾーンを作る。

 そして、俺だけ《フライ》で25階層への出口を探し、これも軽く塞ぐ。


「さて、始めるか。……上手くいくと次の階層以降も楽になるから成功させたいな」



 闇属性魔法の中級くらいかな? 《インダクション(誘導)》を奥から順番に広範囲にかけて、ミケ達の方へ誘導する。

 カサカサ、バサバサと音を立ててモンスター共が森の中をセーフティーゾーンへ向けて進む音が聞こえてくる。



 10回くらい魔法をかけてミケ達のもとへ戻ると、3人はもう狩りを始めていた。

 一応逃げられないように退路を塞ぐ。


「ふ~、今までで一番魔力を使ったんじゃないかな」

「ご苦労なのじゃ、ユウト。効果抜群じゃぞ!」


 ミケが鳥系のモンスターを撃ち落としながら褒めてくれた。

 アニカとアニタもサクサクとトドメを刺している。


「ミケ、俺達も行こう。さっさと終わらせようか」




 今日は2回も大集団と戦ったから、だいぶレベル上がったんじゃないかな。

 明日にでも確認しよう。


「この階層自体がセーフティーゾーンになったようなもので、本当にちょっとずつ暗くなってきてるな。……丁度いい、ゆっくり休もう」





 ドゴーン! ダン! ダン! ドゴーン!

 

「……ト! ユウト! 起きるのじゃ!」

「ん? うう、眠い……、もうちょっと寝させて……」


 俺は夜中の見張りを終えてミケと交替し、仮眠していたのだが、もう時間か?


「何を寝ぼけておる。“下”からの客人だぞ」


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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