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第114話 黒の大陸。ハウラケアノスとの戦い( 2/2 )


「“黒の大陸”の黒き大地を突き刺されても、このハウラケアノスに効くものか!」


 黒き大地だと?


 大地の(いばら)が自然とボロボロ崩れていった。


[え~!? どうして?]

「慌てなくていい! それよりも回復したか? ピルム」

[はい! もう戻れます]


 しかし、あれがハウラケアノスに効かないという事は、この大地は闇属性になっているとかか?


 ピルムが戻って来て攻撃に加わるが、やはり標的にされてしまう。

 俺達は《ピュリフィケーション》で回復の鈍った部位を、数の優位を活かして集中的に攻め立てていく。

 アニタも、回復・補助役に回ったアニカも戻ってくると、俺達はハウラケアノスを押し込んでいった。


 だが……


 グオオオオオオオオオオ!


 魔王城で遭った叫び声と振動が再びやってきた。


 オオオオオオオオ――


 黒き大龍に近づいているだけあって、腹に響くような轟音と大地震のような揺れが通り過ぎて行った。


「2発目かっ!」


 これには俺達も驚いたが、ハウラケアノスの方が動揺していた。


「なっ! 大龍よっ、何故だぁ! ――グワァァアアア!」


 自分の攻撃の手を緩めて、叫びの来た方向に向かって声を荒げると、ハウラケアノスが急に苦しみ始めた。

 ハウラケアノスの苦悶の(うな)りとともに、先の龍人のように身体がミシミシミチミチと大きく、バケモノじみていく。


「ウヴォォォオオオー!」


 自我も無くなっていっている……


 姿が完全に変わると、ソイツは狂ったように俺達に襲いかかってきた。


 黒いバケモノと化したハウラケアノスも、防御などしないで攻撃一辺倒だが、ハウラケアノスとは違った。

 誰かに狙いを定めるというよりは、誰彼構わず力任せに攻撃してきた。

 スピードや力が上がって厄介だが、ノーガードとはいえ攻撃してきた奴に反応して気を取られる分、ハウラケアノスよりは相手にし易い。


 ミケとアニタ、ピルムには攻撃に専念させるが、光魔法を使えるけれど魔力量に不安があるアニカには、俺達の《ライトフィルム》の張り直しをしてもらう。

 バケモノの爪先が(かす)るだけでも、それぞれを覆う光の膜がシャボン玉の弾けるが如く消えてしまうので、アニカもアニカで忙しい。

 俺は自分でもバケモノに物理攻撃を喰らわせながら、《ピュリフィケーション》も飛ばして、さらにみんなのダメージも回復しているので、俺も何気に忙しかったりする。


 それでも少しずつ俺達が優勢になってきた。

 バケモノの回復も遅くなっている。


「《ライトバインド》!」

 

 ――!

 余裕ができたアニカの機転の効いたライトバインドで、バケモノの行動が一瞬制限された。


 チャンス!


「ミケ! ピルム! 上半身に攻撃を集めろ!」

「おう!」[はい!]

「アニタは膝より下を狙ってくれ!」

「うん!」


 バケモノは力ずくで光の拘束を破ったが、俺達の攻撃が間に合った。

 バケモノの正面側にいるミケとピルムが上体への爪撃、背後にいる俺とアニタがふくらはぎや(かかと)への攻撃を集中させる。


「ブォワァッ!」


 目論見が見事に当たり、バケモノが大きくバランスを崩した!


「ピルム! もう1回アレだっ!」

[えっ? ――でも、さっき!]


 何かの間違いかと、ピルムが聞き返してくる。


「いいから! 俺に考えがある」

[分かりました!]


 俺達はタイミングを見計らって飛び退く。


[いきます!]


 俺は、ピルムが(いばら)を出す瞬間に、大地に《ピュリフィケーション》をかける。

 浄化のかかった地面だけがブワーっと黒色から見慣れた土色に変わり、【大地の棘】がバケモノの身体を貫いた。


「ブッ! グハァッ!」


 やはりモヤにはならない! 棘から抜け出せないようだ。

 何故だ? ヤツの魔力的な物が枯渇してきている? 理性が無いとダメなのか?

 いや、今はそんな事よりも!


「今だ! 畳みかけるぞっ! アニカもな!」

「うむっ!」[「「はいっ!]」」


 浄化してから斬り落としたバケモノの身体が、元に戻らなくなっている。傷口もゆらゆらとモヤが出るだけで塞がらなくなってきた。

 最後は、俺がバケモノの首を斬りつけ、ミケが爪撃で首を叩き落としたら、バケモノの動きが止まった。


 バケモノの身体からモヤが抜けて行き、ハウラケアノスとも違った龍人の姿になった。

 これは……サリムドランの姿なのだろうか。


 大地に転がる首が、最後の力を振り絞って「ギルガンド……」と言葉を発して息絶えた。

 同時に身体も首も黒く溶けるように朽ちていき、龍人の角だけが残った。


 この角は“ドラゴンの巣”に帰してやろう。


「ふーっ。何とかなったか、……気の抜けない戦いだったな」


 みんな傷を受けながらよくやってくれた。

 俺とアニカが、みんなの傷を癒してまわると、最後に「ユウトさんも傷だらけですよ」とアニカが《ヒール》をかけてくれる。


「アニカ、《ライトフィルム》を絶やさないようにしてくれて助かったぞ。それに、あの《ライトバインド》だ。いい機転だった! アレが無きゃ倒すのにもっと時間が掛かってたよな」

「ありがとうございます!」

「そうじゃのぅ。ユウトもあれだけ気が回ればのう?」


「うっ! 俺は俺で大変だったんだがなぁ」

「お姉ちゃんすご~い!」

[アニカ様すごいです]

「ありがとう。でも、みんなが頑張ったから倒せたんだよ」


 みんなを労い束の間の休息を取っていると、ふと気がついた。


「おっ? おおっ! 魔法が使えそうだ!」


 名前 : ユウト ババ

 種族 : 人族

 年齢 : 24

 レベル: 87

 称号 : 世界を渡りし者 英雄

 系統 : 武〈長剣〉 魔〈全〉 製作 商

 スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈10〉

      A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐

      A・感知〈1〉 


「ああ、遂に。――遂に魔法大全が〈10〉になったぞー!」

「ようやくか! 良かったのうユウトよ」


 まだ熟練度は上げなければならないが、ようやく全ての魔法が使えるようになるのか……

 喜びに浸るのも束の間――


 グオオオオオアアアアアァァァァ――――


 再び“黒き大龍”の叫びが発せられた。


「3発目だっ! しかも間隔が早い。ピルムは大丈夫か?」

[はい。この光の膜のおかげで大丈夫です!]


「さっきのと今の叫びで、また各地で異変が起きてしまうだろう」

「そうじゃな」

「だが俺達は、今は“黒き大龍”を――大元を叩き潰す!」


“黒き大龍”は近い!

 アムート、キース、リーファ、ローレッタ、ライゼル、ゴダン、エティゴーヤ、メルガン……

“黒き大龍”は必ず俺達が倒す! それまで耐えてくれよ。何とか凌いでくれよ!


「よし! もうひと踏ん張りだ! いくぞみんな!」

「「「おー!」」」[はい!]


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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