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第113話 黒の大陸。ハウラケアノスとの戦い( 1/2 )


 ユロレンシア大陸から、北にあるとされる“黒の大陸”へ向かって飛んでいる。

 ……が、無い! ずっと海! 海!


 途中の小さい島というか、岩礁(がんしょう)で早めの昼食休憩を取って飛び続ける。

 アニタなんかは、飛びながら寝てしまって何度も海に落ちそうになっていた。


「おいユウト! 本当にあるんじゃろうな?」

「このままユロレンシア大陸の南側に着くんじゃないですか?」

「あきたよ~、ねむいよ~」


 仕方ないから、俺がアニタをおんぶして飛んでいると、知らないうちにミケもアニカも背中に乗って来たので、回転して振り落とそうとしたらそれが遊びになったりして、いい暇つぶしになった。


 ユロレンシア大陸を縦断できるくらいの距離は飛んでいる気がする。本当に1周してディステ辺りに着いちゃうかもっていう気にもなる。

 俺がみんなの《フライ》をかけておいて良かった。これだけ飛ぶとアニタの魔力消費も馬鹿にならなかっただろう。

 ドラゴンのピルムでさえ、翼を動かす筋肉が疲れてきたと弱音を吐くほどだ。




[ユウト様! ユウト様! 陸が見えてきましたよ!]

「本当か!?」 

「あ~! 見えたよ~!」


「蜃気楼じゃないよな? 幻じゃないよな?」

[しんき? が何かは知りませんが、幻ではないですよ! ね? ミケ様]

「遠ぉ~~いが、幻でなないのぅ」


 ようやく陸地が見えて来た。


「ユロレンシア大陸じゃないよな……」


 そう願って目を向けると、一目で違うと言い切れる。全然違う。

 幻ではないと解っているのだが、蜃気楼のような光の屈折とかではなく、大気が――空気が揺れている。

 それに、薄墨(うすずみ)がかかったように薄っすらと黒い空気が島を包んでいるように見える。


 それは俺達が近づいても消えなかった。逆にはっきりと薄黒い空気が島を包んでいると認識できた。

 向こう側が見えている分、次元転移門の出入り口ほど不気味ではないな。

 俺達はレベルが高いので心配ないとは思うものの、悪影響を受けないように《ライトフィルム》を身体に纏った。


「いいか? 侵入(は い)るぞ?」

「うむ」[「「はい!]」」


「体調とか気分とか、おかしくなったら言うんだぞ」


 意を決して、俺から中に入って行く。


 通り抜ける時のヌプッとした感触は転移門の時と似ている。

 体調、肉体、ともに異常は無い。

 “外側”から見守っているミケ達に、大丈夫だと頷いて見せると、ミケを最後尾にして1人ずつ入ってきた。

 

 みんな異常は無いようだ。


 改めて辺りを見回す。

 聞いていた通り草木も生えていない。大地は火山の島みたいに一面黒い。

 違和感があるのは、日に照らされているのに反射が無い事で、まるで光を呑み込んでいるような黒さだ。


 地面に下りると、ジャリッ!という音と感触があった。

 土埃とは違う黒いモヤが舞う。



「やはり貴様か……」


 くぐもった声が辺りに響いた。


「どこだっ!」


 それぞれがサッと戦闘態勢になって、周囲を警戒する。

 

 姿が見えない。


 すると、空気中の“黒”が徐々に集まり、どす黒いモヤの塊になってきた。

 それがブワッ! と、一気に散ったと思ったら、中心からハウラケアノスが現れた。


「手品じみたご登場だな。ハウラケアノス」


 鹿のような角、黒い髪の毛は以前見た時と同じだが……

 龍人の顔はヒトとそう変わらないのに、今のハウラケアノスの顔は午前に見た龍人のようにドラゴンの顔になっている。


「貴様らは何故(なにゆえ)この地に足を踏み入れる?」


 だけど、やっぱりハウラケアノスには意識が――自我がある。

 肉体も、顔以外はバケモノじみている訳ではない。


「“黒き大龍”に何度も叫ばれちゃあ、海の向こうの大陸が迷惑するんでな、黙らせに来たんだよ」

「貴様……」


 ハウラケアノスの態度が少し変わったか? 警戒心が上がったように感じる。


「黙って封印されていればいいものを、この星を滅ぼすつもりなのか? “黒き大龍”とやらは」

「貴様は何者だ? なぜ封印の事を知っている? アレアルティスに――神に(つら)なるものか!?」

「連なりゃしねーが、“黒き大龍”のやった事には確実に巻き込まれているんでな。潰させてもらおうかと思ってな」

「潰すだと? 面白い!」


 ハウラケアノスは口角を上げ、牙を覗かせる。


「貴様らに出来るかな?」


 ハウラケアノスが身体に力を込めた。


「くるぞ!」

「うむ!」[「「はいっ!]」」


「ミケ! ピルム! 任せた!」

「おう!」[はいっ!]


 魔王城でのハウラケアノスとの戦いと、午前のバケモノ化した龍人との戦いから、ある程度の戦い方を導き出している。

 ミケとピルムにハウラケアノスを引き付けてもらい、武器に《ピュリフィケーション》を付与した俺とアニカ・アニタが攻撃、当然光魔法も打ち込む!


「くっ! またこの獣か! それにこのドラゴン! ここにいてなぜ正気を失わぬ?」


 ミケが白狐姿になってピルムと一緒に、ハウラケアノスの正面を攻め立てる。

 するとハウラケアノスは、それに対応するために両手を防御に使うだろう。


 ガラ空きになった背後を俺達3人が突かせてもらう。

 まぁ、簡単に言えば5対1の袋叩きだ。



 だが、当てが外れた。


[きゃー!]

「チッ! ユウト! こ奴、全く防御せんぞ!」


 ハウラケアノスは最初から防御を捨て、いくら攻撃を喰らおうともお構いなしに狙いをつけた1人を攻め立てた。その対象がピルムだ。


[ぐっ! は、はやい! すみません! 対応できません~! きゃー]

「ふん! 取るに足らぬ雑魚が!」


 ピルムが弾き出されてしまった。


「守りを捨てるとは……。仕方ない! アニカ、ピルムの回復に回ってくれ」

「はい!」


 だが、3対1になった事で、動きやすくなった!

 ミケに回復を飛ばしつつ、ハウラケアノスに《ピュリフィケーション》をぶつけ、物理攻撃も加える。

 ハウラケアノスの標的はアニタに移ったが、アニタは自分で《フィジカルブースト》と《センスブースト》を使い、攻撃しつつ深手を負わないようにハウラケアノスの攻めを捌いている。


「すばしっこい小娘だっ! ――だがなぁ!」


 ハウラケアノスが、今まで閉じていた翼を広げてミケを足場に大きくジャンプした。

 奴は俺達3人の囲いを抜け、翼で軌道を変えながら一時的にアニタとの1対1の局面を作り出し、アニタを攻め立てる。


「させるかっ!」「お主の相手はこっちじゃ!」


 俺とミケがハウラケアノスの意識をアニタから背けさせようとしても、お構いなしだ。


「ううううう! はやいよ~! いたいよ~」

「アニタ! 無理しなくていい! 一回下がって回復して来い」


 俺が転移で無理矢理アニタとハウラケアノスの間に入る。


「お兄ちゃんごめん~」

「大丈夫だよ」


「誰が相手でも変わらん! いくら5人でも貴様らに勝ち目など無い!」


 ハウラケアノスは、今度は俺を標的に攻めを繰り出してきた。

 その時、戦列を抜けていたピルムから声がかかった。


[ユウト様、ミケ様、アレいきます!]

「おう!」「うむ!」


 俺とミケはタイミングを合わせてその場を離れると、大地からピルムの【大地の(いばら)】が突き上げてきて、ハウラケアノスの身体を貫いた!


「入った!」[決まった?]


 だが、ハウラケアノスは「ふん」と一笑に付し、霧のように霧散し、空中で元の姿に戻った


「“黒の大陸”の黒き大地を突き刺されても、このハウラケアノスに効くものか!」


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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