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第104話 エンデランスからオーサクへ。


 マッカラン大公国のキースの元からエンデランス王国王都の外へ転移。時刻は夕方に迫っている。

 みんなに《認識阻害》と《フライ》をかけて王城上空へ行く。


「ピルム。悪いけど、また空で待っててくれな?」

[はい。……寂しいです]


 空から城内を見ると、各騎士団の団舎前の広場で騎士達が整列している。

 見たところ、2隊いるな。


「ねえねえ! あれゴーシュのおじいちゃんだよ~?」


 おじいちゃんって……


「どれ? そうじゃのぅ」

「ゴーシュさんですね」

「えっ? どこどこ?」


 みんなが指差したのは、整列した騎士達の視線の先に数名いる内の1人だった。


「おお? ゴーシュは出世したのかな?」


“ゴーシュ、ユウトだ。今、上にいるんだけどちょっといい?”

“むっ! ユウト殿。ちょっと待ってくれい”


 ゴーシュは、突然の呼びかけにも慌てず、近くの騎士に声をかけて人気(ひとけ)のない場所へ移動した。


“ここなら下りてこられるで”

“ああ、ありがとう”


 みんなでゴーシュの元へ下りて、アムートへの取り次ぎを頼んだ。

 ゴーシュに案内されながら、話をしていると、なんと! ゴーシュが遠征騎士団の団長に抜擢されていた。

 アムートが即位するにあたって、どうしても王国に残ってくれと頼まれて、残ったら団長にされたと嬉しそうにぼやいている。

 しかも団長になった事で、男爵になったとの事。でも、平民出身で初の団長らしい。

 まあ、実力が断トツだからな。


「で、なんで集まってたんだ?」

「うむ。遠征騎士団は、たまたま王都にいたのだが、あの“音と振動”があったでの。何があるか分からんで、緊急に招集したんだで」


 一緒にいた隊は、アムートの治めていたマッカランの領地からついてきた騎士を中心とした近衛騎士団。

 たまたま王都にいた遠征騎士団と合同で待機していたらしい。


 あの音と振動をしっかりと異変と捉えて動くあたり、近衛と遠征は良い騎士団になるのだろうな。


「陛下からは、他の騎士団にも指令が飛んだようだ。ユウトが来たのもその事についてか?」

「そうだ。だから、騎士達に召集をかけていたのは大正解だと思う。ゴーシュもアムートと一緒に話を聞いてくれ」

「うむ」


 執務室前で待っていると、アムートは何かの会合を終えて戻って来たところだった。


「おお、ユウト殿! よくぞ参られた」

「ええ、忙しい所申し訳ないけど、大事な用件があって……」


 アムートはゴーシュをチラリと見て、ゴーシュは軽くうなずいた。


「そうですか。とりあえず中へ入りましょう」


 俺からキースやリーファに話した内容を伝える。


「モンスターの暴走や人心の変化ですか……」

「あるいは、もっと大変な事になるかも」

「先程まで情報収集の会合を行っていたのですが、ユウト殿のお話以上のモノはありませんでした。情報の提供に感謝します」

「いえいえ、でも近衛や遠征騎士団の対応の早さを見ると、頼もしいですね」

「この2団は、能力の高いものを団長に据えることができたので、立て直しは大分早いけれど、いかんせん騎士の絶対数が足りないのです」


 まあ、綱紀粛正(こうきしゅくせい)や再編の真っ只中だろうしな。

 エンデランスは思っていたよりも大丈夫そうだけど……


「俺は小国家連合に向かうけど、念の為ミケとアニカとアニタを置いていきます。もしもの時は彼女らに任せるといいですよ」

「おお、ありがたいです」


 ミケも「仕方ないのう」と、承諾してくれた。


「ミケ殿、何か必要な物は? できるだけ用意致しますよ」

「うむ! 菓子じゃ!」

「……」


 時間も時間なので、アニタのストレージに寝床のセットを移す。

 どうせ、ここら辺の寝具では硬いだの不満が出るだろうからな。


 王城にミケ達を残し、メルティナを連れて王都の外へ転移して、ピルムも合流してオーサクに転移する。



 エティゴーヤの屋敷の上空に転移。


「今日だけで何回も……しかも遠くまで飛ぶなんて、旦那様凄い」


 ピルムを1人で待たせるのも可哀そうになってきたので、エティゴーヤの番頭に事情を話して、広い敷地の空きスペースに下りさせてもらう。

 夕方でも忙しそうに動き回っている使用人たちが、巨大なドラゴンが敷地内にいることにビクビクしているが、中にはピルムの姿をスケッチする者もいた。



「ドラゴン連れとは、エライ景気のええこってまあ! どないして手懐けはったんでっか?」


 応接室に入るなり、エティゴーヤが興奮気味に聞いてきた。

 勝手に懐いてきたんですが……

 まあ、そこら辺は濁して、倒して従わせた事にしておく。


 エティゴーヤからソファに座るようにすすめられて、俺は座ったが、メルティナは立ったまま。

 メルティナは後ろ手に縛られたままだから、立ってた方が楽なのだろうが、エティゴーヤが「お連れはんは座らんのでっか?」と不審がる。

 そりゃ、マントを羽織ってフードを目深に被っている奴がいれば、不振だろうな……


「実は――」

 

 フードを取って、「魔王軍第2軍団長のメルティナだ」と紹介する。


「メッ! メルティナでっか!? あの……魔王の妹っちゅう?」


 そして、目聡(めざと)くメルティナの首輪を見つけた。


「ほぉー? これはこれは……、珍しい首輪ですな? ただの首輪とは違いまっしゃろ?」


 そこは濁しつつ、エティゴーヤにアムートにも説明した事を伝える。


「そうでっかぁ。なんや、あの音と振動に嫌な予感がして、情報を取らせに走らせとったところですわ。……モンスターの暴走やら人心の変化ですかぁ」

「そうだ、小国家連合は、傭兵国家の傭兵で大丈夫か?」

「あとは、冒険者ですな、そのために資金の積み立てもやって備えておりますぅ」


「もしもの時の為に、俺もどこかで待機させてもらうよ」

「ええんでっか? ほな、前回泊まってもろた宿を取っときますわ! もちろんお代はウチ持ちや!」


 前回のここの宿は良かった気がするな。

 でも、ピルムがいるから遠慮すると言おうとした時、エティゴーヤの番頭が大慌てでドアをノックして報告に来た。


「なんや? 接客中やぞ?」

「旦那様、大変です!」


 番頭は、俺達の前で言っていいものかと迷っている。


「言うてもええで、なんや?」

「はい! ホカイドゥンのダンジョンで“氾濫”が起きたようですぅ!」

「なんやてぇ!」


 ホカイドゥンって、確か南東の農業国家だったな。


「どんなダンジョンやったかの?」

「はい、中の上ほどの規模のダンジョンで、深層は鳥系やリザード系モンスターが中心で、ボスはガルーダやったと思います」


 ガルーダ、プロレスラー体型の赤い鳥野郎か……。ミケに雷一撃で首を飛ばされてた奴だな。


「よし、俺が行こう!」

「お願いしてもええのんですか?」

「任せてくれ」


 エティゴーヤが深々と頭を下げて来た。


「では、お頼み申しますぅ。――あっ!」


 なんだ? 大事な事か?


「ほな、宿屋は取らんときますわ」


 ……シビア!


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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