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第103話 キースの所にリーファがいた。


 シュンッ!


 マッカラン大公国の公都の外に転移してきた。

 今は転移の為に人化しているとはいえ、いつ人化が解けるか分からないピルムもいるからな。


 ボワン!

「やった~!」


 ほら。

 それにしても、ピルムが人化すると、アニタがワクワクしながらピルムの側から離れなくなるんだよな……


 メルティナが辺りをキョロキョロして驚いている。

 

「こ、この人数を1回で……こんなに遠くまで……、旦那様凄い!」

「そうなのか?」


 確かに6人ってのは初めてだったけど。


 ピシャ!


「……痛い」


 メルティナをミケの雷が叩いた。


「五体満足で姉の元へ帰りたくば、ユウトの呼び方に気をつけるのじゃ!」

「……悪くない」


「メルティナ、お前だって2人を連れて転移していたじゃないか?」

「ん。あの時は何回も転移した。……回復を待って」

「そうか」


 少しずつ喋るようになってきたな。


 メルティナにミケが使っていたマントを羽織らせる。

 いくら縛られているとは言え、公都で魔人族を連れていれば目立って仕方ないからな。


 自分のマントを使われたミケがブツクサ文句を言っている。

 メルティナの方が10cmくらい大きいとはいえ、ミケが体格的に近いからしょうがない。それに、……あんま使ってないだろ、このマント。


 公都のすぐ外に巨大なドラゴンが現れたと大騒ぎになる前に、ピルムには認識阻害をかけて、上空で離れて待機してもらうことにする。


 宮殿には歩いて向かうが、アニカには冒険者ギルドに行ってもらい、もしドラゴンの目撃情報が届けられても、俺達の制御下にあるから大丈夫と伝えてもらう。

 広い公都をしばらく歩いて、ようやく宮殿に到着する頃には、ギルドに寄ったアニカも戻ってきた。


 キースの執務室に案内されたが、中にはエルフの女王リーファもいた。


「あ~!! ユウトちゃ~ん!」


 俺に駆け寄ってくるリーファに、ミケの雷がピシッ! とカウンターで入った。


「いった~い!」


「よく来たね。魔大陸のどこまで進めたんだい? それに、そのお客人は?」

「ああ、コイツはメルティナ」


 フードを取って、キースとリーファにメルティナの姿を見せる。


「はぁ!?」

「あー! メルティナだー!」


 キースもリーファもビックリしている。

 リーファにとって、メルティナは40年前の戦いで直接戦っていた相手だ。

 ……それにしても2人とも若く見えるな。流石長命種だ。


「あらあらメルティナ。アンタ、あの時よりちょっと大きくなった? ()()()()は!」


 リーファが敢えて両腕を腰に当てて、胸を強調してメルティナを覗く。


「……あなたは()()()()になった? リーファ?」


 お互いに顔を引きつらせながら笑顔でバチバチ視線をぶつけている。

 そんな2人は置いてといて、キースに順を追ってあらましを伝える。


 合間に、俺達が来た事を聞きつけたメイドさんがお茶を持って来てくれた。山盛りのお菓子も!

 ミケとアニタがお菓子に飛びつく。


「ふ、2日で魔大陸を制圧したのかい?」

「いや! 魔王城な? 大陸の北から入って行ったんだから、南は知らんよ」

「それで……、何故メルティナが一緒に?」


 キースにメルティナの首元を見せ、禁呪具らしいと伝える。


「これは! やはりあの時ユウト殿から聞いたのは隷属の首輪だったのか……」


 エンデランスの王城でマスク3人とやり合った話をした時のか。


「首輪の事、知っていたのか?」

「いいや。ふと頭に浮かびはしたが、禁呪は……伝説と言うか、実在するとは思いもしないからね」


 そして、メルガンとメルティナを首輪で操っていたテミティズの死。

 ハウラケアノスが、腕を斬り落としても身体を傷つけても治る上に、霧のように消えた事とステータス分析できなかった事から、龍人なんかでは無いと伝える。


「ところで、リーファさんはなんでここに?」

「いや~ん! リーファって呼んでって言ってるでしょ~? ユウトちゃ~ん」


 ピシッ!


「いやん! え~っとねぇ、何時間か前に不気味な音と振動があったでしょ~?」


 それがあってから、始原の樹や大森林の木々が騒ぎ出して、葉っぱや枝が南に向いてしまったそうだ。


「全部よ? 全部! まるで北から逃げたいみたいに……。で、ブワァーって飛んで、キースちゃんに相談に来たの」

「ああ、あの音と振動については――」


 俺は、ディスティリーニアから聞いた事をディスティリーニアの名を出さないで、かいつまんで伝える。

 何万年も前の黒き大龍の事、神によってある大陸に封印された事。

 そこから少しずつ漏れた大龍の思念によって、かつて破局的な争いがその大陸で引き起こされ“黒の大陸”となったが、人々の記憶からは消されている事。


「その“黒の大陸”がこの星――カストポルクスの北部にあって、さっきのは、黒き大龍の叫びが漏れたモノらしい」

「黒き大龍の叫び……」

「だから始原の樹や森の木々達は、南を向いちゃったのね?」

「そうだな。だが、これからそれ以上の異変が各地で起こるかもしれないんだ」


 キースとリーファが息を呑む。


「モンスターの暴走や人心の変化、もっと悪い異変も起こるかもしれない。このマッカラン大公国やリーファさん達、ドワーフや獣人の国は、“上”がしっかりしているし、武力もあるから何とかできるとしても……」

「アムート殿か?」

「ええ、エンデランス王国はまだ再編の途上で、国の基盤がしっかりしていない。小国家連合も、武力が小さいから大変になると思う。だから魔大陸はメルティナを人質にとって、メルガンに対処させることにしたんだ」


 ディスティリーニアから、鎮静化に力を貸すよう言われた事は敢えて言わないが、キースは薄々気づいているようだ。


「そうだね。ウチとディステ以外はきついかもね。ユウト殿に助力を頼めるかい?」

「ああ、やるだけやってみる。これは助け合わないと、っていうか、傍観していると大変な事になる気がするからな」

「そうねぇ~。私もライゼルやゴダンの所に教えに行ってあ・げ・る! ユウトちゃんの為にね♪」


 ピシシッ!


「あ~ん!」



 俺達はこれからエンデランス王国へ向かうことにして、執務室を後にしようとしたら……

 ミケとアニタが、いっぱいあったお菓子をほとんど平らげていた。


「おい! 俺はいいとして、アニカやピリムの分は?」

「わ、私はこっそり取ってましたから大丈夫です」

「ピリムちゃんの分はね~、包んでくれるって!」


 メイドさんが微笑んで頷いている。……いい人!


「じゃあ、俺の分も?」

「ユウトお兄ちゃんの分はね~? これ! あげる」

「ありがとう――って、これアニタの食べかけじゃん! 食べるけど!」


 人の執務室で、何やってんだか……


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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