表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/112

第8話 ダンジョンと天使を助ける方法

「村長! 遺跡の調査メンバーが帰還しました!」



 10代後半くらいと思われる、若い男の獣人数名が駆けこんできた。



「おおっ。して、結果は?」

「どうやらあの遺跡はダンジョンらしく、モンスターの存在が確認されました」



 ん? ダンジョン?

 異世界だしな。ダンジョンが普通に存在していても、おかしくはないわけか。

 けど、シエルはこの山でモンスターを見たのは、私が討伐した蜘蛛が初めてだと言ってなかったか?



「ふむ。シエルを襲ったというモンスターも、そこから現れたものである可能性が高いな。わかった。詳しい話は彼らから聞こう。蛇神様のことも紹介しておかねばならんしのう」

「あ、それと。ダンジョンの内部で解呪石を発見したとの報告も」

「ほほう?」



 カイジュ?

 ああ、解呪ってこと?


 

「なあ、その解呪石ってのなんなんだ?」


 シエルに問うと、



「呪いを解く力を持った水晶のことですよ」



 だとさ。

 じゃあ、それ使えばシエルの呪いは治るんじゃないのか?



「ですが、そこはモンスターの巣になっているらしく……」


 と、若者。



「そう、か。貧しいワシらには腕の立つ冒険者や騎士を雇う金はない……」



 落胆する村長だったが、話を聞いていたらしいシエルの姉スピカが、小屋の入り口に現れ声を張り上げた。



「おじいちゃん。なら私がとってくるわ!」

「スピカ!?」


 驚く村長さん。



「解呪石があれば、シエルの呪いを治すことができるかもしれないわ!」

「ならぬ」



 しかし、村長さんの顔は険しい。



「どうしてっ! 私はこの村一番の魔法の使い手よ!? モンスターくらい、どうってことないわよっ!」

「実戦を経験したこともないひよっこが、ちょっと魔法が使えるからと調子に乗るでない! シエルも大事じゃが、スピカだって大事な孫、家族なのじゃ! そのような危険な場所へいく許可は出せぬ!」

「でもっ!」

「くどいぞっ!」



 まあ、気持ちはわかる。

 この世界の住人は、私のように死んでも転生で復活できるわけではないのだろうし。

 大事な孫娘を危険な場所へは行かせたくないよな。



「うぐっ……おじいちゃんのわからず屋っ!」



 だが、スピカはそう叫ぶと駆けだし、すぐ正面の家に飛び込んで思いっきりドアを閉めてしまった。

 あそこがスピカとシエルの家なのかな。


 村長の気持ちはわかるが、スピカの気持ちもわかる。あいつ、シエルが本当に大事みたいだったし。救える可能性があるのなら、無茶をしてでも飛び込んでいきたいよな。

 若いなら、なおさら無茶をしたがるだろう。


 そんなことを考えながらスピカの家を眺めていたら、



「放っておいてくだされ。すぐに頭も冷えよう」



 と、村長さん。

 別に声をかけにいくつもりはなかったけれど。ああいうのって、ヘタに励ましても火に油だから。いや、ここは異世界らしく油に炎魔法とでもいっておこうか。どっちでもいいな。



「ところでさ、ダンジョンって、ここではどういう存在なんだ?」



 この世界で生きていく以上、そういう重要そうなことは知っておかないといけない。



「ダンジョンとは、モンスターの生息する遺跡や洞窟などです。大昔から存在しているものもあれば。ある日突然何もなかったところに出現するパターンもあって。古代の遺跡だとか、別の世界から転送されてくるものだとか、いろいろな説があります」

「ふぅん。シエルは本当に物知りなんだな」


「広い世界を冒険できないかわりに、たくさん本を読んでいますからねっ」



 えへん、と胸を張るシエル。

 その隣で、寂しそうな顔の村長。


 村長も本当はシエルの呪いを治し、彼の夢を叶えさせたいのだろう。山の外を冒険し、世界中を見て回るという夢を。



「今話題にしていたダンジョンは、突然現れたパターンのやつか?」

「ですです。ダンジョンには未知の魔道具や金銀財宝などが隠されていることも多いので、ダンジョンの探索を主な活動にした冒険者なんかもいるんですよ」



 遺跡ハンターみたいなやつか。

 で、その遺跡にシエルを助けられるかもしれない魔法の石がある、と。

 なるほどなるほど。



「じゃあ、私がその解呪石とかいう水晶、とってこようか?」

「蛇神様が? 気持ちは嬉しいですじゃ。しかし、そこまで迷惑をかけるわけには――」


「村長さん、あまり気にしないでくれ。シエルはもう友達だ。友達を助けたいと思うのは普通のことだろう? それに、村に置いてもらうことへの礼もしたいし、さ」



 お、今私いいこと言ったんじゃないか?

 本心なんだけどさ。



「そうですか……重ね重ね、本当になんとお礼を言ったらよいか」

「いいって。それより、毒物の方を頼むよ。ダンジョンにはモンスターがいるんだろう? なら、少しでも自分の武器を鍛えないとな」

「ですな。お主たち! 蛇神様に捧げる毒物を用意するのじゃ!」


 村長が指示し、村の若者たちが散っていく。

 スピカにこのことを話すのは……まあ、あとでいいか。今はそっとしておいてあげよう。



「シエル、必ず助けてやるからな」

「無理しないでくださいね?」



 こいつっ、自分が生きるか死ぬかの問題だというのに、私の心配をしているだと!?

 なんて優しいのだ。

 シエルくんマジ天使。絶対死なせないわ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=710501439&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ