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第6話 村人全員、私を崇拝!?

 さて。広場には長老を囲う形に、たくさんの獣人が集まっている。小さな村だけど、わりと若者や子供もいる印象。なるほど、全員が犬耳と尻尾をはやしている。服装は民族衣装に見えなくもないが、ワンピース、ジャケット、パーカーらしき服、などなど。現代日本でも見かけそうな服がちらほら。こう、しま〇らあたりにありそうな服。清潔感もあるし、この世界の文明レベル、意外と高いのかもしれない。


 そうそう。長い蛇生活の中で、私は太陽の位置から時間帯を、空気の温かさや木々の色合いから季節を把握できるようになっていた。

 今はお昼を少し過ぎたあたりで、季節は春ごろ――だろうか。



「みなのもの。すでに話には聞いておるかと思うが、この方がシエルを死の淵から救ってくださった蛇神様じゃ」



 村長の演説が始まった。話の内容は、私が生まれたばかりなこと、住む場所を探していること、私に馬小屋を提供しようと考えていることなどだ。

 シエルは長老の隣に立ち、うんうんと頷いている。他の村人たちの反応はというと。



「シエルが嘘をつくとは思わないが、あの蛇が神だというのは信じがたいな」

「ああ。我々をだまして喰らってやろうと、嘘をついているのかもしれない」

「でも、強いんでしょう? 私たちを食べるつもりなら、そんな回りくどいことしないで襲ってくるんじゃない?」

「確かに。じゃあ、あれは本当に神なのか?」

「どう見ても魔物だろう」



 う~ん。あまりいい雰囲気とは言えないなあ。

 もしこのまま彼らが私に不信感を抱き続けるのなら、この村を去ろう。村の平和を乱し、人々を怖がらせてまで平穏な寝床を得ようとは思わない。



「村長。来週出荷予定のオスのニワトリです」



 成人した男の獣人が、鉄籠に入ったニワトリを村長に手渡す。



「うむ。ではこれより、このニワトリの首を斬り落とす。そのあとにニワトリを蘇生することが出来れば、この方は神であると証明されよう」



 男の獣人はニワトリを籠から出すなり、地面に押さえつけた。村長は腰から刃渡り70~80センチほどの刀剣を引き抜き、ニワトリの首に向かって振り下ろした。


 ダン!

 グエエエエ!!


 みたいな音がして、ニワトリの首がごとりと地に落ちる。

 うわー、グロいなあ。私はもう慣れたけど、子供に見せて大丈夫なのか?

 シエルくんは――あ、両目を手で隠している。可愛いなあ。




「では蛇神様、お願いいたしますじゃ」



 村長が刀剣の血を布で拭い、後ろに下がる。



「まあ、うん。じゃあ……」



 ユニークスキル『アスクレピオスの蘇生術』発動――。


 と、心の中で唱えてみる。

 正直スキルの発動の仕方はまだわかっていないんだが。大丈夫かな?



《『アスクレピオスの蘇生術』を発動します》



 お、大丈夫みたいだ。

 ニワトリの死体がまぶしい白い光に包まれた。

 パアアア――という効果音と共に、転がっていた首が浮き上がり、胴体の断面に接着される。そして。



「コケ?」


 光が消え去るなり、ニワトリは何事もなかったかのように起き上がり、間抜けな声で鳴いた。自分の身に何が起こったのか、まるで理解していない様子。



「うおおおおおお! マジか! マジで蘇生したぞ!!」

「す、すごいわ! 生死を操る魔法なんて、聞いたことないわ!!」

「神だ! 本物の神だぞーーーー!!」



 魔法じゃなくてスキルなんだけど。まあ、いいか。

 村長は盛り上がる村人たちを見回し、満足そうに頷いた。



「蛇神様。無礼を働き申し訳ありませんでした」

「いや、それはいいけど。小屋の方、案内してくれるかな」

「小屋なら僕が案内しますよっ!」



 シエルが私の横に立って、笑顔で私を見上げる。



「ありがとう。じゃあ、頼むよ」

「はいっ」



     ★☆



 馬小屋と聞いていたから期待はしていなかったのだが、そこは二階建て相当の丸太小屋だった。出入り口にドアがなく、馬が横に並んで3頭は通れるように切り開かれているという点以外は、完全に民家だ。



「へぇ~、随分立派じゃないか」



 家具とかはないみたいだけど、どうせ蛇だしな。



「ときに、蛇神様は水神様に関する伝承は知っておりますかのう?」

「水神様?」


「アインアクアを創ったと言われている、大昔の神様ですよ」



 と、シエルくん。

 『アインアクア』とは、確かこの国の名前だったな。



「水神様とは、かつて荒れ果てたこの地に水を与え、国をつくった神様じゃ。文明が芽吹き始めると、水神様はこの地を護るべく3体の子を産み、神の国へと帰ったと言われておりますじゃ」



 ほう。よくある神話的なお話だな。

 異世界なら、実在した神の可能性もあるが。



「水神様の残してくださった3つ子とは、


・あらゆる毒を操る蛇『ヨルムンガンド』

・災いを操る巨大な狼に似た龍『フェンリル』

・死を操る水の悪魔『ヘル』


の3人。『ヨルムンガンド』はその力で穢れた大地を浄化し、『フェンリル』はその力で災いを遠ざけ、『ヘル』はその力で動植物を死から護ったとされておりますじゃ」



 そういえば、日本にも水神の伝承があったな。たしか、日本における水神の象徴は河童、蛇、龍だとか。



「毒を無効にし治癒する人語を操りし蛇――蛇神様はまるでヨルムンガンド様のようじゃ!」



 ヨルムンガンドねぇ。

 北欧神話にも、そういう名前の存在がいたな。私の知識が正しければ、神ロキが巨人アングルボザとの間にもうけたという魔物。それがフェンリル、ヨルムンガンド、ヘルだったはず。

 

 うう~む。

 なんというか、水神の伝承と北欧神話を混ぜたような話だな。まさかこの世界って、WEB小説かゲームの世界だったりして。

 いや、まさかな。



《【称号:ヨルムンガンドの再来?】を獲得しました》



 ん? なんだって?

 今、また頭の中の声が変なことを――。



《称号の効果。「自身を”対象”とする呪いが”発動した時”、その発動を無効にする」。称号はパッシブスキルと同様に、獲得し装備したことで常時効果が発揮されます。今回は初の称号なので、自動で装備されます》



 よくわからないが、なんかまた強くなってしまったようだ。


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