アクセス傾向基準
「でだ、いろんな作品のアクセス解析を見てて思った事だが、この『俺の養女に手を出すな!』は、ランク外作品群のアクセス傾向を示す指標として優秀なんじゃないか?って事だ」
「はぁ?!」
後輩は豆鉄砲を食らった様な表情で固まった。
う~む、どう云えばわかりやすいだろうか?
「つまりだ。投稿された長編作品(書籍1冊分程度の文章量)は、だいたいコレと同じようなアクセス傾向に集約される」
「極めて標準的な作品って事ッスか?」
正確には、大多数のランク外投稿者にとってのな。
ランキング入りするような作品は、またこれとは別の指標が必要だ。
「じゃあ、まずは現実から見ていこうか!」
「うぃッス」
そう云って「私」は、『俺の養女に手を出すな!』の章ごとの平均ユニークアクセス数をグラフにしたものを机の上に広げた。
第01章■■■■■■■■■■■■■■■■■■
第02章■■■■■■■■■■■■■■■
第03章■■■■■■■■■■■■■
第04章■■■■■■■■■
第05章■■■■■■■■
第06章■■■■■■■■
第07章■■■■■■■
第08章■■■■■■■
第09章■■■■■■
第10章■■■■■■
第11章■■■■■■■
第12章■■■■■■
第13章■■■■■■
第14章■■■■■
第15章■■■■■■
第16章■■■■■
第17章■■■■■
第18章■■■■■
第19章■■■■■
第20章■■■■■
第21章■■■■■
第22章■■■■■
第23章■■■■■
第24章■■■■
第25章■■■■
第26章■■■■
第27章■■■■
第28章■■■■
第29章■■■■
第29章■■■■
第30章■■■■
第31章■■■■
第32章■■■■
第33章■■■■
第34章■■■■
第35章■■■■
第36章■■■■
第37章■■■■
「これを見てわかると思うが、新規読者は必ずしも最後まで作品を読んではくれない」
「そうっスね」
第5章までにアクセス数は急速に減少し、それ以降は緩やかに減少する。
最終的には5人に1人くらいしか残らない。
特に第5章。ここに大きな壁が存在する。
「なぜだと思う?」
「さっぱり理解不能っス♪」
「ちょっとは脳ミソ使え、馬鹿もんがぁ!!」
荒ぶる感情を抑えつつ、「私」は冷静に説明を再開した。
そう、冷静にだっ!
「5章の終了時点での文字数は約35,500字。読了時間にして約70分となる」
これは人間の集中限界である約1時間と、ほぼ同じ数値だ。
「つまり読み飽きたッスか?」
「端的に云えば、そうなる」
数値的には3章から4章にかけてが、急速にアクセスが減少するポイントだ。
ただ下げ幅で云えば、第1部と第2部の差が一番激しいのだが、基本こう云った分析においては、最初と最後のデータは外しておくのがセオリーである。
見えてくる『読書開始から1時間の壁』。
これを超えさせる事が、無名投稿者の当面の目標と云える。
「なるなる。つまり『俺の養女に手を出すな!』が指標となるって事は、読了時間60分を超えた時点で、アクセス減少率が50%を超えるようなら、今後、作品が評価される可能性は厳しくなるって考えでファイナルアンサーッスか?」
「私」は後輩の問いかけに、たっぷり引きを作って「正解」と答えた。
どちらにしろ、後発の新規読者は、ひとまず読了時間60分あたりで一息つく。
つまりブックマーク登録を行う可能性が高まるのは、この辺りからになる。
だから、それ以前に読み止める読者が多ければ多い程、当然ptは入りにくくなる。
「だが後輩。勘違いしてはいかんよ。後輩は作品が評価されたいから投稿するのかい? それとも小説を書きたい物語があったから投稿っするのかい?」
「どっちかと云うと後者ッスね。……もちろん評価もされたいッスけど」
それで良いと思う。
評価を得たいが為だけに投稿するなんて、そんなの楽しくないじゃないか。