最適な投稿時間
「せんぱーい。トップページへの掲載のやり方はわかったっスから、さっそく投稿を始めるっス!」
「やめろ!」
「ポチッとな……ぐえっ」
エンターキーを叩く為に振り上げた後輩の人差し指を、「私」はグァシッと掴んで引き倒す。
まったく、この後輩は何でこうも短絡的なのか……
「投稿する時間帯を考えろ!馬鹿者がっ」
投稿するにしてもタイミングってモノがある。
可能であれば、効果的な時間帯を狙うべきだ。
「たいみんぐッスか?」
「そうだ。まずはこれを見ろ」
そう云って「私」は、常に閲覧されるランキング上位者のアクセス記録を基に、時間帯ごとにアクセス数を振り分けたグラフを作成してみせた。
24時 ■■■■■
01時 ■■■■
02時 ■■■
03時 ■■■
04時 ■■■
05時 ■■■
06時 ■■■■■
07時 ■■■■■■■■
08時 ■■■■■■■■
09時 ■■■■■■■
10時 ■■■■■■■
11時 ■■■■■■■
12時 ■■■■■■■■■■■■
13時 ■■■■■■
14時 ■■■■■■
15時 ■■■■■■
16時 ■■■■■■
17時 ■■■■■■■■■■
18時 ■■■■■■■■■■■
19時 ■■■■■■■■■■■
20時 ■■■■■■■■■■■
21時 ■■■■■■■■■■
22時 ■■■■■■■■■
「これが時間帯ごとのアクセス傾向ッスか!」
作品によってアクセス数の過多はあるが、全体を通してのアクセス比率はあまり変わらない。
どの作品も概ねこんな感じにアクセス数が推移している。
「つまりこれが、「なろう」読者のアクセス特性と云える。これを見て気づいた事はあるか?」
「そうッスね。18~20時のアクセスが多いッス」
18~20時の時間帯は、所謂ゴールデンタイムと呼ばれる時間帯である。
アクセスが集中するのと同時に、作品の投稿も集中する激戦区と云える。
「他には?」
「意外とお昼時のアクセスが多いッスね」
これは昼休みに投稿作品を読んでいる読者が多い事を示しているモノと思われる。
他にも登校・出勤時間の7~8時の時間帯。
下校した学生がアクセスしていると思われる17時などに、アクセスの集中が見られた。
「まぁ、予想どおりと云えば、予想どおりの結果ッスね」
「じゃあ、どの時間帯に投稿するのが、無名投稿者にとっての最適解か云ってみ」
「そりゃ、勿論ゴールデンタィ」
スパーン!
手にしたハリセンが後輩の後頭部に直撃する。
「ど阿呆が、ゴールデンタイムは激戦区って云っただろうが!」
この時間帯の投稿数は、分当たり4件前後にもなる。
もし分当たりの投稿件数が3件以下であれば、たとえ最初の投稿に失敗したとしても、次の更新機会にトップページに掲載される可能性はゼロではなくなる。
それに、1頁の表示件数が20件の『小説検索(新規更新順)』でも、5分以上最初のページに留まっていられる。
1分当たりの投稿件数が少ない程、露出時間や閲覧機会は稼げるのだ。
「じゃあ、丑三つ時」
スパーン!
「真夜中に新作漁る発掘者と遭遇する可能性を考えろ」
無名投稿者の作品は、発掘者と呼ばれる無名作品の発掘を趣味とする読者層に掘り当てて貰わなければならない。
発掘者は当然、新規投稿がされやすい時間帯を中心に主に活動している訳だから、そこから外れれば、読んで頂ける可能性は極端に減る。
「えーっ。じゃあ、どの時間帯が正解なんッスか?」
「うむ。これは持論になるが、12時~13時の時間帯が狙い目だな」
おすすめ出来る時間帯の候補は、7時台、12時台、17時台、21時台の4つだ。
これらは作品の投稿数が比較的少なくて、閲覧人数が比較的多い時間帯の代表格だ。
このうち12時台は、読者のレスポンスが非常に良いのが特徴と云える。
なんと この時間帯は、読者の目に留まれば、すぐにアクセス数が増える。
なので、初心者向きなのだ。
これ以外の時間帯だと、作品が読者の目に作品が留まっても、直ぐにはアクセス数は伸びず、しばらく待たされる。
例えば21時台であれば、投稿してからアクセス数が伸び始めるのは、24時近くなってからだ。
これは新作を一通りチェックした後、先に定番の作品を読んでから、発掘した新作の読書にかかる所為ではないだろうか?
「了解ッス。投稿は12時ッスね。予約投稿ポチっとな」
「アホかぁぁぁ!!」
後輩の考えなしの行動に、「私」の絶叫が木霊した。