システム的なアレコレ
「まずは「なろう」サイトの投稿システム的な話からだ」
「しすてむぅ?」
後輩は首を傾げて「?」を体現する。
まずはコレを理解しておかないと、先に進めない。
さて、無名な投稿者が作品を読んでもらうのに必要なモノは何なのか?
諸説あるが、共通する項目は1点。
投稿した「作品のタイトル」を、より多くの読者の目に触れさせる事である。
その為に投稿者は、ランキングサイトに登録したり、SNSで宣伝したりする。
その中で最も手軽な周知方法は、「なろう」のトップページに掲載される事である。
「トップページ?」
「そうだ。トップページの中段。『更新された連載小説』の欄に、新規投稿された作品の中から10作品が掲載される。まず無名投稿者が目指すのは、この10作品に入る事だ」
ちなみに、「私」の作品が『更新された連載小説』の欄に掲載された場合の新規読者数(第1部へのユニークアクセス数)は4~8名。
対して、掲載されなかった場合の新規読者数は0~3名である。
つまり、毎日投稿したとして、投稿の都度トップページに掲載された場合、1週間後には最大56名のご新規様が作品を目にするのに対し、掲載されなかった場合は、最大でも21名のご新規様しか作品に触れて貰えない計算になる。
その差、驚愕の2.7倍である。
「んなっ! めちゃくちゃ大事じゃないっスか!」
「ああ、だから掲載される為に、「なろう」サイトのシステム的な事を知らなければならないと云っている」
そう云い放つと、「私」は後輩のノートパソコンを立ち上げた。
「まず作品の投稿を行うと、その約3分後に「新着更新作品」として、サーバーのリストに作品が登録される」
これは『更新された連載小説』の下段にある『もっと見る >』から確認する事が出来る。
「おー! 確かに検索結果の一番上にある作品の最終更新日の時刻は、だいたい現時刻の3分前っスね」
「ああ、そしてトップページの更新時刻におけるこのリストの上位10作品が、『更新された連載小説』に掲載される仕組みだ」
「つまり12時30分ジャストにトップページが更新された場合、12時27分までに投稿された10作品が掲載されるって事ッスね?」
「そう云う事になるな」
そこで後輩が首を傾げた。
「じゃあ、トップページの更新時刻は、いったい何時なんッスか?」
後輩の質問に「私」は渋い顔をした。
そう、それが問題なのだ。
「トップページの更新時刻は、『更新された連載小説』の最上段にある作品の更新時刻+3分。そして次の更新時刻は、そのさらに3分後……だと思う」
「??……「だと思う」っスか?」
「私」は後輩の言葉に頷いた。
実は、「なろう」のトップページの更新は、ブラウザ側でリロード(F5)やスーパーリロード(Ctrl+F5)を行っても直ぐには反映されない。
ゆえに、サーバー上では情報が更新されていても、投稿者側は、それをすぐには知る事ができないのだ。
「だから、こう云う手法を使ってトップページの更新頻度を調べた」
複数の端末を使い、時間差で更新を行う事で、トップページの更新頻度を推測する。
その結果、おそらくトップページの更新頻度は、おおよそ3分間隔である事までは掴む事が出来た。
つまり前述の、投稿からリスト反映までの時間3分を加味すると、『更新された連載小説』の最上段にある作品の更新時刻から6分を足した時間が、次回の更新時刻となる。
「勿論、サーバーの込み具合等によって時間が前後する事はあるとは思うが、おおよそ この考え方で間違いないと思う」
「ん? でも先輩。ココに「このページは通常5分ごとの更新です」って書いてあるっスよ」
後輩はトップページの隅に書かれた文章を目ざとく見つけ出し、「私」にその箇所を指さした。
「良い所に気が付いたな、後輩」
さっきも説明したが、「なろう」のトップページは、ブラウザのリロードごときでは、最新の情報を反映しない。
間を置かず、短い間隔で更新ボタンを連打しても、過去のキャッシュが反映されるだけなのだ。
トップページの更新頻度が3分間隔だとして、2回目の更新時刻は6分後となる。
その際、間にある中1回の更新はブラウザ側でスルーされるので、見た目上は、2回目の更新の際に5分59秒までの作品リストが更新に反映される。
よって、「通常5分ごとの更新」と云う文言は間違っていない。
「ねるほどっスね~」
いろいろゴチャゴチャと云ったが、より簡潔にまとめると……
「トップページの『更新された連載小説』の欄に、投稿作品を掲載しようと考えたら、今掲載されている『更新された連載小説』の最上段にある作品の更新時刻から約5分足した時刻に投稿ボタンを押せ!って事になる」
「おお~っ!!」
狭い室内に後輩の拍手が鳴り響いた。