西域の主10
シュセの語る話を聞き終えたカルは、静かにだが断固とした声でシュセに問いかける。
「2000の兵しか出せない。やってくれるか?」
「我が命に代えましても」
膝を突き最敬礼をするシュセは、腰にかけた銀の細剣を握る手に僅かに力を込めた。
一人になったカルはこれからの対処について考えていた。2000の数は、敵の総数を考えれば決して多くはない。だが、ロアヌキアにはそれ以上の兵を派遣する余裕は無かった。
対岸のポーレは不審な蠢動をやめず、東都ガドリアに至っては、領主が殺され新たな領主が誕生したという。表情にこそ出さないが、新たな領主は、カルが心底憎む賊徒らしい。
南都ジェノヴァはジェルノ家と関係が深い。カルの足を引っ張ることすらあれ、助けるつもりなどないだろう。シュセの話を聞きながらカルは今出せる兵力を計算していたのだ。
幸いなのは敵が連携してロクサーヌに牙を剥かないことだった。連携の取れない敵ならば僅かな兵力しか手元になくとも、恐れるに値しない。
2000を送り出しても、カルの手元には1000を超える兵力が残っているのだから。ポーレ、ジェノヴァ、ガドリアいずれに対しても対処可能のはずだ。あるいは、カルへ刃が届くと思わせた方が、反乱の芽を摘むのに良いかもしれない。
オウカが政治の表舞台に返り咲いたことにより、敵味方の区別が以前にも増して難しくなっていた。表立って反抗するのはまだいい。表面的にはカルに従順に、影では寝首を掻こうとしている輩が、横行するのが問題だった。
オウカを釣る餌としての自分の価値を、カルは確かめ、またそれぞれの勢力への対処も優先順位をも併せて短い時間で考えていた。
「やはり、オウカ・ジェルノか」
獅子身中の虫。取り除くべき敵は、すぐ身近にいる。
ならば、オウカを釣る餌としての自分を前面に出す必要がある。同時に、動揺しているはずのスカルディア派の貴族らをつなぎ止めねばならない。
策が必要だった。
クルドバーツの経営する店は、近頃ロクサーヌの中に本店のほかに支店までも出していた。
武器と防具を扱う店の中では量こそ、大手の店に劣るものの、質の面では大手の店にも負けないと自他共に認めるところだった。
でっぷりと張り出したお腹を揺すりながら、上機嫌で店の経営状況を確かめる。サギリからの恐喝紛いの提案により、出て行った金がやっと取り戻せそうだった。
「まずまず」
満足しながら帳簿を閉じるのと、大旦那と呼ばれるのは同時だった。
「あの、東都からお客様です」
「どんな方だね?」
「二人組のお客様です」
若い手代に一瞬だけ、不審な視線を向けるが、すぐにニコニコとして奥に通すように指示を出す。
「ルカンド殿か、サギリ殿からの使者かな?」
それでもクルドバーツの上機嫌は変わらなかった。
地下二階には様々な武器防具が並び、地上の店の二階は応接間になっていた。豪華とは言えないが、品の良い調度品の設えられた応接間の扉を開けた瞬間、クルドバーツは悲鳴をあげた。
「よぉ、クルドバーツ」
商人にとって金は武器である。武人にとっての剣が槍がそうであるように、商人に取ってはなくてはならないものなのだ。
「サ、サギリ殿!?」
サギリの横でむすっとした表情で立っているのは、魔女の狼と囁かれるジンの姿。商人にとって奪う者と武器の通じない相手の天敵である2人のいきなりの出現に、クルドバーツは先程までの上機嫌も忘れ、心から信じてもいない神に祈った。
目をつむり、夢であれば覚めてくれと念じて手を合わせても、やはり不敵に笑うサギリの姿は、クルドバーツの前にあった。
「祈って助けてくれるような暇な神様はいねえよ」
「あ、いや、その……」
しどろもどろに答えるクルドバーツを横目に、サギリは窓から外の風景を眺めた。
「随分、繁盛してるじゃないか?」
「ええ、まぁ」
思わず視線を外すクルドバーツに、サギリは口元を弦月に歪ませた。
「最近のロクサーヌの様子はどうだい?」
椅子に腰掛けると、行儀悪く背もたれに寄りかかり、問い掛ける。
「西都で、謀叛だそうです。それから、オウカ老が姿を現したと……あぁ少し前になりますが、裏町の賊が一掃されたらしいですよ」
一瞬サギリの瞳に、厳しい光が走るがクルドバーツは動転した気持ちを落ち着けようと、それどころではなかった。
「……なるほどね。ルカの策が図に当たってきたわけか」
底光りする圧力さえ感じる視線は、クルドバーツの口を自然に閉じさせた。
「出張ってきた甲斐があったねぇ。ジン?」
サギリの威圧感の前に、すっかり気配を隠していたジンにサギリは視線を投げた。クルドバーツには今までジンがそこにいたことすら、ほとんど意識の外にあった。
「王様ってやつを殺すのか?」
ジンの静かだが、よく通る声にクルドバーツは一瞬凍り付いた。気負いも脅えもなく夕食のメニューを決めるような気軽さで、一つの国の頂点に立つ人間を殺すと言い切る目の前の男に、まるでそこにいるのが自分と同じ人間ではないような恐怖を感じた。
「ふん、さぁてね。まぁ焦ることもないだろう? ルカにやった期限はまだだし、たまには過程を楽しんだらどうだい?」
呆れたような視線を向けるジンに、サギリは妖しく微笑んだ。
「で、だ」
一転してクルドバーツに視線を向けると、悪戯好きな少女のような笑みを見せて告げる。
「しばらく世話になるから、ねぐらの手配頼むぜ」
目眩がクルドバーツを襲った。
ガシュベルを討ち取ったトゥメルは、クレインが西都から姿を消したことを知る。弁明のために訪れたクレインの館で、怯える召使いから聞き出したことによれば、西方に逃れたそうだ。
「ガシュベルの領地か」
低くうなって、その意図を考えなければならなかった。恐らくは逃げ出した衛士か、侍従などからトゥメルが兵を挙げたことのみを聞いて逃げ出したのだろう。
臆病にも似た猜疑心が疼き、血のつながった息子と言えども、信じることができなかったに違いない。
「ガシュベルの領地へ兵を向ける」
トゥメルは誤解されたまま争うのが嫌だった。ガシュベルの仇と罵られ、正面切って戦うならまだいい。だが、野心を剥き出しに、西方侯主の地位を狙ったなどと言われるのは心外だった。
ナルニアの事は気掛かりだったが、ガシュベルを討ち果たして後、トゥメルにはやるべきことが多すぎた。
ガシュベルを殺した興奮から醒めれば、愛する部下たちの縋るような視線が、胸に突き刺さった。
愛するナルニアをこのまま追い掛けて、自身に付き従ってくれた部下たちが処罰を受けては、やりきれなかった。
トゥメルは迷ったが、迷いを断ち切るように、クレインの屋敷の扉を叩き壊した。
信頼できる部下に、ナルニア達の捜索を任せると、ベルガディの西に広がるガシュベルの領土へ兵を向けた。
――トゥメル来たる!
雷鳴にも似たその報せは瞬く間にガシュベルの領内に広がった。前後してガシュベルの死とクレイン逃亡の報も、駆け巡る。ガシュベルの領内は蜂の巣をつついたような騒ぎだった。
唯一の戦力であるガシュベル麾下の騎馬隊は、降伏と徹底抗戦の議論で真っ二つに分かれ、領内の政治を預かる代官たちは、家族を連れて逃げるのに躍起になっていた。
誰もが、亡きガシュベルとトゥメルの不仲を聞き知っていたし、争いを止められるはずのクレインは既に逃亡したと思われていたからだ。
ある村落は村人全員で山中に身を隠し、またある村落ではガシュベルの圧制からの解放者として歓迎した。
だがその中トゥメルの心中は沈んだままだった。彼の心中を反映してか、歩兵軍は粛々と進み、時折ある小さな抵抗を潰し、一月掛からない内に大森林からベルガディへの西方の地域を占領してしまう。
「そうか」
最後の組織的抵抗を鎮め、ガシュベルの館を占領したトゥメルの感想は一言だけだった。結局彼がこの西方地域を制覇する間にもナルニアの無事を報せる部下からの連絡はなかったのだ。
ガシュベルの領地で代官をしていたものを、無理矢理自身の前に引き出すとトゥメルは冷たく命じた。
「貴様らの主は死んだ。選べ、俺のために働くか、それとも家族もろともの死か」
一喝されて逆らえるような気骨のある者はその場にはいなかった。
ひれ伏す彼らの姿確認すると、トゥメルはベルガディへ引き上げた。
カルの命を受けたシュセは、2000の兵の編成に当たっていた。
「だから、なんで俺らを連れて行ってくれねえんですか!?」
カルの執務室の隣室、近衛の長としての執務室に、半ば自棄になった怒鳴り声が響いた。
「何度も言っているではありませんか。陛下の御身を守るべき近衛が軽々しく動いては、国の威信に関わります」
クラウゼの怒声に答えるシュセは、いたって平静だった。
「それじゃせめて、俺だけでも!」
「私も同感です。一平卒としてでもかまいません! ぜひ!」
クラウゼのように怒鳴りはしないが、一歩も引かないという気構えを見せてシュセを見つめるのはクラウゼの“相棒”の地位が確立されつつあるユイルイ。
ため息をつきつつ、シュセは二人を眺めた。
「良いですか? わたくしがいない間近衛をまとめるあなた方がいなくなれば、一体どうなります? 一体誰が近衛をまとめるのです?」
もう少し考えて発言をしなさいと、シュセは手元の書類に羽ペンを走らせる。
「シュセ様の実力は知っていますが、一人で2000人もの兵を指揮するのは無理です。優秀とは言いがたいかもしれませんが、せめて気心の知れた部下を率いるべきです!」
「そうだそうだ!」
「あら、それなら大丈夫ですよ」
ユイルイの反論に、シュセは何でもない事のように答えた。
「スカルディアの私兵の中から、幾人か融通していただきました。熟練の兵たちで、わたくしも気心の知れた彼らを率いていけるのです。ご心配には及びません」
ぐっと、言葉に詰まるユイルイと、クラウゼ。
「お話が以上なら、お仕事に戻りなさい。時間は無限ではありませんよ」
「……失礼しました」
不承不承頭を下げるユイルイに、クラウゼも憮然としたまま従った。
ひとつため息をついて、二人が去った扉を見やる。彼女とて、あの二人を連れて行けたらどれほど心強いだろう。だが、もし彼らを連れて行ってしまえばカルの王位を狙う者が蜂起したとき、カルの身が脅かされるのではないか、と彼女は考えたのだ。
実力も忠誠も充分な彼らのような人材は、今のカルの王朝には貴重な人材であった。動かせる兵の大半を割いて与えてくれたカルのためにも、シュセは期待に応えねばならなかった。
スカルディア私兵は確かに精強をもって四隣に鳴り響いていたが、それは兵の強さであって、彼らを指揮する人材の豊富さを表すものではない。いかに強兵を誇ろうとも、それを集団として活用できねば十全の力を発揮する前に敵に負けてしまうだろう。
かといって、軍の指揮者が早々簡単に見つかるわけもない。兵を納得させるだけの実力を持ち、兵を率いることができる人物が、早々転がっているわけはない。かつその人物が信用できねば、用いることは難しい。
「少し、根を詰めすぎでしょうか」
息を吐き出すと、こめかみを揉み解し執務室を後にする。向かった先は自身の部屋。そこで男物の服に着替えると、孤児院へ向かうためスカルディアの館でた。
クルドバーツにねぐらを用意させ、高級ではないものの品の良い調度品の数々を眺め、サギリはご満悦だった。
「しばらくゆっくりするかねぇ」
う~ん、と背を伸ばしふかふかのベットに倒れこむ。
その横で不機嫌そうにしていたジンは、固い床に座っていた。
「暇だ」
「だったら、外で遊んどいで」
自分の上半身ほどもある羽毛の枕を抱き寄せると、眠りにつくサギリに、舌打ちしてジンはねぐらを出た。
「何だってんだ」
殺すまでの過程を楽しめ、と言われてもジンには何がなんだかわからない。殺しは殺し、食事を取るのとなんらかわらない。味がどうの、見た目がどうのなどというのは、余計なことだった。食事は腹が満たされればそれでいい。ジンにとっては殺しも同じ、必要だから殺す。それ以上でも、それ以下でもない。
腰にさげた双剣に、触れてその感触を確かめる。気持ちがスッと冷えていくのを感じると、ジンはロクサーヌの街をぶらぶらと、歩き始めた。
しばらく下町を歩けば、ロクサーヌの中央広場に出る。噴水が夏の日差しに、水しぶきをあげて虹をかける。しばらくジンはその噴水を眺めて、一人考え込む。
「そういえば」
確か前にもここに来たことがあった、と。
何年か前に、あの貴族の娘──今は医者の真似事をしているルクという少女をさらった時だ。そこまで思い当たってジンは、かつて馬車を飛ばした道を逆に辿って行く。何かを期待したジンは、だが何事もなくルクの屋敷──今は廃墟となったツラド家の屋敷にたどり着いてしまった。
「何もないか」
ジンの記憶の中で燃え盛るこの場所は、殺戮と闘争の修羅場だった。燃え盛る炎は館を覆いつくし、死兵となった兵士たちが殺しあう。背筋がゾッとするような、記憶が浮かび上がり、また消えていく。それらに蓋をして廃墟を眺めて背を向けた。
そういえば、と再び考え込むともう一箇所あった。足を廃墟から、裏路地へ向ける。
「確か……」
貴族の街の広い裏路地を辿っていく。同じような角を何度か曲がり、気がつけば知らない場所に出ていた。
「ん?」
どこで間違っただろうか。記憶との微妙な差異に、周囲を見渡すが目印になりそうなものはない。段々とジンの心に焦りが出てくる。
腹の虫も鳴いて来た。日は中天からわずかに西に傾き、初夏の陽気は容赦なくジンの焦りを加速させる。
「くそっ!」
腰に吊るした双剣に手を当ててみるが、相手がいないのではどうしようもない。ジンの心を静めてくれる役には立たなかった。とりあえず前に進みさえすればなんとかなるだろう。という何の根拠もない考えで足を前に進めるが、事態は一向に進展しない。
段々と日差しは西に傾き、ジンの焦りを煽る。ふと、ジンの耳に、泣き声が聞こえてきた。歩くたびにその泣き声ははっきりと聞こえ、過去の古傷をかきむしる。
そうして見つけたのは一人の少女だった。
「おい、どうした?」
ガラじゃないと思いつつも、ジンは泣いてる少女に声をかけた。
「足、痛いの……」
火のついたように泣く少女に、ジンは苦虫を噛み潰したような表情になる。見れば確かに10歳ぐらいの少女のか細い足首は、腫れ上がり痛々しく見えた。スカートから伸びた膝には、擦り傷と滲んだ血も見て取れる。
いつしか、そんな少女の様子を覗き込むように観察していたジンは、自身に舌打ちすると、少女の頭をなでながら、言葉をかけた。
「お前……名前は?」
「ミオン……」
少女の目の高さに視線を合わせ、ジンは問いかける。
「家はどこだ?」
「あっち……」
指差す方向は、ジンが来たのとはまったく別の方向。
「くそっ」
自身を罵倒しつつ、少女に背を向ける。
「乗れ、送っていってやる」
きょとんとしたミオンを、促すように手で招くと、戸惑いながら背に乗ったミオンを背負い、立ち上がる。
「それじゃ、行くか」
かつてあったはずの背中のぬくもり。忘れえぬそれを、再び背にしながらジンは歩き始めた。
「これは、シュセさま!」
時刻はすでに、西日の指す時間。あれこれと出かける直前で仕事が舞い込み、シュセが孤児院に着くころにはすでに夕方となっていた。
「なにやら慌しいようですが……?」
出迎えた元ラストゥーヌの使用人達に開口一番シュセは問いかけた。
「はっ、実は……」
孤児院で預かっている子供の一人が未だ戻らないことを聞いたシュセは、柳眉を寄せた。時刻はそろそろ夜の帳が下りてくるころだ。いくら暖かくなってきているとはいえ、未だ一人で夜を越すには厳しい。
「わたくしも探しに行きましょう」
「いえ、シュセさまをそのようなことにっ!」
「探索の人では多いほうが良いでしょう? さあ、お願いします」
シュセの決意に負けたラストゥーヌの使用人達は、彼女に探索を頼んだ。
「ミオン、どこです!?」
手に松明の火を持って、二人一組で戻らない少女の行方を捜す。
「まさか裏路地の方へ行ったのでは?」
シュセと組になった使用人の不吉な一言に、暗い路地裏からぬっと影が這出た。
「おい、聞くがヘルシーラ孤児院ってのは近いのか?」
憮然とした表情のまま問いかける年若い青年に、使用人は驚き青年を凝視する。驚いたのは何も唐突に青年が出てきたからではない。その服についた返り血と、青年の瞳が人でも殺したあとのようにぎらついていたからだ。
「孤児院はすぐ近くですが、何の御用です?」
変わって応えるシュセに苛立ちを抑えかねた青年は、背に負った眠ったままの少女を見せる。
「ミオン!」
使用人の大声に、青年──ジンが眉をひそめ、少女は目をこすりながら目を覚ます。
「あ、ガストンのおじさんだ」
慌ててミオンのそばに駆け寄る使用人のガストン。
「シュセさまもいる!」
シュセの姿を認めた突端笑顔になるミオンに、またも苦虫を噛み潰したようになるジン。
「足を怪我してる」
最低限のことを口にして、ミオンを背から降ろすと、肩を鳴らしてため息をついた。
「ありがとうございます。なんとお礼を言ってよいか」
涙を流さんばかりに御礼を口にするガストンに、ジンは気恥ずかしくなって顔を背ける。
「ああ」
「お兄ちゃん凄いんだよー。悪い人みんなやっつけちゃったの!」
怪我も忘れてコロコロと笑うミオンに、ジンは眉をひそめた。
「悪い人、とは?」
「なんでもない」
ジンは少女と出会ってすぐ、待ち望んだ獲物が現れたのだ。手に凶器を、瞳に悪意を宿らせた自分と同じにおいのする悪人たち。背に少女を背負ったジンは、自分の運の悪さにため息をつき、天を仰いだ。
だが、獲物は弱すぎジンは強すぎた。ミオンを背負ったまま、獲物を蹴散らしジンは彼女の指し示す通りに裏路地を辿ってきたのだ。
普段なら止めを刺すはずの獲物でさえ、痛めつけただけで素通りしてきたのはやはり、背負った少女のためだった。
「なにはともあれ、ミオンを無事届けていただいてありがとうございます。何もお礼らしきものはできませんが、どうぞ孤児院の方へいらしてください」
「いや、俺は……」
「お兄ちゃん! ね、いこうよ!」
断ろうとするジンの腕を、ミオンがつかむ。怪我した足を引きずりながら、ジンの手をつかむ様子にジンの方が慌てた。
「わかった。その代わり孤児院についたら、しっかり怪我の治療をするんだ」
「はぁ~い」
気の抜けた返事に、ジンは眉根をひそめた。すっかりジンに懐いたミオンの様子に、ガストンとシュセは苦笑した。
作者のやる気につながりますので、良ければ感想など残していただけると嬉しいです。ただしやる気と更新頻度とは比例しないのが辛い現実なので、ご理解をしてください。