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The Kingdom  作者: 春野隠者
ゴード暦523年 魔女の系譜
1/103

牙持つ者達

本小説に目を通していただいてありがとうございます。

残酷な描写が各所にありますので、ご注意ください。

表現が露骨な場合がありますので、以下略。





 黒き月は照らす。

 痛みを、苦しみを、絶望を、希望を、復讐を。

 黒き月は狂う。

 滴り落ち、細かく震え、焼き尽くし、落ちてくる。

 宿る、瞳に。宿る、腕に。宿る、背中に。想いは黒く焼け堕ちる。

 業深き、人々の贄。

 生と死の狭間の四人。呪いの子。


 狼と、聖女と、騎士と、王。そして魔女。

 駒は踊り、血は花を咲かす。

 花は器を満たし、蔓は月に絡みつく。

 正義を貪り、悪を飲み干す。

 飢えを、渇きを癒すため、この世の全てに牙をむく。

 愚者は踊り、賢者は謡う。

 聖者は嘆き、死者は哂う。

 歌う、哂う、黒い月。

 声高らかに、この世の全てに災いあれと。







 ソイツは歪に削られた岩の上に悠然と胡坐をかいている。長い黒髪を風になびかせ、整った顔立ちを楽しげに歪ませる。時折見える月が、その姿に陰影を刻む。

「若いのに、良い腕じゃないか」

 膝の上に肘をつき、頬杖をつく。

「……チクショウ」

 地面に四肢を投げ出し、頬を擦り付けながら俺はソイツをにらむ。立ち上がるどころか、腕には、無様に体を痙攣させるだけの力しか残っていない。

 ソイツの顔がにんまりと笑みを湛える。俺に反撃する力が残っていないと思っているんだろう。

「で、だ。アタシに手ぇ出したんだ。覚悟はできるんだろうね?」

 俺は唇を歪めただけで笑った。

 好きなだけほざけばいい。目下状況は最悪だが、俺はまだ死んだわけじゃねえ。

 ──あと一撃。

 それだけの力しか残っちゃいないが、それで十分なんだ。

「さっさと殺せ」

 さあ、近づいて来い。俺に止めを刺すために。

「随分あっさりしてるじゃないか」

 ソイツは大げさに驚く風に両手を広げる。

「アタシを殺すんじゃなかったのかい?」

 俺を見下すのがそんなに楽しいのか、 ソイツの愉しげな笑みは変わらない。何も答えない俺に業を煮やしたのか、ソイツは一つ舌打ちすると音もなく岩から舞い降りる。

「チッ、最近の餓鬼はだらしがないねぇ」

 俺の近くでしゃがむと、髪を掴んで自分の目線まで軽々と引き上げる。その細腕のどこにそんな力があるというのか、土で汚れた俺の顔に息がかかるほどの距離でソイツの顔がある。

 妙に老成した言葉を使うが、その声も顔立ちも少女のものだった。

 風が雲を洗い流し、薄ら蒼い月光に照らされるソイツは、美しかった。

 整った鼻筋に、小ぶりな唇。何よりも印象的なのは、周囲を覆う夜の闇よりも、更に濃い漆黒の瞳。

 ほんのわずかの時間、ぶつかる視線の中で俺はその瞳に魅入られていた。先ほどまで限りなく研ぎ澄ましていたはずの殺意までもが、一瞬その漆黒の宝石に飲み込まれる。

 不意に覗きこむように俺を見ていたその漆黒の瞳が、それる。周囲をかぎ回るように素早く目を走らせると、先ほどの愉しげな笑みを仕舞い込み、真剣な面持ちになる。

 つい、釣られて俺もその視線を追う。

「また、ぞろぞろと……」

 ほんの近くから聞こえたその声に苛立ちが感じられる。

「隠れてないで、出てきたらどうだい?」

 その声に応じるように、闇の中から影が動く。チロチロと、闇に浮かぶ目を残忍な喜びに光らせて。

 ディード。

 荒地に生きる奴等なら、誰もが係わり合いを避けたがる狂人どもだ。

 女は一度瞼を閉じて、再び俺を見るでもなく見る。

「アタシ等に、なんか用かい?」

 そして奴らに視線だけを向ける。間近でみる、そのゆっくりとした視線の移動に殺意が篭っているのがわかる。

 ディードどもは、低く哂った。

「餓鬼を寄越せ」

 ひび割れた声がやつらの口から出る。

 俺はディードどもが嫌いだった。やつらは人を喰う。それだけでも嫌悪を誘うというのに、最低なことに俺はやつらに個人的な恨みがある。

「あん?」

 女は訝しげな視線で俺を見る。

「随分もてるんだね」

 笑えない冗談だ。

「くそったれなことにな」

 一応言い返しておこう。

「で、俺を渡すのか? 一応忠告してやるが、渡したらさっさと逃げたほうが良いぞ」

 目を見開いて、驚いたように俺を見ると女は不敵に笑う。

「まさか、アタシの獲物を横取りするやつは死んだほうが良い」

 俺の言葉を一笑に付した女の瞳が俺を射すくめる。引き込まれるような、その漆黒の瞳が愉快げに揺れ、俺を映す。

「見てな、餓鬼」

 勝者特有の傲然とした物言いで、俺を解放すると女はディードどもに向き直った。

 ディードどもから低い雄たけびが上がる。手に手に鈍器を振りかざし、俺と女に向かってくる。四方から迫るその凶器に、女が打ちのめされると思った瞬間、女の口元が禍々しく、笑みの形を作った。

 俺はその光景が信じられなかった。

 女がディードどもを圧倒してやがる。あの細い体のどこに、そんな力があるのかと思われるほど、その動きは俊敏で攻撃に転ずる時の力強さは、女の2倍もあるディードを引き裂くほどに強靭だった。 

 女がいかに強いと言っても限界がある。ディードどもは数に任せ粗雑だが威力のある攻撃を繰り返す。そのうちの一つが女を捕らえた。苦痛を噛み殺した短い悲鳴が聞こえ、女の小さな身体が俺の傍まで吹き飛ぶ。たまらず俺は声をかけた。

「おい……」

 女はチラリと俺を一瞥すると、迫り来る凶撃に再び目を向けた。そのすぐ横を唸りを上げて刃の欠けた斧が通り過ぎる。俺の目の前を、女が舞姫のように跳ね、ディードどもがそれを追う。

 女を取り囲むディードの一人が、女の死角から凶撃を振るう。その瞬間俺の体は自然に動いていた。女を殺す為に取って置いた奥の手だ。体の中を沸騰した力が駆け巡り、全身から一気に力が抜ける。一緒に消え失せそうになる意識を、必死につなぎとめ、女を狙った凶刃とその所有者に向けた。


 ――切り裂け!


 無色透明の刃が埃を巻き上げ地を翔ける。狙いは過たず、牙を剥いた俺の風はディードとその獲物を切り裂いた。パっと血の花が咲きディードは崩れ落ちた。

 限界だった。

 薄れていく視界の中で、俺は女がディードどもの最後の一人を片付けるのを見た。



△▲▲



 背負った子供を地面に放り投げると、アタシは周囲を見渡した。

 荒涼とした大地が横たわり、低い潅木が所々に密生している。しばらく前にこの、荒れた土地へ流れてきたがいけ好かない場所だ。

 小さく舌打ちして、目を空に向ける。曇天が重く圧し掛かるように頭上を覆う。強い風が土埃を巻き上げて、吹き抜ける。自分の長い髪が、風になびくのを感じながら、まるで自分の心のようだと、感じた。

 遠くに見える山脈、それをぼんやりと眺めた。あの向こう側には街がある。《人間》の住む場所だ……。

 小さなうめき声に、アタシは子供のほうを振り返る。

 まだ十歳を少し超えた程度だろう。眠っている顔を見れば、愛らしい。伸び放題の黒髪は奔放さを、整った鼻筋はどことなく気品を、歪んだ口元は傲慢なほどの自信を持っていた。そして何より印象的なだったのは殺気を宿らせた琥珀色の瞳。食うや食わずで生きてきたのだろう、酷く痩せてはいたが、瞳に宿る狂気にも似た光は全く衰えを見せず、精悍さすら感じた。

 この子は人間の皮を被った獣だと、出会った瞬間から感じた。知らずに口元が緩んでいた。どんな理由かは知らないが、この子はアタシを助けたのだ。

 何もかも放り出して、流れ着いた最果ての地。そこで出会ったアタシに似た力を持つ少年。

「運命か……」

 逃れられないのか、それとも最初からアタシがここに来ることが決まっていたのか。

 どちらにしても、逃げ場は無いらしい。 

 逃れられない運命、なら牙を剥いてやるのも良いかもしれない。

 そしてこの子だ。

 この子供は使えるかもしれない。

 例えそれがアタシの命を狙っているとしても。そっと子供の頬をなでて、アタシは子供の上に圧し掛かった。



▲△▲


 俺は自分の上に覆い被さる女の体重を感じて全身の毛が逆立った。ご丁寧に、投げ出された俺の腕は女の手で、両腕とも押さえつけられている。

 耳朶をくすぐるように、甘い声で女は囁いた。

「……いつまでも寝たふりなんてしてんじゃない。さっきよりもっと酷いことしちゃうよ」

 バレてやがる! そう思った瞬間、俺は全身のバネを一気に引き上げて女の手を振り払った。

「クックック、な〜んだ。やっぱり目覚めてたんじゃないの」

 女は地面に胡座をかきながら、俺を眺める。全身に緊張感を漲らせ、俺は女を睨んで身構えた。

「殺してやる」

「そればっかりだねぇ」

 にたり、と女が笑う。

「さっきまでは、なんで寝たふりなんてしてたんだい?」

「うるせぇ関係ねえだろう」

 女は何の警戒もなく立ち上がる。無防備だ、チャンスだ。

「もしかして、捨てられた母親に背負われたことを思い出したとか?」

「うるせぇって言ってんだろうが!」

 軽薄な態度の女が両手を広げて首を振る。なんで足が動かない?

「なにムキになってんだい。それじゃあ事実だって認めてるようなもんじゃないか」

 口から漏れるのは無規則な、乱れた呼吸だ。なぜ俺の呼吸が乱れる? まだなにもしてねえだろう?

「さっきアタシに触られて感じちゃってた? 随分気持ちよさそうだったけど」

 わからねえ、わからねえ、わからねえ! だけど一つわかることは、これ以上あの女に喋らせるのは危険だってことだ。あいつに喋られているだけで、俺は俺でなくなっちまう。

 できる、やれる、殺せる。心に深く念じる。いつだってやってきたはずだ。

「さっきの続きをしようってのかい? まぁ悪くはないけどねぇ」

 一瞬のために、体に力をため込む。意識を絞れ、あの女の首を取る。それだけに集中しろ!

 ふっと、女の体から力が抜けたように見えた。


 ──今だ!


 意識が景色を置き去りにするような浮遊間の中、俺の風は女の首筋目がけ飛翔した。

「へぇ、これがアンタの力か……」

 ……なんでだ? 何で殺せない? 外れたはずはねえ、女は腕を振っただけだ。打ち消された? 暗闇の底へ引きずり込まれるように俺は、膝から地面へ崩れ落ちた。意識が急速に遠くなるのを覚えるが、もはやそれに抵抗しようとする気力もなかった。



▲△▲



 目の前の少年が倒れ込むのを確認してから、アタシはそっと近づいた。気絶している。無理もない、こんな小さな体で、力を使ったのだ。おそらく誰にも教わっていないのだろう。荒れた大地が彼をここまで磨き上げたのかと思うと、軽い嫉妬を覚えた。

 幼い瞳が、驚愕に見開かれるさまを思い出す。おそらく誰にも負けたことなどなかったのだろう。倒れたその横顔をのぞき込み、そっと髪を梳く。力をみたいがための挑発だとしても、彼は傷ついただろうか。

 ふと、アタシは嫌な女だなと思った。

 曇天はやはりどこまでも続いている。遠くに鳴り響く雷鳴に急き立てられるように、アタシは再び少年を背負った。

 土煙を上げる風を避けてアタシは灌木の陰に入る。ねぐらにしている場所までもう少しと言うところだ。今度は少年を傷つけないように、ゆっくり地面に横たえる。

 アタシも少し休もう。彼が目を覚ますのはもう少し時間がかかるはずだ。

 膝を抱えて、ほんの少し眠りに落ちる。

「んっ……」

 少年のうめき声に私は意識を覚醒させた。まだ意識は戻っていないのだろう。身じろぎをしただけで、すぐに動かなくなる。悪夢を払うように、アタシはじっと少年の横顔を見つめる。

 なんだか、猫を飼い始めたときを思い出した。軽い心の痛みと共に、自然と頬が緩む。再び少年を背負い、私は歩き出した。

 ねぐらに戻ったアタシは、少年を枯れ草を敷き詰めたベットに横たえる。すぐそばには泉がある。この荒地で数少ない貴重な場所だ。雨露を凌げる最低限の、木々を組み合わせて作ってある。決して快適とはいかないが、贅沢を言うわけにはいかないだろう。

 藁を敷き詰めただけのベットに横たえ少年の顔を飽かずに眺める。まるで宝物を手に入れた時のように胸の鼓動は早かった。



▲△▲



 俺が再び目を覚ましたのは、藁が敷き詰められただけのベットの上だった。

「おい」

 体の節々が痛い。起きあがることもできない、首だけを動かして女に声をかけた。

「起きたのか?」

 女は俺が起きたのを確認すると、席を立った。帰ってきたとき女の手には、シクの実が握られている。女の手に収まる程度の小さな果実だが、甘い果汁が特徴の貴重品だ。

 それを女は俺の目の前で、何の躊躇いもなく一口かじる。思わず、ゴクリとなる俺の喉がこれほど恨めしく思ったことはない。

「ほしいか?」

 心根を見透かされたようで、俺はぶっきらぼうに答える。

「いらねえよ」

「ああ、そうかい」

 そういってまた一口、かじる。

「本当に食べないの?」

「い、いらねえよ!」

 口ではそういいつつ、俺の視線はシクの実に釘付けになっていた。

「美味しいんだけどねぇ」

 また一口、見せつけるように……いやコイツは俺に見せつけているんだろう。くそっ頭に来る女だ。女にその気がないからなのか、やりあったときのように女の言葉から不快感を受けることはなかった。

「クックッ、嘘だ、ほら食べろ」

 ちょうど口の前に差し出されたシクの実。

「い、いら……」

 言葉をすべて言い終える前に、シクの実は強引に俺の口の中に割り込んだ。薄い皮の下から、甘い果汁が俺の口の中に広がる。一噛みするごとに、新しく広がるその甘みに、気づくと口の中のシクの実は胃の中に収まっていた。

 いや、食べたんじゃない。胃の中に入っただけだ。たぶん……。

「なんだ、もう食べちゃったのかい?」

 やり合ったときとは別の意味で、女の言葉は俺の心を揺さぶった。

「うるせえな、腹減ってたんだよ!」

 あのシクの実には何か入ってたんだろうか? 自分でも不思議なほど素直に言葉が出てくる。

「アタシを狙ったのもそれが理由?」

「ああ、そうだよ! 腹が減ってれば他の奴が持ってるのを奪うしかねえだろうが!」

 いつしか言葉は叫びに変わっていた。荒地じゃそれが現実だった。石や土くれは食えねえし、そこら辺の草には毒がある。おいそれと手を出せるもんじゃない。水ばかり飲んだって限界がある、だから他人の懐を狙った。

 女はため息をついてまたシクの実を取り出してきた。

「食いな」

 目の前に差し出されるそれを、痛む体を無理に動かして受け取った。

「アンタ名前は?」

「ねえよ」

 なにを考えてるんだろうこの女。

「……ならアタシの手下にならねぇか?」

「あぁ?」

 思わず思い切り女の顔を見てしまった。首が痛てえ。

「アンタがほしいもんは、全て持ってると思うんだがね?」

 ちょうど同じ高さの女の目を見返すが、からかう色は微塵もない。

「俺がほしいのはな、てめえの命だ!」

 食いかけだったシクの実を丸ごと口の中に放り込む。

「あぁ、構わねぇよ」

「はぁ!?」

 予想外の答えに、俺は戸惑う。

「じゃいいな? アンタたった今からアタシの手下で!」

 いや、良くねえよ、全然。

「なんか問題ある?」

 女の眉間に皺がよる。

「俺おまえを殺すって言ってんだけど、大丈夫か?」

 頭の悪い奴を見るような哀れみの視線を俺に向け、女は再び口を開いた。

「アンタの腕でアタシに敵うわけないんだから、全く問題ないよ」

 うわ、言い切りやがった。

「てめえさっき俺のほしいもんは全部持ってるって言ったじゃねえか!」

 ああ、と女は天を仰いで口の端を歪めた。

「誰がやるって言ったんだ? ほしいもんは自分で取れ」

 俺が唖然としているうちに、女は勝手に納得した様子になる。

「もう、問題ないな。あぁー……アンタの名前決めなきゃな。えっと……」

 少し考える風をして、女は嬉しげに俺の名前を告げた。

「ジン! どうだ、いい名前だろ?」

 女は立ち上がり思い切り胸を張る。

「アンタは今日からこのサギリ様の一の子分、ジンだ!」

 そう宣言するサギリの顔は、今までみてきた毒々しさの欠片もなく、ただ無邪気に喜ぶ少女のような笑顔だった。

「……殺せよ」

 冗談じゃない。

 殺して殺して殺し尽くしてやる。

 ディードも、大人も、女も俺が生きている限り。

 そう決めて生き延びてきたのだ。

 俺が負けるときは死ぬときだ。

 やっとこのくそったれな人生から開放されると思ったのにっ!

「殺せよ!」

 気づけば、俺の視界は曇っていた。泣いている。くそったれ、泣いているんだ俺は。

「殺してくれ、俺はもう疲れたんだ」

 うんざりだ。

「おい、ジン」

 低く呼びかけたサギリの声が響いた瞬間、俺の胸倉は掴み上げられ強制的に泣き顔を上げさせられる。

「負け犬にぐだぐだ言う資格なんて、あるわけねえだろうが!」

 右頬をぶん殴られる。

「てえな!」

「そうだよ、その意気だ」

 見下すように嘲笑うサギリ。

「殺してくれだぁ? 女々しいったらありゃしない!」

 投げ出された俺に、馬乗りになってサギリは俺の腕を固定する。

「余計な事考えんじゃねえよ! お前は、アタシに負けた時点でアタシのものなんだ!」

 俺でもわかる単純で、粗暴なガキの理屈だ。

「お前はアタシの為に生きてアタシの為に死ね!」

「ふざけんな、なんで俺がっ」

「十日に一度、アタシを殺す機会をやる。気に入らないんならアタシより強くなってアタシを殺せ」

 だが、それを口にするサギリの瞳は真剣そのものだ。

 馬鹿みたいに単純で、俺に命をくれると言った。

「後悔、すんなよ……」

「ハッ、そうこなくっちゃな」

 俺に名前と、目的と、生きる場所をくれた女は、不敵な笑みを浮かべた。

 この世の全てに牙を剥くような、凶暴で美しい笑みを。


小説を読んでくださいましてありがとうございます。

まだまだ至らぬ所もありますが、何卒ご容赦を。

不定期で連載していきます。

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