表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村人Aの野心  作者: 阿須斗路
4/4

村人Aの決意


ふう。なんとかなったな…。

身体中の痛みをこらえ、村から走ること10分。

ここまでくれば大丈夫だろうと、エースは全力疾走で疲れた体を癒していた。


俯き、荷物を降ろし、さっきのことを思い出す。


勇者が家に来たこと。いきなり自分を殺そうとしてきたこと。勇者は異世界から来ていたこと。自分に魔法が効かなかったこと。母が洗脳されたこと…。

理由を考えてみるが、明らかに常軌を逸している。答えなど出るはずもなかった。


僕は逃げおおせたが、あの村はどうなってしまうのだろう。全員洗脳されてしまうのだろうか。

物という物、人という人を全て奪われ、死者なくしてゴーストタウンになってしまうのだろうか。


それとも誰かは逃げ出せるだろうか。家族は。ユノは。深く考えれば考えるほど、気分が暗くなっていく。


同時に、あの勇者への憤りも湧いてくる。

何が勇者だ。能力が高いだけの、下衆じゃないか。人を人とすら思っていない。どうしてあんな奴が神なんかに好かれるんだ…。



僕は、村人Aとして、あの勇者を歓迎する義務があった。だが、そんな気はさらさらない。

あんなのは、僕が思い描いていた勇者じゃない。

多分、同じ街の人、同じ大陸の人、下手すればこの世界の人も、魔物も、同じことを思うだろう。


ただ、「勇者」の実物を見ないとそうは思えないだろうし、僕もそうだった。でも、実物と目を合わせでもしたら、洗脳されてそうは思えなくなる。


こんなことが許されていいのだろうか。


仮に皆が洗脳され、この世界が「勇者」の存在を許しても、僕だけは許さない。


何故だか知らないが、僕には魔法が効かなかった。もともとあってないような命だったのだ。

失敗してもいい。僕は、何があろうともあの「勇者」には屈しない。

そう決意した。




これからのことを考える。


街以外のところには魔物がたくさん湧いているが、街には勇者が来る可能性がある。ハーレムがどうのとか言っていたし。


次も魔法が効かないとは限らないし、極力街には立ち寄らないほうがいいだろうと思案する。お金も忘れてきたし。


魔物を倒せば経験値も入るので、もしかするとあの「勇者」よりも強くなれるかもしれない、と希望を抱いてみる。性格は僕の方がいいし。


考えた結果、この世界最強とも呼べる人物を敵に回したエースへのツケは、街に寄ることがほとんどできないということだった。

当然、魔物対策も必須になってくる。


今日はもう少し勇者との距離を稼いでから寝よう。そう思ったエースは、おもむろに荷物を漁る。そしてあることに気がついた。


「あっ、武器がない。」


エースの当面の課題が決まった瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ