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私は産まれ落ちたときから孤独であった。しかし、それでも人間は嫌いであった。具体的な理由があった訳ではない。ただ何となく、ろくに知りもしない人間に対する嫌悪感だけがあった。だが、私は自分の孤独を癒さなければいけなかった。誰かに寄り添われ、暖かい夜具の中で休む必要があったのだ。そのために私は姿を変えた。誰かから愛される姿にならなければいけないと考え、そしてそれは人間の姿であるように思えた。


 まずは頭から胴体を引き伸ばし、並行して顔を作った。曲げたり、引っ張ったり。私には少し難しかった。特に目は難しかったので、一つ作ったところで諦めてしまった。次に腕を生やした。合わせて二対。誰かの手を取る、抱きしめる、用途はある。多いに越したことはない。足の数は少し迷った。多すぎると絡まってしまう。考えた末に三本にした。骨や内臓は手が回らなかった。間に合わせで石を詰めた。劇的なものではなかったが、私は二度目の誕生を果たした。


 私の姿は既に人とはかけ離れたものとなっていた。化物と呼ぶのがよく似合う見た目である。だが私はこのことに安堵し、充足感のようなものを感じていた。私は遂に人ではなかったのだ。あの忌まわしい人間とは異なる生き物だったのだ。私は新しく作った口を使って初めて笑った。小刻みに空気が出入りしたが、声はほとんど出ていなかった。不格好であったが、私は確かに笑っていた。依然として孤独は感じていたが、焦りは無くなっていた。明日は私と同じような化物を探そう。そして、連れ立って木の幹をかじり取るのだ。心の昂りを抑えきれず、大きく叫び声を上げた。誰にも教わらずとも、そうすべきだと分かっていた。醜い声は空に向かい、木々の葉と擦れながら溶けていった。

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