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執事の休暇2日目



 屋敷の執事室の一室。旧友との出会いのうち。執事長は顔を戻そうかと朝起きて考えていたときだった。


 ふと、白く輝く物が見える。執事長は慌てて飛び起き。方眼鏡を異界倉庫から取りだしてつける。


 すると……鋼の鎧に身を包んだ懐かしい人の姿が写し出された。何かの得体の知れない物を見れる眼鏡に感謝しながら彼は頭を下げた。


「驚きました……すでに成仏か転成しているかと思っていましたよ。キサラギ・ナイツ様」


 深々と頭を下げた彼にキサラギ・ナイツと呼ばれた金色の髪の女性は白い透けた手を頬に触れる。


「……ひさしぶり。バルバロス」

「その名前は捨てました。今はセバスでございます」

「……旧友でもその名前で呼んで欲しいの?」

「黒歴史でございます」


 執事長はバツが悪そうに冷や汗をかく。とにかく忘れたい恥ずかしい過去もあるようだ。


「そうですね。スゴく……そのバルバロスは変わりました。幽霊ですか?」

「その……幽霊ご本人様が疑問を持つのは変だと思います。逆に私も幽霊になられて柔らかくなった気がします。それが本来の貴女でしょう」

「……くす。そうね…………」


 執事長は銀時計を見て時刻を見る。夜中ではない昼間であり。はっきりと見える眼鏡越しの幽霊にどれだけの無念を持っているのか気になった。


 あわよくば……それを解決し。健やかにお眠りして欲しいと思うのだ。


「私がハッキリ見える理由は眼鏡のお陰ですが……それでも強い未練を感じます」

「……はい。そう……何も解決出来なかった」

「………」


 執事長は静かに話を聞く。


「私は魔物にやられ……倒れた。それは皆が知っている事実でしょう」

「はい。申し訳ありません。力を持ちながら驕り、生意気だったために油断して最悪な結果を生み出しました」

「そう。あなたは性格に難あれど強かった。だけど……それだけじゃないの」

「それだけじゃない?」

「私は……脅されていたの。今から言うことは真実です。そして、グローもそれを知りませんが同罪です」

「…………」


 執事長は眉を潜める。


「私は……王国に脅されてあなたを落とすために利用されたのです」

「……」

「そう、あなたは……はめられた」

「……」

「ごめんなさい。私が……あなたを信用しなかったのも悪かったの。結局皆……なんでもない」

「信用しなかった訳ではございません。信用に値しない男だっただけです。馬に蹴られて死ねばと常日頃から思い出しております」


 執事長は頭を掻く。昔のように。


「そうですか……では。王国の闇を教えます」

「……闇ですか?」

「そう……闇です。それも……恐ろしいほどの」


 執事長は続きを制止する。メモを用意し、書き留める準備を行った。


 執事長は油断していたのか……幽霊が話す内容に次第に厳しい顔つきになり。最後には一言だけ愚痴った。


「滅ばす国として打診しましょう……それも……惨たらしく」


 執事長が久しぶりに語気を荒げたのだった。







 執事長はギルドの酒場に顔を出した。旧友から聞いた話によると王国地下には恐ろしい施設があり。今もなお続けられているという。


 悲しい話はその犠牲者にキサラギの兄弟一部が殺されたのこと。生き残ったのは……我が祖国に逃げ切ったと聞いた。今も兵士として復讐を望んでいるとのことだった。


「すでに……王国は歪んでいたのですね……」


 彼女の話を聞いてから……昔に居た場所があまりにも汚れた場所だった事に何とも言えないと執事長は思っただろう。


「冒険者の方ですね……登録お願いします。お名前を」

「バルバロス・グランドドレッドノート」


 あまりにも恥ずかしい名前に執事長は呆れる。昔の自分が大嫌いな執事長は苦々しく名前を言った。


「えっと……」

「……ギルドカードです」

「なっ!?」

「登録しといてください。そして、誰かに聞かれたら答えてください」



 執事長は笑顔で語る。思い出すは傍若無人だった若き頃。



「くそったれの悪童が帰ってきぞ」



 執事長はただただ短く受け付け嬢を脅すのだった。







 お昼を食べながら。私はおじさまの事が気になり執事に声をかける。


「おじさまは?」

「おじさま……ああ。執事長は冒険者の装いで何やら調査を行っています」

「休暇……よね……」

「何やら、私らにも噂について聞いてこられましたので………もしかしたら……」

「何かを掴んだ?」

「鬼気迫る表情でした」


 腕を組んで悩む。


「その表情見たかった」

「それはもうん……格好いいお姿でした」

「よし!! 今日は尾行しよう!!」

「わかりました。ではこれをお使いください」


 執事が布を取り出す。こいつも空間弄り取り出すのか……移動以外もこなすのは益々執事長みたいだ。


「これは?」

「隠れ蓑です。被り、魔法をかけますと見えなくなります。執事長も騙せるほどですが……あの眼鏡をかけられている時は気を付けてください」

「わかった……ありがとう」

「ええ、お嬢様の恋路応援しております」

「………えっ?」


 私はビックリする。なんでバレる?


「執事長に対する行動は非常に分かりやすいです。執事長は昔から疎いところがあり大変でしょう」

「……はは……がんばる」


 恥ずかしい気持ちを押し殺して私は笑顔で頷いたのだった。



 



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