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執事の休暇1日目


 休暇初日に執事長は鏡を見ていた。鏡を見て老けた顔を眺めたあと……彼は魔法を唱える。


「この姿では……あまり元気に遊んでいるのは変ですね」


 魔法を唱え終わり。再度鏡を見ると……若い顔つきになった執事長がいた。冒険者用の軽装とローブを買い。それを着込む。


「……忌々しい時代の姿ですが。こちらの方がいいでしょう。会いに行くのですから」


 執事長は飾りの剣を帯に着けてマントを翻し……扉に向かって歩きだす。


「まだ、この若い時は空間魔法などは……使えませんでしたね」


 懐かしい気持ちで国に捨てられた男は捨てた国に一人帰ってきたのだった。


 屋敷を使用人たちにキャーキャー言われながら優しく微笑んで手を挙げて挨拶し屋敷を出る。


 執事長は銀時計を見ながら時刻を確認する。今日は遅くまで寝ていたので9時頃である事を確認した。確認後に花売りの店を見け、扉を開けて中に入る。


「いらっしゃいませ」

「こんにちは……薔薇を一束いただけないでしょうか?」

「はい……お、お包みします」


 執事長は硬貨を袋から取り出す。価格の倍ほどのお金を。そそくさと女性の店員は薔薇を用意し布で包んだのを手渡してくれる。


「どうぞ」

「ありがとう」


 お金を手渡す。その瞬間に女性の店員は驚いた顔をする。


「えっ……あの!? 多いですが‼」

「これは素晴らしい薔薇です。それに……貴女のように綺麗です。多いでしょうが気持ちです……そうですね。一束をあなたにと言うことで受け取ってください。今日はそんな気分なんです」


 執事長は優しく微笑んで語り、若い店員が照れた表情をする。恥ずかしい事を言っている気はしてるのだろう。だが恥ずかしいとは微塵も思っていない素振りの執事長はそのまま店を出るのだった。








 執事長は王国を歩き、懐かしい空気を吸いながら郊外へ向かい。馬を買って外壁の外へと進んだ。


 時刻は銀時計で確認し彼は王国から少し離れた高い丘の場所に到着する。


 そこは……手入れが行き届きにくい場所であるが高原が開けており。多くの磨いた石が積み上がっていた。日はしっかり登り暑さが生まれながらも風が涼しさを生む。


「増えてますね……」


 執事長はずっと前に来たときよりも石の数が増えている事気付いた。馬を高原に立つ聖樹一本にくくりつけて目的の場所へ行く。


「お久し振りですね」

 

 目的の彼女の前に執事長は立った。綺麗な四角い石にはキサラギ・ナイツここに眠ると彫られている。


 そう、ここは元冒険者であった執事長の仲間が眠る場所だった。


 冒険者たちの墓は都市から離れた高原にある。仲間が埋めるため……そう、壁の中ではなく外に作られるのだ。冒険者故に縛られていないと言う事なのだろう。



 手入れは行き届きにくいが……それでも綺麗に石はその場に座る。執事長は……ゆっくりとしゃがみこみ薔薇を置いた。



「最近……あなたに良く似た人がいるんです。キサラギさん」



 執事長は墓に語り出す。



「貴女のように女騎士であり……側近の立場の人で非常に頼りになる方です」



 昔の旧友に語るように優しく。



「名をオオコさんと言います。正義感の強い方ですが……演じてる部分もあり。弱さを見せない人でした。キサラギさんみたいですね」



 語る言葉は風に乗る。



「だけど……ここ数年でやっと心を開いてくださいました。嬉しいですね……ええ……キサラギさんの懺悔みたいな感じですが。同じような悲しい結末は回避出来るように頑張りたいと思います」



 執事長は誰にも見せない表情を亡き仲間に見せる。



「空から見ていてください、キサラギさん。残念ながら自分は堕ちる人間でそちらに行けそうもありませんから……伝えられないのです」



 執事長は地獄へ堕ちると言っているのだろう。



「ふぅ……」



チッチッチッチッチッチッチッチッカチッ



 執事長は銀時計を見る。彫られた文字と時刻を見たあと。執事長は立ち上がった。



「それでは帰ります。今回は帰ってこれる事情がありました。次はいつかわかりません……それまでさようなら」


 踵を返し、執事長は歩き出した。そして……運命の歯車が動き出すのを私は感じ取った。何故なら。


 他にもう一人。会いに来た人が居たからだ。


「……お前は……お前!?」

「………」


 そう……会いに来たと言うことは知り合いの確率が高い。


「お前は!! バルバトス!!」

「……」


 執事長は銀時計を仕舞い。溜め息を一つついて名前を呼んだ。同じように冒険者の服に身を包み大きい剣を背中にかけた赤い髪の男。


「グローさん」

「お前が何故ここにいる!! 国外追放されたはずだ!! それに!! その顔は!!」


 執事長に顔は若い。非常に若い。


「何年もたった筈だ!!」

「数年でそこまで変わりませんよ。グローさん。グローさんも変わっていません」

「……くっ。なんだその口調。気持ち悪い……お前……なんで帰ってきたああああああ!!」


 グローが剣を抜く。その剣は黄金に輝き聖剣であることが伺えた。執事長は目を細める。


「強くなりましたね」

「当たり前だ!! なんで帰って来たか理由を言え!! 国外追放者の不法侵入という大罪を見逃して欲しいならな!!」


 グローの自信満々な言い方に執事長は彼が冒険者として高い地位を持つことが理解できた。


 大出世している元仲間に笑顔を向ける。


「何がおかしい!!」

「いいえ、キサラギさんは喜んでるでしょうと思っただけです」

「お前が彼女の名前を語るな!! 助けなかった癖に!! 強かった癖に!! なにもしなかった癖に!!」


 グローが罵声を浴びせる。執事長は頷く。


「そう……見殺しにしました」


 罪を認める。


「お前があああああ!!」


 剣を構えたまま飛び、グローは大きく切り払う。しかし……何も斬り伏せない。気付けばすでに執事長は背後にたち銀時計を見ていた。


「3分だけ……会話をしましょう」

「お前と話すことはない!!」


シャァアアン!!


 背後に向かってがむしゃらに剣を振るう。しかし、何も捉えない。


「今日、ここに来たのは墓参りです」

「お前かが!! 見捨てたお前かが!!」

「ええ、それだけです」

「ふざけんな!! 彼女はそんなことを望んでいない」

「………そうかもしれません」


 執事長は絶妙な距離感を保ちながら攻撃をかわし続ける。


「ですが……私は彼女は優しかったと覚えています」

「くっそ!! このやろう!!……我が命ずる全てを凪ぎ払うはこの剣なるや!!」


 呪文を唱え出し。執事長は銀時計を見た。


チッチッチッチッカチッ


「時間です。眠っている地で暴れるのは行けませんね……決着でもつかたそうなのでまた別の場所でお会いしましょう」

「逃げるな!! なに!?」


 執事長は背後にそのまま空間に穴が空き入る。そして……そこには執事長は居なくなった。


「くっそ!! どういうことだ!! 何故!! 何故俺は最高ランクでも追い付けない!!」


 グローは剣を地面を叩きつける。悔しそうに憎々しそうに叩きつけたのだった。





 馬も一緒に転移し王国に戻ってきた執事長は銀時計しまう。


「はぁ……飛んでも監視の目はありますか」


 そう愚痴って歩き出した。


 自分は胸騒ぎがする。どうなるのだろうと。



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