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執事長の休暇申請


 揺れる馬車の中で私は窓の外を見た。道行く風景に懐かしさを覚えながら私は対面に座る執事長に声をかける。


「懐かしいわね……こうやって昔を思い出しながら旅の醍醐味ね」

「……ええ」

「どう? 祖国は」

「祖国はお嬢様の国でございます。それに国外退去の身……今さら未練などございません」

「そう……」


 いい感じに会話ができている。私は側近が剣を抜いてまでの憤りを退け二人で王国まで出払っている。過去の父上母上が住んでいた屋敷に私たちは1月住み。婚約者を探すと言う任務がある。


「側近とそういえば何かを賭けたと聞いたけど……なに?」

「申し訳ありません。二人の秘密でございます」


 側近は何か手を打ったらしい。さすがはライバル。


「にしても賭け事するのですね。意外」

「そうですね。昔からの褒められない趣味ですが……側近とはよくしております」


 ギャンブラーはイメージが悪い事を執事長は知っていた。私は何故楽しいかを聞く。


「楽しい理由は自分の力ではなく運や予想外、予想できる事が混ざり合い。操作が出来ないことが素晴らしく楽しいですね。私の運は能力に比べ非力であり勝率も高くない。だからこそ勝ったときは嬉しいのです」


 なんとなく趣味な理由がわかった。絶対に勝てるのはつまらないと彼は思っているのだろう。強者の悩みとは変なものだと思った。


「最初から強いと努力はしないもんな」

「そうです。お嬢様」


 執事長は銀時計を見て時間を計算する。黒い炎を纏った馬が走り抜ける。そして、同じように馬が並走しだす。


「あと1日と15時間後ですね」

「……めんどくさく。なんで空間魔法使わないのよ」

「祖国には道しるべがありますし。王国に潜入で大規模な魔法はバレてしまいます」

「それでもいいから……時間かかりすぎ」

「お嬢様……醍醐味と……」

「飽きた」

「仕方ないですね。30分後に開けます」

「やった~」

「お嬢様……堪え性がないのは如何なものかと思います。30分苦言をお聞きください」

「………」


 30分間。偉大な母上と父上の良いところを語られ。それに比べお嬢様はと精神的に来る的確な攻めに私は……泣きそうになったのだった。


 親出したら………なにも言えないじゃんか!!








 30分後。空間が歪みそのまま王国の目の前に飛んだ。悪魔の馬は大人しくそのまま王国内の屋敷に入った。


 屋敷には冒険者兼使用人の方たちに出迎えられた。


 冒険者兼使用人な理由は冒険者として屋敷に泊まり込んで稼ぎ、時たま私のような人が来たときに使用人として振る舞う上級使用人達が在住している。


 スパイと言えばそうだが……執事長が選んだ精鋭のみの使用人達が集っている。


 故に……


「お荷物はすでに移動させました。長い旅路でしたでしょう。お風呂とお夕食をご用意させていただいております」

「お風呂先で」

「かしこまりました」


 若い青い髪をした顔も格好いい青年の執事に案内される。執事長は使用人達一人一人に声をかけに勤しむため後は彼に任せるらしい。任された執事も空間魔法を使える魔法使いだ。


「………」


 最近言われている。兵士〈騎士、魔法使い〈使用人、執事という並びが全く間違いじゃないような気がした。しかし、それも我が国の人的資源の低さ故に起きている現象だろう。


 とにかく国土のわりに人がいないのだ。


「お嬢様。どうされましたか?」

「いや……いつも遠くの地で苦労をかけている。ありがとう」

「……滅相もございません。嬉しいお言葉をかけていただきありがとうございます」


 青年がおじさまのような暖かい笑みを向ける。まだ若いが……中々、調教された感じがしてあと何十年たてば……美味しい人になる気がした。


 おじさまのせいで……おじさまのような。大の大人の人しか……興味が出なくなってしまった。






「執事長!! お久し振りです」

「ここの執事長は君です。アレンさん」


 屋敷の小さな庭に咲く青い薔薇に感激していた執事長は青年の執事に向く。


「いえ、私にとっては師匠である執事長は何年経っても執事長でございます」

「そうか……ククク」


 執事長は荒い手付きで執事アレンの頭を撫でる。


「執事長!? もう私は大人です!!」

「まだ若い。何年経っても弟子は弟子です。しかし……流石にその魔法は驚きました」

「体を二つに分ける魔法ですね。便利です……いいえ……執事長のように空間移動回数があり。手が行き届きにくいために苦肉で影を実体化させての魔法です」

「………私には扱いそうもないですね」

「!?」


 青年が驚いた顔をする。


「固有魔法な匂いです。ここまで出来るとは………恐ろしい」

「褒めていただきありがとうございます」

「……ふぅ。よかったです。では……私の出る幕はないようですね」

「かしこまりました。お嬢様滞在の間はお任せください」


 執事長はそのまま銀時計をみる。執事アレンも同じように金時計を見た。


 チッチッチッチッチッチッカチッ


「そろそろ姫様が風呂から上がりますね」

「ええ、では行きましょう」


 執事長は銀時計閉じ。同じように執事アレンも時計を閉じた。


 




「お嬢様……お暇をいただいてもよろしいでしょうか?」

「ん?」


 夕食後の紅茶を飲んでいる中で執事長が私の背後に立つ。


「ここの執事長アレンに全てを任そうと思います」

「なるほど……教育か」


 私はあの青年の事を思い出す。執事長に徹底的に叩かれ鍛えられた執事だ。何処にでも居そうな平凡な彼だったが。執事長のようになりたい一心で駆け上がって今ではここの執事長を勤めているらしい。


 敵情視察兼執事長兼冒険者。非常におじさまにような万能な人材に育ち。国の宝とも言える。


「ふむ」


 おじさまと離れるのは嫌だが……ここはやはり。家主と言う立場で考えると休みは必要だ。


「何日?」

「5日ほど」

「短いね」

「それ以上は体が鈍ってしまいます」

「わかった。許可しよう。書面は休んだ後で」

「はい。ありがとうございます。お嬢様」

「いや……おじさま。ありがとうなのは私の方ですよ?」


 私は振り返り。日頃の感謝をたくさん述べてポイントを稼ぐのだった。











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