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執事の休暇6日目


 宝球から抜け出した執事長は銀ではなく純度100%の鉄時計を広げた。


チッチッチッチッカチッ


 時刻は零時前だ。倒した訳じゃないために出れなかったのを無理矢理抉じ開けたので時間がかかった。


「いきましょう」


 空間を移動し……王の寝室に転移した。もちろん物音に慌てて恰幅のいいおっさんが立ち上がり叫ぶ。


「お、おまえ!? 衛兵!! 衛兵は!!」

「死んでますよ。流石に………可哀想ですが時間がない」


 飛んですぐに衛兵の背後から剣で首を切り落とした。そして移動している。今回は音がするために能力は使ってない。ただ、目にも止まらぬ居合いで切ってるだけだった。教えていただいた剣技だ。


「ま、まて話をしよう!! バルバロス!!」

「……いいでしょう。ナイツ家の兄弟はどちらへ!!」

「し、死んだ。男は全員で。女は奴隷で売った。い、いや。一人か二人は生きて逃げ出した何処行ったかしらん!!」

「そうですか……では」


 執事長は剣を抜く。そして……構えた瞬間だった。


「待ちなさい」

「……」


 唐突に主の声が聞こえ剣を仕舞う。


「お嬢様……」

「やぁ……執事長。休暇は楽しんでいるかい?」

「はい。有意義な時間でした」

「お前は!? 誰だ!?」

「お初にお目にかかります。魔王の娘、アモン・グランウィルでございます」

「魔王の娘!? な、なら……バルバロス!?」

「はい。私の執事でございます」

「て、転覆!? 乗っ取りを!?」


 喚く王から目線を逸らし、執事長は銀時計を見る。


 チッチッチッチッ………カチッ


 時刻は零時を過ぎた。


「はぁ……お嬢様。ご命令を……休暇は終わりましたので勝手に暴れた罰をいただきましょう」

「ん? 執事長。私がダメなとことはなんだ? なんだっけ? いつも怒られてること」

「私の一度言った事をすぐに忘れています。何度言えばいいのでしょうかと口酸っぱく注意しております」

「そうか……ごめん。忘れてしまったんだが」


 お嬢様はクルクル頭を回す。


「休暇は何日予定だった?」

「6日でございます」


 スパン!!


 執事長は剣で王の首を飛ばす。そして……ゆっくりと剣の血を払い。納める。


「お見事。執事長……おーい執事アレンさん」


 お嬢様の背後に青い髪の執事が現れる。執事長の背後にいるキサラギさんが声を出す。


「あ……ヤヨイ」

「ん……キサラギさん知り合いですか?」

「……執事長……お姉さんはそこに居るのでしょうか?」

「その前に……アレンさん。旧名を」


 執事長は名を聞く。


「執事長……私の旧名はヤヨイ・ナイツでございます」

「……そうですか。これをつけてください」


 執事長は方眼鏡を渡した。そして、お嬢様の元へ行く。


「お嬢様……ありがとうございます」


 深々と頭を下げた。


「休暇が終わり次第罰は受けます」

「何で罰を? 勝手に暴れたから? 流石に休暇中は自由でしょう」

「お嬢様?」

「まぁ、気にしないでおじさま。大丈夫……お母様お父様が何とかするよ」

「はい……」


 執事長は方眼鏡をはめている執事アレンの元へ行く。何かあるだろうと。


「……アレンさん。私がバルバロスと知ってましたね」

「……はい。最初は姉や兄弟を殺した仇として探してました。師事をし……いつかはと思っていたんです。ですが……こっそり銀時計と剣の銘を聞き。姉の話を聞いたとき……こんな人が果たしてと思いました」


 アレンが頭を下げる。


「私では非力でした仇討ちありがとうございます」

「いいえ……悪いのは全て自分です。アレンさん……旧名を名乗ってください。恥ずかしい名ではないです」

「はい……世間は狭いでしょう執事長」

「全くです」


 執事長は大きく息を吸い込み。吐き出すのだった。








 早朝まで執事長は執事のヤヨイとキサラギさんの事で語り。日が高くなった時……郊外のキサラギの墓まで足を運ぶ。


 悔いはないだろう彼女は消えかかっていた。


「キサラギさん……休暇中ありがとうございます」

「いいえ……」

「この剣をお返しします……」


 執事長は剣を外そうとする。すると……その手に彼女は触れた。首を振る。


「いいえ、その剣はあなたが持っててください。あなたの想いに答えられなかった。だから……代わりにその剣を……如月を持っていって下さい」

「……わかりました」


 執事長は剣から手を離し、執事のヤヨイの頭を撫でる。


「……執事長」

「最後に何か……」

「キサラギ姉さん。今までありがとうございます。そして……これからも見守ってください」


 声は届いただろう。キサラギさんがヤヨイに抱きつく。そして……ゆっくりと光の粒子となって風に流されて消えていった。呆気ない、だが心の中に残った。


「執事長……もし。執事長が彼氏なら……」

「……どうでしょう。昔の自分はダメですから」

「……いきましょう」

「ヤヨイさん……中々強いですね。歩き出せるのは」

「執事長の弟子ですから」


 二人でお嬢様の屋敷に戻る。


 キサラギさんの墓の薔薇の花弁が空に舞い上がった。






 私は大いに悩ませた。王が死に後継者争いが始まったのだ。


 おじさまは休暇中のために話を聞こうにも何処にいるかわからない。呼ぶのもちょっと……


「……お母さん助けて~」


 故に母に頼った。母からの連絡は予想外の連絡だった。


「後継者は全員他の国の息のかかった人達。立候補しなさい」

「!?」


 そう……国を獲れと簡単に言いやがったのである。


「50人に執事長も居る。勝てる勝てる」

「………え、ええ~」


 母親は気楽に言うが流石にどうだろうと思った。


「……大丈夫よ。私の娘だし。信じてるわ。忙しいから切るね!!」


 通信を切られ頭を悩ました。


 おかしい……私……おじさまとイチャイチャするために来たのに気付いたら国取り合戦参加じゃんか!!


「………はぁ……執事長!!」


 私は休暇中の執事長を呼ぶのだった。









 









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