3話 恥ずかしい
顔を赤くして驚いた表情をしたけれど、先生はすぐに真剣な眼差しで私を見た。
いつも生徒に囲まれ笑顔で楽しそうなあの顔とは似ても似つかない真面目な瞳。
今、先生の視界には私だけ、先生は私だけを見てくれている。
ちゃんと…ちゃんと見てる。
私も先生だけを見る。
まるで2人だけの世界に迷い込んだように、周りの音は聞こえなくなり、私たちは瞳を交わした。
私の全てを先生に、先生の全てを私に。
時間が経つにつれて、意識がはっきりしてきた。
私は今、先生と二人きり、見つめ合う。
頭のどこかで客観的に想像してみると突然恥じらいがでてきた。
自分から言い出したことなのに、目を逸らしたくなる。
体が熱くなってきた。
先生も気がついたようで、顔を赤らめた。
「先生…///」
たまらず声をかけてしまった。
私は何か言わなきゃ、と思うけれど、言葉が喉に詰まって出てこない。恥ずかしくなって目を逸らす。
先生は今何を思いました?嫌じゃなかったですか?
聞きたいことはあるのに聞けない。
私はここにいるのが耐えれなくなり、席を立ち上がる。
「あっ…松本さん!」
先生が私の名前を読んだ時、タイムリミット。
かなちゃんが戻ってきた。
私はかなちゃんと入れ違いに教室を後にした。
誰もいない教室。
窓際の自分の席で顔を伏せていたけれど、いつの間にか寝てしまっていた。
気がつくと、外は暗くなっていた。
スマホ見ると18時を回っていた。
私は慌てて立ち上がると、人の気配を感じた。
私の席の隣で吉村先生が寝ている。
ビックリして、ガタガタと物音を出してしまった。
先生は音に気がつき起き上がる。
「ん?松本さん?起きた?」
「先生…起こしてしまってすみません…」
先生は目を擦りながら、目を少しづつ見開いた。
「あはっ!僕も寝ちゃった笑」
先生はテンション高めで笑った。
いつもの先生より上機嫌。
まだ寝ぼけてるようだ。
「松本さん…さっきはごめんね。」
先生はうつむき、顔が見えなくなる。
「僕が何か不快な思いをさせちゃったんだよね…」
上を向いた先生の顔はまるで子犬のように可愛く、とっさに目をそらしてしまった。
「先生は何もしてませんよ…私が勝手に…///」
私は、顔を隠すように前髪をいじる。
誰もいないのか、物凄い静けさを感じ、体が熱くなる。
「もう遅いから家まで送るよ!」
先生は小さくよいしょと言い立ち上がる。
「そんな!大丈夫ですよ!」
慌てて断ろうとしたが、先生の悲しげな笑みに心打たれて送って貰うことになった。