2話 私を見て
はぁー。
大きなため息をつき、頬に手を当て何やら悩んでるようだ。
何があったか聞くと、私のことで悩んでるという。
教室2個分の広さの美術室の後ろの端の方で、果物やパンの食品サンプルを大きな布の上に置きデッサンをしているが、部員二人しかいないので物静かだ。
「ゆき~、もっと積極的に行かなきゃダメだよ~」
ついにかなちゃんは両手を頬のつけ、目を閉じた。そしてまたため息をついた。
そんなこと言われたって、、、先生に話しかけることすらできない私だよ。
二人仲良く悩んでいるとドアが開き、噂をしていた吉村先生が入ってきた。
私たちが見たからか、少しほほを赤らめた。
本当に照れ屋さんなんだなと小さく笑った。
「あれ?2人だけ?他のみんなは?」
先生は美術室を見回してまた私たちの方を見た。
「体育祭の準備やら練習やらで遅れてくるって言ってましたよ!」
かなちゃんは伸びをしながらあくびもした。
「2人は練習ないの?」
「あったらここにいませんよ~!」
かなちゃんは当たり前のことを言った。
「うちらのクラスは団結力が足らないんですかね~。練習すぐ終わっちゃうんですよ!」
目を擦りながらまたあくびをした。
先生は椅子を持ってきて私の隣に座った。
急に左側がこそばゆくなって、体温が上がるのが分かった。
「僕も久しぶりにデッサンやろうかな。」
吉村先生は席を立ち、画用紙を取りに準備室へと入っていった。
「うちちょっとお花摘んでくるから、10分ほど!頑張るんだぞ!ゆき~!」
かなちゃんがおもむろに近づき耳元でそう言うと、席を立ち上がりスキップしながらドアの方へむかい、振り向きざまに歯を見せた笑顔でピースをして出ていった。
どうしよう。
どうしよう!
いくら教室が広いからって私にとってそんなことはどうでも良くて、二人きりというだけで…。
でも、かなちゃんが折角作ってくれたチャンスを無駄にするのはあれだし。
でもでも、先生とまともに話したことないのに。なんて話せば何を話せば…。
頭の中がパニックになっている間に気がつくと横に先生がいた。
「あれ?東雲さんは?」
「あ!えっと!おトイレに!」
焦りすぎて変なとこに「お」を付けてしまった。
先生は「ああ。」と納得して、デッサンを始めた。
吉村先生の真剣な眼差し。
横から先生を見るのは初めてだからか、思わず見とれてしまった。
私が見つめているのに気づいた先生の頬は徐々に赤らめて耳まで赤くなり、それもまた可愛くて仕方ない。
「松本さん…。そんな見ないでください…///」
先生は私の方を向いて恥ずかしそうに言ったけれど目はどこか他のところを見ていて合うことはなかった。
先生は人気者の教育実習生。普段は先生の側を歩くだけでやっとなのに今、先生が私の横にいる。嬉しいはずだけど…先生は私を見ていない。内気な私だからって言い訳にならない。先生。先生!私を…。
「…私を見て…先生」
私は寂しくなって、気がついた時には口に出していた。