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第6話:エスケープルームIII

 ――――還元かえもと いつくが探索途中、本棚を漁っていると、雪国ゆきぐに とおるがこの部屋にいた人の日記を見つける。

 雪国 透はその日記を解読し始め、還元 慈はというと、収納スペースを見つけた為、その扉を開く――――。


「何かあるかな……?」


 扉を完全に開け、床下の収納スペースを見ようとする。

 すると……、


 ――――漆黒の中に、あってはならないものがあった。

 ギロリとこちらを見つめる目玉。

 本来、それが存在するには肉体が必要なのに、純粋に目玉しかない。

 さらにその目玉はギョロリギョロリと、不可解に辺りを見渡す。

 還元 慈はそれを見つけ、明らかにこの世のものではない……ということが分かってしまった――――。


「うわぁぁあ!?」


 見た……見てしまった……明らかに、何か……やばいものを……。

 無意識に体は震え、恐怖が湧き出てくる。


「ど、どうしたの? いきなり大声を出して……」


 ビックリし過ぎて、座り込んでしまった僕に、トオルさんは心配そうにそう言ってくる。

 しっかり、深呼吸して、落ち着きを取り戻せ……よし……よし。


「い、いや……ちょっと幻覚を見ちゃって……」

「あ、そ……」


 心配して損したと言わんばかりに、トオルさんはまた、日記を読み続ける。

 僕もそれなりに落ち着いたので、立ち上がり、意を決して収納スペースを見てみる。

 ……でも、やっぱり怖いから、目を瞑ったまま……そして、目を開いた。


 ――――そこには、目玉は無かった。

 少し、ものがゴチャゴチャした収納スペースがあっただけだ。

 その中には工具やら何やらが乱雑に置かれていて、使えそうなものもありそうだ。

 還元 慈は、気のせいなのかな……と思い、ホッと息をなでおろす――――。


 よかった……何もなかった……。

 なんて安心しきって、収納スペースを漁り始める。

 そこで、なんとなく持っていたら安心できそうなものを見つけた。

 工具……バール。

 通称、バールのようなもの、だ。

 それ以外にも、工具とかスコップとかあったけれど、あえて、これだけを持ち出してみる。

 ……本当に土の壁は壊せない、傷つけられないかの実験である。


「頼むよ……!」


 トオルさんはチラっと僕の方を見たけれど、本を見続けている。

 僕は、最初に見た扉を開き、土の壁をさらけ出させる。

 そして、大きく振りかぶり……思いのたけに殴ってみた。


「……ッ!?」


 ――――バールのようなものは、勢いを殺され、土壁には何一つ傷なんかつかなかった。

 それどころか、殴った還元かえもと いつくにも、バールで殴った、なんて衝撃を微塵も感じさせなかったのである――――。


 なんだこれ……掘って脱出なんて、不可能じゃないか……!

 こんなの普通じゃない……こんなの、おかしいじゃないか!

 バールを持った手が脱力し、からん、とそれを落としてしまう。


「……今度は何? バールみたいなのなんて持って。それより、そんなものどこにあったの?」


 トオルさんの声が聞こえ、ッハと我に返る。

 急いでバールを手に持ち直し、なんでもないと首を振った。


「そ、ならちょっとこっちに来てよ。解読が終わりそうだから」

「うん……わかった」


 それにしても、僕が何をやったのか見えてなかったのかな。

 見えてたら流石に止めたりするか。

 なんて考えながら、トオルさんのところへ行った。


「まだ、最後らへんは解読できてないけど、今まで読めたのだけ、かいつまんで言うね」


 そういって彼女は、コホンと咳ばらいをして、話し始めた。


「まずはじめに、これはイタイ日記だよ。黒歴史レベルのね」

「う、うん」


 黒歴史ってよく聞くけど、今のところないからよくわからないけど、頷いておく。


「ここの家の人は、ある鍵を用いて、移動していたみたい。どこでもドアみたいにね」


 普通の人ならここで笑い飛ばしているだろう。

 でも、笑えない。

 自分で体験したことが、現実離れしているから、当たり前なんだけど。


「あとは、何かあった時の為に、タンスの奥に鍵を隠す……くらいかな。あと少し残ってるけど、重要なことはもう書いてないかもね」

「ありがとう。助かったよ」


 ……ということは、僕のやるべき事は分かった。

 タンスに近づき、バールを握り締める。


「今度は……大丈夫だよね……!」


 両手で構え、振りかぶる。

 そして、今までにないくらい、思い切りぶん回した。

 ドガッ! と乾いた音と共に、バールはタンスの扉を抉り、大穴を開けた。

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