第5話:エスケープルームII
――――還元 慈は、雪国 透を励まし、食糧も分けた。
そして、まだ脱出の糸口を見つけていないので、それを再開するのだった――――。
荷物には使えそうなものは無かった。
せめて、もう少し食糧があれば良かったんだけど……。
そう思いながら、僕は閉め切ったタンスの方へと歩き出す。
「よし、開け……」
タンスを開けようと思って、力を加える。
しかし、ガタガタと音がなり、扉が少し動くだけで、開く気配はない。
……何か引っ掛かってるのかな?
「そこは駄目だったよ。押しても引いても開かなかった」
トオルさんは、ジュースを一気に飲み干した後、息をついてそう言った。
少しだけ、元気が出たようで、声は先程よりも明るくなっている。
「うーん……そっか」
少しだけ気になるけれど、奥の手は後にしよう。
そう思って、今度は本棚の方へ向かった。
――――一見すると、普通の本棚が5年やそこいらの年月を重ねていれば、こうなるんじゃないかと言うほど棚は古びていてボロボロだった。
その他、本はというと、使い古されたとも違う、この部屋のせいなのか、年月だけでボロボロになったという感じだった。
要するに、人の手が加われてないのである――――。
「うーん……普通に見ても手掛かりになるようなものは無さそうなんだけれど……」
そう思いながらも、本を取り出して、一つ一つ調べ始める。
「……読めな!? 英語なんだろうけど、分からないから!」
致命的だ……ここにあるのが、英語ばっかなんて……。
こんな事なら英語の授業、サボるんじゃ無かった……。
「もしかして、そこにある本、全部読むつもり?」
「……なんか、目星付けばいいけれど……無理じゃないかな……」
本棚をチラッと見てみるも、やっぱりよく分からない。
タイトルとか、全部英語だし、何を見ればいいのやら……。
「……これなんかどうかな?」
いきなり、トオルさんが隣にいてビックリした。
そして、本棚にあった一冊の本を持って、こちらに渡してくる。
その本は見た限り、タイトルがない。
「……やっぱ英語じゃん」
中身は何なのだろう、とパラパラとめくってみるも、英語だと言うことしか分からない。
「ちょっと見せて」
トオルさんは、僕から本を受け取ると、うんうん……と言いながら読み始めた。
そして、こう言う。
「多分だけど……ここにいた人の日記なのかも」
「え! そうなの!?」
そうだとしたら、ここからどうやって移動して行ったか、とか分かるかもしれない!
隠し階段とか、そういったもので移動してたんだ!
「ちょっと読み込んでみるね。あと、全部は翻訳出来ないから、期待しないで」
「うん、分かった! ありがとう!」
あれが解読できれば、脱出の糸口が掴めるかもしれない!
トオルさんが、読み終わるまで、僕は他の場所を探す事にしよう。
残ったのはベッドだけなので、そのボロボロになったベッドを見てみる。
――――そこには、傷んで、支えが辛うじて無事な木製のベッド。
そしてその上にはズタズタにされた白い毛布があった――――。
「うーん……これといって何もないかな……」
でも、こういう所の下とかに大抵何かあったりするんだよね。
そう思いながら、ベッドの下を覗き込んでみる。
すると、何か違和感を感じる。
ボロボロの床板とは違う、並びの何かが床にある。
「……よし! どかしてみよう!」
僕はベッドを掴み、力を入れてそれをどかそうとする。
ズズッ……ズズッ……とゆっくりだけど、動かす事が出来た。
――――ベッドをどかし、その床にあったのは、何かを収納する扉だということがひと目でわかる――――。
「……開くかな」
僕が手をかけると、扉は容易に開く。
そして、ちょっとだけドキドキしながら、開けてみた。