表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

第1話:これが僕、これが今

 葉隠瞬はがくれしゅんは暗い室内で、爬虫類とも甲殻類ともいえない、翼と鋭いハサミを持った不気味な生物に出会った。


「まずい……まずい……隠れなきゃ!」


 そこで彼は、近くの物陰に隠れようとする。

 しかし、慌てていたのか、大きな物音を立ててしまい、隠れることが出来ない。

 そして、その巨大な生物に気づかれてしまう。


「うそ!? どうしよう!?」


 あたふたしている彼を組み付こうと、その生物はハサミを広げてきている。

 彼はすぐさま、回避に行動を移そうとするが、足がもつれてしまったのか、転んでしまった。

 そこへ、不気味で巨大な生物は彼を捕まえようと――――。


「待て待て待てー!!」


 一つの大きな声と共に、巨大な生物は、誰かの強力な蹴りによってよろけ、組付きは失敗した。



「助かったよ兄ちゃんッ!」

「へへっ……どうってことねぇよ!」

「うーん、マサルがまさか神話生物相手にドロップキックするとはね」


 僕らは今、兄ちゃんの部屋でTRPGという、アナログゲームを行っている。

 兄ちゃんの友達のシンジさんから、やってみない? と言われて、僕も参加しているのだ。

 TRPGというのは、簡単に言ってしまえば話をしながら、物語を進めていき、クリア条件を達成するというもの。

 ゲームマスター、通称GMの指示を聞きつつ(それはシンジさんが担当)、プレイヤーが(これは僕と兄ちゃんが担当)それに沿ったりして行っていくんだ。


「それにしても大丈夫かい? こうなると、神話生物との戦いになるけれど」

「問題ねぇよ。その為の俺だからな」


 ニヤリと笑いながら、兄ちゃんの作ったキャラクターは、その生物に戦いを挑んでいた。


 ……数分経って、僕と兄ちゃんのキャラは死んだ(ロストした)


「くっそー!! あそこで致命的失敗ファンブルはないだろ!」

「兄ちゃんが死んだら、僕はなんも出来ないんだよ……」

「あはは、惜しかったね」


 兄ちゃんと僕は悔しがり、シンジさんはケラケラと笑う。


いつく! キャラクターをもう一度作るぞ!!」

「わ、分かったよ。兄ちゃん」


 兄ちゃんが僕の名前を呼び、返事をしたところ、シンジさんはゴメンと言いながら、自身の荷物を持って立ち上がる。


「せっかくだけど、シナリオも用意してないし、そろそろ塾なんだ」

「っちぇ……そうなのか。次こそは、シンジにギャフンと言わせてやりたかったのにな」


 そんなゲームじゃないんだけどな……なんてシンジさんは苦笑いをしながら、部屋の扉を開けた。


「また機会があったらやろう。それまでにキャラクターを作っといてよ」

「分かったよ」


 僕と兄ちゃんがまたね、というとシンジさんは家から去っていった。


「それじゃ、一緒にキャラクター作ってみるか」

「分かったよ、兄ちゃん」


 僕は、兄ちゃんに言われるがまま、キャラクターを作っていた。

 兄ちゃんのやりやすいように、兄ちゃんの弱点を補うように、兄ちゃんの助けになるように。

 これが僕。

 兄ちゃんがいなければ何も出来ない、還元かえもと いつく……普通の中学二年生だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ