表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の雲が人類をアレに進化させる、そう遠くない未来。  作者: 城谷創懐(シロタニクラフト)
第三話 「存滅の柱」
5/23

幸せの絶頂

「もう、三年(生)の夏休みかあ。僕なんかが幻ちゃんを彼女にするなんて、無茶だったのか」

飛はリビングで自分を嘆いていた。

長くて邪魔っ気な両脚を前にのばして、木の椅子にもたれかかっていた。

今日は何もする予定はなかった。

あのときのトラウマがあり、暗室に入って本を考察する気にはなれなかった。

だから、読みかけのライトノベルをリビングに持ちこんだ。

表紙に描かれている女の子が、亜空幻に似ていたので思わず買ってしまったのだが、冒頭で魔王にその女の子がさらわれてしまい、それっきり登場しなくなってしまった。

それで一気に読む気が失せて、ペンギンのしおりをはさんで本棚に戻した。

でも、やっぱり幻ちゃんがさらわれたままなのは可哀想過ぎて、続きを読むことにした。

主人公の下級勇者がズタボロになりながらも、ようやく幻ちゃんがさらわれている魔王城にたどり着いた。

そこまで読んだとき、スマホから着信音が流れた。

飛は再びペンギンのしおりをライトノベルに挟み、スマホを点けた。

「幻ちゃんからLINEが来てる!」


今夜、ひま? ひまだったらでいいんだけど。新光樹ショッピングセンターに七時に来てくれないかな。デートしよ♡


気持ちが舞い上がり、飛はスマホを持ったままスキップをした。

しかし、部屋の中だったので壁に激しく体当たりをかまし、膝をすりむいてしまった。

痛みなど今の飛には感じない。

意中の女子高生に逆告白されたのだ。すこし違う気もするけど。

いや、きっとデート中に逆告白される。

飛はもう一度、幻ちゃんのチャットを見返した。

「デート」ってことは遠まわしの「逆告白」だよね!

幻ちゃんのこと彼女って呼んでいいのかな。

勝手に呼ぶことにしよう。「彼女」って。

飛は高揚したまま返信した。


「もちろん! 『デート』ってことは幻のこと『彼女』って呼ぶね」


多少、支離滅裂な文章になってしまった。

カアーッと身体が火照った。

のどが渇き、麦茶をコップについで、一気飲みした。

スマホの時刻を確認した。

午後三時だ。あと四時間後に幻ちゃんとデートができる。

そうだ、幻ちゃんとLINEで話そう。


「新光樹に住んでいるの?」


さっそく、返信が来た。


「じゃあ、飛君のこと『彼氏』って呼ぶね」


この返信は「一つ前のチャット」に対してだな。

お互いに「彼氏」「彼女」で呼び合うとか、おかしいな。

多分、「彼氏」として僕のことを見てくれる。という意味だよな。


「新光樹に住んでいるの?」の返信が来た。


「そうよ」


話の順番が乱れてしまうんだよな。LINEって。


「新光樹、あんな大都会に住んでいるのかー。新光樹駅は確か、カラフルな鉄球が宙に浮いているモニュメントで有名だよね」


「あれは、超電導物質を利用していて、リニアモーターカーの原理を応用しているのよ」

「飛君は家どこなの?」


「埼玉県の朝霞。都会と田舎のいいとこどりをしたような、独特のあるとこだよ。陸上自衛隊やニンジンとかが有名かな。ニンジンは名菓もあるんだよ」


「へぇー! 地元を誇りに思っているのね」


飛と幻はそれぞれに出発の準備を整えながら、LINEでやりとりをして盛り上がった。

話が佳境にさしかかる。


「飛君は、私のどういうところが好きなの?」


飛は少し戸惑ったが、想いの丈をぶつけてみようと意気込んだ。

完全に気持ちが高ぶっている。

アガっている。

それを知っていても、抑えきれなかった。


「小柄でコウテイペンギンのヒナみたいに愛くるしいし、とっても優しいところ」


もしかして「小柄」ってコンプレックス言っちゃったかな。

既読がつく。幻の返信が表示される。

スタンプだった。

キャラクター化されたコウテイペンギンのヒナが、目をハートマークにしているスタンプだ。

言葉はない。

感情をスタンプで伝えたのだろう。

幻が僕のどこに惚れたのか、気になってきた。


「逆に、幻は僕のどこに惚れたの?」


「高身長で物知りだし。私を守ってくれそうなところ」


守る? 何かに襲われているのか?

飛は深くは聞かないことにした。

もしかしたら、最初から僕に気が合ったのかもしれない。

自ら告白しないで、逆告白に持ち込む自分の情けなさを恥じた。

飛は身だしなみを整えて、待ち合わせ場所である新光樹ショッピングセンターに電車で向かった。

車内で先ほどのLINEの会話を振り返った。

幸せの絶頂だ。

飛は喜びをかみしめた。


そして、心に誓った。

『この先、どんな厳しい未来が待ち受けていても、幻を守り抜く』ことを。

人類の絶滅だって抗ってやる!

世界が滅亡しても、幻を守り抜くんだ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ