白光
夜ごはんを軽く済ませた飛は、布団に入った。
高校生として人生をスタートしたとき。
なぜか軒先に一万円札の束が大量にばらまいてあったので、お金にはそれほど困っていない。
飛の生活は恵まれていた。
それでも、倹約生活を心がけた。
この大金が、「自分の命」のような気がしたからだ。
これが尽きたら死ぬ。
そう強く思ったのである。
飛が眠りについたとき、外では異変が起きていた。
亜空幻は家族に内緒でオーロラの絶景を独り占めしていた。
マンションの屋上の公共スペースで。
まさかね、これ、飛君が予言したわけないよね?
でも「夜空に表れる幸せの感動」って、オーロラしか考えられないし。
オーロラと夜景が一度に堪能できるなんて、夢のようだわ。
冷たい夜風が幻のセミロングヘアーと純白のフリルスカートを揺らめかした。
幻はフェンスの手すりにつかまって、ロマンチックな光景にくぎ付けになっていた。
自販機で買ったジンジャーエールを公共の楕円テーブルに置いた。
いすに座って残りを鑑賞した。
背もたれが斜めになっている。
おかげで、見上げなくてもオーロラを鑑賞できた。
黒く潤んだ瞳にエメラルドのオーロラが映り込んでいた。
オーロラが見えなくなっても幻はしばらく余韻に浸っていた。
ジンジャーエールを飲み干すまで。
飛君が教えてくれなかったら、見逃していたわ。
幻は飛に心から感謝した。
「今夜は興奮して寝られないなあ」
と、幻は言ってすぐにあくびをした。
幻が立ち上がった、その時だった。
一瞬間に視界が「白」で覆われた。
何、この急展開!?
白光がひらめき、かすかにキーと高音が鳴り響いた。
白光の正体は「放射線」だった。
幻は強烈な光化学スモッグに汚染されていた。
ひどく眩暈がする。
吐き気もする。
幻は目をつむって、その場にしゃがみこんでしまった。
頭が締めつけられるように痛かった。
幻の天上、宇宙では宇宙飛行士が被曝していた。
顔や皮膚がただれていた。
ロケットの中にいるのにも関わらず。
巨大太陽フレアのしわざだった。
巨大太陽フレアとは三つの波による宇宙災害のことだ。
「第一波、電磁波」
(巨大太陽フレアが発生した約八分後にはやってきてしまう。
飛行機の無線が使用不可となるなど、高空の電気がストップする。
その結果、航空会社に多大な影響を及ぼす)
「第二波、オーロラ」
(巨大太陽フレアが発生した数時間後にどこでも観られる可能性が高い。
世界各地でオーロラが鑑賞できる。
だが、その直後やオーロラ鑑賞中には、魔の第三波がやってくる。
そのことを頭に入れておくと、役立つかもしれない)
「第三波、放射線」
(強い光化学スモッグをともなっており、眩暈や吐き気などの症状が出やすい。
しかも宇宙飛行士は被曝してしまうこともある)
しかし、巨大太陽フレアの真の恐怖は忘れたころにやってくる。
それは、巨大太陽フレアが発生した二、三日後に地球に到着する恐れのある『CME(コロナ質量放出)』である。
このCMEはプラズマの塊で、「太陽の雲」でもある。
「地球の雲」は上空を覆い、雨を降らせたり、時には雷を落としたりする。
が、「太陽の雲」は宇宙空間に放射され、真っ直ぐ突進していく。
もちろんそこには地球の軌道と重なる部分もある。
「太陽の雲」に地球が狙撃された場合。
想像を絶する「生き地獄」が襲来してしまう。
そして、人類を破滅へと追い込むのだ。




