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太陽の雲が人類をアレに進化させる、そう遠くない未来。  作者: 城谷創懐(シロタニクラフト)
第七話 「自由の楽園」
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異種族の境遇

飛のクローンは飛の首を力いっぱい絞めてきた。

意識が薄らいでいくが、死にそうになると、意識が徐々に復活してきた。

自由の楽園は「死」が存在しないからだろう。

死なないなら、クローンなんて怖くない。

「飛君をあやめようとするなんて最低ね! もう絶縁よ!!」

幻がクローンに言い放った。

クローンの腕の力が弱まっていくのを感じた。

飛は大きく息を吸いこんだ。

クローンはフラれてしまい、肩をガクリと落とした。

「逃げましょ、宇宙に」

幻がそう言って、飛の腕をつかんだ。

飛は幻に引っ張られるままに、昇降口を出た。

校庭まで来た。

自由の楽園の太陽は少し大きかった。

地面に陽光が照り返され、校舎全体が黄金色にきらめいていた。

「私、わかったの。自由の楽園は地上ではなくて、「空や宇宙」なんじゃないかって」

「空や宇宙」

飛は幻のオウム返しをした。

「超人間から人間へと「変身」したのは、人間の世界では超人間やエイリアンを「敵」と見なす習性があるからだと思うの」

「異種族の境遇ってやつ?」

「まあ、そんな感じ」

「で、どうやって宇宙に行くのさ?」

「それがね」

校庭の端まで来た。

幻が何もないところで、ボタンを押す素振りをした。

球体が出現した。

「時空機じゃん!」

飛はテンションが上がった。

自分で書いた設計図の完成予想図そっくりだった。

機体の下部にある電光掲示板には文字が表示されていた。

文字が左から右にスクロールしていた。

「時空機の開発者 創我飛様へ。完成した時空機のプレゼントです。リトルエンジニア株式会社一同より」と書いてあった。

あの時、幻が自宅に遊びにくる前に、時空機の設計図をネットに上げたからだ。

そのサイトを見て、作ってくれたんだ。

そのうえ、僕にプレゼントしてくれるなんて。

飛は胸がつまった。

「これ、飛君が開発したの?」

幻が時空機を指さして訊いてきた。

「そうだよ。2100年に時空機(UFO)を開発したんだよ。僕が。その時空機に乗って、過去にタイムスリップしたのさ」

幻は飛の背中がとても大きく感じられた。

「飛君がUFOの開発者だったなんて。すごいじゃん!」

飛はまんざらでもない顔をした。

「よし、時空機に相乗りしよう」

幻の瞳がウルウルしてきた。

乙女の顔だった。

飛はもの珍しそうに、幻の恍惚の表情を見つめた。

飛が時空機に乗った。身体が気体の煙で浮き上がっている。

幻が乗ってきた。

片足を踏み入れる。

「あれ、足つかないよ」

「大丈夫だよ。怖がらないでもう一方の足も乗せてごらん」

幻が飛の指示に従った。

バランスを崩し、転びそうになった。

飛はとっさに幻の手をつかんだ。

そして引っ張ってあげた。

「ありがとう」と幻はお礼を言った。


飛と幻の二人が時空機に乗った。

飛は開閉ボタンを押した。

透明のシェルターが下りた。

その瞬間、二人だけの密室になった。

「言い忘れたけど、この時空機は念じて操作するんだよ。上がれって念じてみて」

「上がれ、上がれ!」

幻が声を出して念じた。

機体が浮き上がった。

ゆっくりと上昇していく。

シェルターが窓の役割をして、窓から外が見えた。

学校が小さくなっていく。

学校の景色は朝霞の町の景色に変わる。

朝霞の町が陸の景色に変わる。

そして海と陸の景色に変わった。

二人は何も言葉を交わさずに、その光景を眺望していた。

大気圏に突入する。

コバルトブルーの海中のような空が窓外に広がっていた。

「上がれ」と念じ続ける。

紺碧の宇宙に出た。

自由の楽園には暗闇がないために、宇宙も黒くなく青い。

そのため碧宙へきちゅうと呼ばれていた。

水平線がセルリアンブルーに光っていた。

制服が引き裂ける音がした。

幻の姿がギッと変わった。

人間の姿から超人間の姿に変身していた。

メタルシルバーの皮膚。

ギロッとしたつぶらな一つ目。

服を着ていないけれど、臓器がないので「像」のように見ることが出来た。

顔と首は同化している。

胸には半分にした球体が二つ並んでいる。

腹には筋肉のすじがうっすら入っていた。

腹や腰から下の下半身は尻尾になっている。

太くて、キツネの尻尾のようだ。

尻尾は背中にくっついていた。

飛の身体も超人間になっていた。

幻の身体のフォルムが曲線なのに対して、飛の身体のフォルムは、直線的でがっちりとしていた。

筋肉も、日々の自転車通学や、体育の授業で必死になって鍛えてきたので、六つに割れていた。

胸筋もちゃんとついていた。

「ダビデ像のようね」

幻は僕の身体を観察するとそう言ってくれた。

「幻ちゃんはミロのヴィーナスみたいだね」

と飛が返した。

「そんなことないよ」

結果的に幻だけが否定した。

二人は操作を忘れていた。

ダビデ像とミロのヴィーナスを乗せた時空機は宇宙空間で停止していた。




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