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太陽の雲が人類をアレに進化させる、そう遠くない未来。  作者: 城谷創懐(シロタニクラフト)
第五話 「人類の変転」
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魂の争奪戦 後編

ようやく幻もエイリアンになり、飛と幻の二人はエイリアンとなった。

「幻の両親が幻の魂を喰らいにやってきた」

そう女の勘が警告してくる。

幻はトイレにカギをかけて、身を潜めていた。

飛は幻の両親を家に迎え入れ、幻ではない人の魂を確保していた。


幻の父親がふとトイレのドアノブに手をかけた。

ドアノブをひねるが、動かない。

「あれトイレ、カギかかってるぞ。誰かいるのか?」

父親の声に反応して、母親もトイレの前にやってくる。

気づかれた。

幻が呼吸を殺す。

パニックになった。

激しく心臓が暴れ、狼狽する。

喰われる、喰われる、喰われる、幻の魂、喰われて殺される。

幻の母親がトイレのドアにかじりついた!

ドアに穴が開き、暗黒の顔がのぞいた。

幻は身の危険を察知した。

死が間近に迫っている。

「私もエイリアンなの!! 喰わないで!! 内緒で彼氏をつくったのは謝るから許して!!!」

必死になって叫んだ。

「エイリアンならそこから出てきて。喰わないから」

幻の母親が言った。

「私もエイリアンの魂を喰って、化け物になりたくないの!」

母親も叫んだ。

ドアのカギを開錠する。

おそるおそる、幻がトイレから出る。

「幻、大丈夫よ。安心して。バーバは娘を喰ったりしない。バーバは幻のことが大好きなんだから」

飛。幻。幻の母親。

この三人はエイリアンであることが確証された。

三人のエイリアンの殺意の矛先は、いっせいに幻の父親に向けられた。

幻の父親は一目散に家から逃げ出した。

逃げ出した。

ということは、人間だ!

魂を喰らえば「永遠の自由」が手に入る。

飛と幻、そして母親は父親の魂を追いかけて、外に飛び出した。

武蔵野線の高架下には駐車場があった。

白い空だった。

黒いカラスがVの字に並んで飛んでいた。

白黒に塗り変わった朝霞の世界に圧倒された。

コントラストがいつになく鮮明で美しい。

色彩学者オストワルトの考案した「理想の白」と「理想の黒」が世界を彩っていた。

飛が景色から視線をそらす。

そこには人間かエイリアンか分からない、例の黒子が3人いた。

そのうち、2人はシルエットから見るに、男性だ。

もう一人は下腹部が腫れたように太っていて、女性だった。

女性は魂を二つ持っていた。

妊婦だと飛は推察した。

男性二人のどっちかが多分、幻の父親だ。

エイリアンか人間か確かめるには、近寄る必要がある。

近寄ると自分の魂を喰われやすくなるため、安易には近寄れない。

そして肉眼で見極めるのは不可能だ。

要するに動作を見て、エイリアンか人間かを判断するしかなかった。

この中にいる「人間」の魂を喰らった者は「永遠の自由」へ。

この中にいる「エイリアン」の魂を喰らった者は「化け物(UMA)」になる。


飛、幻、幻の母親は一同に集まった。

三人の黒子を見据える。

風がなずんでいた。

泥んだ風が突風に変わった瞬間。

男二人が魂を共喰いした。

二人ともエイリアンだった。

男のエイリアンのシルエットが変形していくのを、飛は見ていた。

やがて、二匹の化け物が生まれてしまった。

けもくじゃらの山男、ビッグフット。

着ぐるみのように見える、黒いゴリラのようなけだものだ。

彼が残す足跡があまりにも巨大なために「巨大な足、ビッグフット」と呼ばれている。

そして、象の巨体と並ぶ大きさの、ジャイアントペンギンが生まれた。

くちばしがペリカンのように大きいが、鋭くとがっている。

見た目はキングペンギン(オウサマペンギン)によく似ていた。

古来、生息されたとされるまぼろしのペンギンだ。

全く可愛げがない。

それどころか憎かった。

どちらも全身が黒かった。

闇から生まれた化け物だった。

飛、幻、幻の母親の三人の方へ二匹が走ってきた。

ビッグフットが一歩を踏み出すたびに、地響きがした。

ジャイアントペンギンは嘴でくうを突き刺しながら近づいてきた。

妊婦は二匹の迫力に失神寸前だった。

幻の母親を出し抜いて、飛と幻は妊婦に駆け寄った。

「二人で自由へ旅立とう」

飛は幻に走りながら言った。

二人は妊婦の二つの魂に、それぞれかぶりついた。

・・・・・・。

幻の身体が白く輝き、光で浄化され、そのまま消えた。

飛の身体は黒く染まり、闇に呑まれ、化け物になっていた・・・。

幻だけが「永遠の自由」を手に入れ、飛はスレンダーマン(UMA)になっていた。

腕と脚が異常に長く、リーチがあり、重力に逆らって跳ね歩く。

俊敏な黒い棒人間みたいなUMAだ。

高い跳躍力を持っている。

妊婦自体はエイリアンだった。

そのエイリアンの魂を飛は喰らっていた。

おなかの中にいる胎児は人間だった。

人間(胎児)の魂を幻は喰らっていた。

巨大太陽フレアにともなう「コロナ質量放出」が地球から電気を消失させ、人間を「光を見る種族」から「闇を見る種族」へと変えた。

そして急速に地球から人間が消えていった。

地球の終焉。

それは仮想現実(VR)の世界が実在するような、我々の想像をはるかに上回る事変が起きるようなものなのだろう。




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