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太陽の雲が人類をアレに進化させる、そう遠くない未来。  作者: 城谷創懐(シロタニクラフト)
第四話 「記憶の空白」
10/23

追憶の映画

飛の脳内で、復活した追憶が上映された。

追憶の映画だ。


「2100年の地球」

「地球温暖化により、南極と北極は溶けてなくなってしまった」

自転する地球の映像に、ナレーター(男性)の声が重なる。

「しかし南極大陸には、緑が広がっている場所があり、そこだけは無事に残ったのだ」

緑が繁茂した南極大陸の映像。

「海に、その森は沈み、「海中の森」が新たな観光名所となった」

海の中に木々が生えていて、その間隙を魚たちが泳ぐ映像。

そこを水着の美女が優雅にフィンスイミング。

場面が転換した。

「医療もますます発達した。ついに「死を治療」することが可能となっていたのである」

テレビで見慣れた手術している映像。

「それでも死んでしまうと、記憶が消えてしまった」

「だが、画期的な「メモリーチップ」の大発明により、記憶を保存、再生できるようになったのである」

メモリーチップの実物の映像。

平たいUSBメモリーにしか見えない。

「生き返りたくない者、通称「死願者」もいた」

「彼らは宣告すれば、死の治療をストップすることもできた」

「飛は2050年に誕生した」

ナレーターの声のテンションが上がる。

黒い背景に変わり、そこに飛の全身の映像(服は着ている)が映し出される。

「飛は生まれてすぐに、脳にメモリーチップを植えこみ、記憶を保存、再生できるようにしてもらった」

「飛は勉学に一層励んだ」

「勉強が好きだったのだ」

「メモリーチップのおかげで、一度覚えたことは保存され忘れることはなかった」

「だから、覚えるのが楽しかったのだろう」

飛の全身画像が消え、黒い背景だけが残る。

少し間があく。

「高校生のとき、飛には壮大な夢があった」

「それは『宇宙空間を自由に冒険したい』という夢だった」

「飛はUFOを目撃したことがあった」

「光の速さで飛行する乗り物が家のそばをぎったのだから、すごい迫力だった」

「そのインパクトが頭から離れなくて、あれに乗りたいといつしか思うようになった」

飛が窓ごしに通り過ぎる光る物体を見て、驚く映像。

「飛はUFOの開発に生涯をささげることにした」

ここでBGMが流れる。

ドキュメンタリー番組のようなBGMだ。

「『時空』について、『宇宙』について、『物理学』について」

「飛は次のような知識を保存していった」

「我々の知っている宇宙は、別の宇宙のブラックホールの中に存在している説」

「4次元は時空間であり、5次元は時間と空間のない世界」

「複数の銀河がクモの巣状に集まっていて、銀河同士を結び付けているのが、ダークマター」

「ダークマターとは、宇宙空間の質量の大半を占めていて、見るにたえない暗色系で正体不明の物体のこと」

「大きな地震は宇宙も揺るがしている、つまり地と空は連動している」

「宇宙は円錐のかたちをしている」

「飛は蓄えた知識を集大成させて、UFO(時空機)を開発した」

「創我飛はUFOを開発した偉人だったのだ」

円盤のない球体のUFOの映像。

「人間が乗ると重くなり、光の速さに遠く及ばない。そこで、人間がミクロ単位で宙に浮くように工夫を施した」

「さらに、思考センサーを搭載しているため、思った通りに時空機を操縦できた」

「時空機を開発した当時は、西暦2100年になっていた」

「人類は火星、月、地球の三つの星を行き来する時代になっていた」

「飛はその時、50歳を迎えた「中高年」だった」

「飛は試運転を成功させた」

「試運転では一日で地球一周と月一周、それから火星一周を果たした」

「飛の開発した時空機はみるみるうちに普及し、飛は大金持ちになった」

「飛は時渡りの術を知っていたらしい」

「それは、宇宙に突如あらわれる「時空の扉」と呼ばれるあなに飛びこむというものだった」

「宇宙を冒険したい飛は、早速、時空機に乗りその「時空の扉」に飛びこむことにした」

「私有地の広場に時空機を運んだ」

空気とほぼ変わらない質量だったのだろう。

飛が両手で時空機をかかえて運んでいる映像が映し出された。

「時空機に所持金のすべてを詰めこんだ」

「時空機の床に常時はびこる空気より重い気体が、お金と飛を浮かせた」

「飛は時空機に乗った」

「時空機の中には空気が常時充満しているので、呼吸も楽にできた」

「発進!」と飛の声。

「飛が発進してほしいと思うだけで、機体が離陸した」

「上がれ、上がれ、宇宙へ上がれ」

それまた、恥ずかしい自分の声。

「そう念じるだけで機体が急上昇したのであるから驚きだ」

ナレーターは実況を始めていた。

どんどんペースアップする激しい実況だ。

「窓外の空が紺碧に色づいていく!」

「宙に浮いているから全く揺れなかった!」

「急加速して、すぐに光の速度になった!!」

「見た目が光の球に変わった!!!」

「時空機は宇宙空間に突入していきます」

「おっと、無重力状態になり、身体が浮遊しだした!」

「太陽の近くまで進め」と唐突に自分の声。

「飛が念じると、太陽目指して突き進んだ!」

「星やスペースデブリ(宇宙ゴミ)はセンサーのおかげで、どんどん避ける、交わす!」

ここでナレーターが元の落ち着きを取り戻した。

「太陽の中からUFOが出てくるらしい」

「飛はそれを確かめたかった」

「光の速さでも宇宙空間を冒険するには時間がかかった」

「惑星間の距離は何光年もあるからだ」

「なんと、飛は宇宙空間を瞬間移動する術も知っていた」

「ブラックホールに飛びこめば、一方通行で宇宙空間を瞬間移動できるらしい」

「しかし、人間の目ではブラックホールを直視できない」

「光も吸いこんでしまうからだ」

ブラックホールの映像。

「ブラックホールの周りはゆがんでいます」と飛がドヤ顔で解説を始めた。

「そして吸いこまれた物体は赤く光って、見えなくなるのです」

「この二点をおさえていれば、ブラックホールを見つけることはできます」

「あのブラックホールへ飛び込め!」

そこで解説は終わり、ナレーターに戻る。

「飛が念じると、時空機はもの凄いスピードでブラックホールを突っ切った」

「窓外には巨大な太陽が堂々と鎮座していた」

「熱風が行く手を阻んでいるようだが、時空機の内部までその熱風が入りこむことはなかったそうだ」

「非常に強固な金属で何層にもコーティングしているかららしい」

「時空機は灼熱の熱波をものともせず、さらに太陽へ接近した」

「プロミネンスが炎の竜のように激しくうねっていた」

「白に限りなく近い朱色をしていた」

「太陽は光球こうきゅうに覆われているため輝いていた」

ナレーターが沈黙する。

映像がメインになる。

前方に正円が幾重にも現れた。

それは渦巻き模様に変わった。

そして回転した。

中心部が穿たれ、孔が開いた。

「時空の扉だ!」と飛の声。

ナレーターがしゃべり出す。

「時空機はその孔に飛びこんだ」

「異次元の宇宙が見えた」

「蒼い宇宙だった」

「次の瞬間! バリバリと轟鳴し、過激なほどに揺れた」

ナレーターが早口になる。

「原理上、揺れるはずのない機体の中の飛が激しく震動した」

「飛のメモリーチップが真っ黒に焦げてショートしてしまった」

「飛を乗せた時空機は水色の空に飛ばされた」

「地球の空だった」

「着陸」と飛の声。

ナレーターが今度はゆっくりとした口調になる。

「飛は念じたが、機体はフラフラと風にあおられながら、急降下していった」

「飛を乗せた時空機は、不時着した」

「地面に激突して機体が、気体になって散った」

「飛は顔面と全身を強打した」

「その時、時空機に衝突してしまい、ある男子高校生が即死していた」

「男子高校生の魂が飛に乗り移った」

自宅である、一軒家の軒先の映像。

「すると、大量の一万円札の束が飛にぶつかってきたのだ」

「持参した未来の通貨が一万円札の束に変わり、飛の周囲に散らばったのであった」

「飛は本能のままに、その一万円札の束を拾い集めた」

間が空く。

BGMも締めに入る。

谷下飛たにしたつばさ(本名)の第二の人生がここからスタートしたのであります」

そこで追憶の映画はピタリと終わった。

砂嵐のテレビに視界が切り替わった。







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