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オリジナルTRPG設定ショートストーリー 『パンドラの箱の中身は?』

作者: 壱りっとる

昔書いた作品を、年末大掃除でお蔵出しである

8番『力』



BC.2000


大阪 寝屋川市 AM1:15


 

「おらぁー、もう一件行くぞぉー! 何にも言わずぅ、私に着いてこーい! おりゃー! ドガスッ」


 電灯の少ない葛原公園内。プラスチック製の長椅子が、雑草茂る地面にばらまかれたのであった。


「いずみセンパイィ、もう駄目ですぅ、、、。バタッ」


 背後には、地面に崩れ落ちる我が後輩、雪ちゃんの声。


「もう、情けないわねぇ。この程度でくたばってちゃ、世界じゃあ2番目のままよ!? 良いの!? それでも!? ユサユサッ」

「じゃあ、貴方は世界で何番目なんですか?」

「んなもん世界で一番よぉ!! 決まってるじゃ無~い。 ゲホッ」


 って言うか、この公園には私達以外に居なかったはずだけど~? あぁ、脳細胞がストライキをぉ~。


「う~っ。え~っと、どなたでしょう?」


 その声は、右側を基点として背後に廻り、最後には左の耳元で聞こえて来た。

 問題点は一つ。

 酔っぱらってるせいか、声が数瞬で廻りこんで来た様な気がする事。ふぬぅ~。


「世界を改編する力を持った者がその力を行使するに際し、不当なる力を排しに来た。そう言った存在ですか。気にしないで逝って下さい」


 耳元にいる人物を薄暗い電灯の元で認識する。


 グレーのスーツを着た優男で、物腰は穏やかに見えるものの、顔つきが悪く、目つきがハッキリと悪い。他言を聞けない目、だ。

 言動からは怪しさしか感じられず、内容はヤバい。人気の無い公園であり、私達はか弱い女性である。


 つまりぃ、、、。


「アンタ誰? ・・・・・・まさかっ! 私達が、酔っぱらってるのを良い事に近寄って来た変態さんね? ふんっ!」


 この鳩尾蹴りで相手は動けなくなるはずだからぁ。え~と、起き上がるまえに踏ん縛って、察に突き出して、いや、面倒だから放置。


 と、思ったのだけど。


「って、何でアンタはすぐさま立ち上がれるぅ? 手加減はしたけれども、ちゃんと入ったのに」

「何とも、、、運命の輪を廻す者は倒せない、と言う事です。しかし、流石にお強い、8番『STRENGTH』その名の通りに」


 あぁ、このカードの関係者? ぬぬぅ、まさか本当に来ようとは。整理と分析、、、ねぇ、酔いも冷めるわ。


「ふぬぅ、、、ひとつ聞かせて。このカードは一体何なの? 貴方もこれと同じ物を持っている?」


 それにしても気障な奴。相対する位置はよし。同じカードを使っても近付けない、飛び道具の動作に注意、突然行動しそうには無いが、集中。


「力では運命に逆らい得ない。意志の完全な喪失のみが、持ち主を変える。では、行くよ?」

「ちょっと待って!」


 っと気を反らし直蹴り、足場は砂利、カードを使う。喧嘩でこちらに勝てる? 『理を成す、万物の根源、則ち』


「フッ! 足癖の悪い事ですねぇ」

「どうやって?」 


 カードを使った攻撃を避ける。

 常人では無理。私のカードを使っても、あのタイミングでは避けられない。

 電灯を背に、暗がりに飛び込む準備、横手は草むら、相手は動かず。


「貴方の力は一週間程拝見しました。3倍程度が限界の様子、私のカードはそれ以上です。運命は疾く廻り、力は追いつけない」


『生命の源、運行を司る、その法則』


 カードを使う。

 電灯の横手の草むらに跳ぶ、のと等速で……歩いて来る!?


 私のカードはエントロピー増大の法則を無視している、彼のカードは何? 

 ヒントは運命。輪。廻す。

 私の8番が『力』なら……10番『運命の…』


「カード10番『運命の輪』!!」

「良く解りますねぇ。更に時を早めます、早く終わりましょう。私の身体にも悪い。『運命の輪』よ疾く!」


 時間を操ると教えてくれて良かった。


 奴は胸元から取り出したナイフで、ほとんど反応出来ない私を横手から刺す。

 ほぼ、5倍くらいの速度で動いているのかしら? 

 早く決めるのには賛成、一度しか無理。反応速度より早く。初めながら。彼は聞き取れるかしら。


「3倍位に収めるのは力だけを増やすから、身体の負担を無視すれば多分、何処までも増大するのね」


 5倍速の彼に、骨の一本も覚悟、8倍に、発生した力のベクトル全てを制御。

 この為の格闘技。


 カウンターに右ストレート、発生したベクトルを3倍に制御、フェイント、自前の筋力での引き戻しを5倍に制御、右手が外れそうになるが根性。

 ストレートに反応して身を引く相手に、回転しながら踏み込み、左フックから後ろ回し蹴り、右裏拳まで全てのベクトルを8倍に変換。

 彼の反応速度の更に上を往き、力は3倍程になって打ち倒す、、、はず。私の目には見えないけれども。失敗したら終わり。


『世界の創造、流れを創世する、その理』


「ギャ、、、、、、!!」


 足ごたえあり。

 回転でも無いと8倍の力は身体を壊す、余ったベクトルを消し去る、カードに頼む。

 彼はぎりぎり生きてるはず、まあ意識を維持出来る状態で無いのは確か。


「ふぅ。まさか、こんな突然殺されそうになるとは思って無かったわ。不意打ちじゃ無かったら、確かに無理ねぇ」


 両手と右足のダメージが気になる。負担を与えない様、制御。公園の端、木に叩き付けられた跡。

近付いて見ると結構骨が折れてる御様子、気にしない。


 スーツを剥がすと、胸元から出て来る問題のカード。素早く手に取る、気を抜かない。すぐ離れる。


「一体これはナンなのかしら?」

『我は運命、理の一つ、運命に従うか?』


「?」


 昔も聞いた事があるこの感じ。聞き方に憶えが、、、。

  周りは薄暗い公園、人気は無し、声は音声には思えない。これは、、、そう、私のカードに聞いた声と同じ。


『運命に逆らうか?』


 どちらでも良さそうなイントネーション。

 ならば。


「運命には素直に従えないわね。自分の意志じゃ無いもの」


 どう出る? カードの意思?


『汝の選ぶは逆位置』


 カードが光って手の中に収まる。そうだ、『力』のカードを手に入れた時も!!  


「ちょっとまって、何で私がカードを持っている事を知ったの? まだ話せる?」

『汝の意志に従う、理は一つ、運命は道を示す』


「ずっと話せるの? このカードは?」


 自分のカードを指差す。一番最初以外、マトモな言葉を聞いた憶えが無い。


『運命は示し続ける、力も同様』


 ここまで聞ければ十分、人が来る前に救急に連絡。彼を任せ、自分は自宅へ。

 私も骨位はイッてるかも知れないけれど。


 ふぬ? 『運命の車輪』、時間を無視する、逆位置。


「カード10番『運命の車輪』。私の時間を戻して、10分程。理解したくは無いんだけど、出来るはずでしょう?」


 目の前で倒れるこいつも、ここまで不意を突かれなければ、それ位はしてたはず。


『逆しまに行う、運命を改編する、則ち』


 何だか変な感じ。


「待った!」 


 頭だけははずして。記憶が飛んじゃあやばい!

 ……了解は無かったけど、身体の痛みは無くなってるし服のほつれまで戻った。記憶は残ってる。うーぬ、家に帰ってから考えた方が良さそう。本当に。


「さ~て、と。」


 明日の事は明日考えれば良いし、新しいカードの確認をしなきゃいけないし、夜中にこんな公園でうら若い女性が、ぼろぼろの男の前でいつまでも居る物じゃ無いわ。


「急いで帰りますか!」


 


10分後、、、


 

寝屋川市 AM1:30


「雪ちゃん!! しっかりして、ユサユサユサ。私すっかり忘れてたわ。ほら、もう救急車も近付いて来てるんだからぁ!」


カード8番『力』、10番『運命の車輪』終

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