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ショートショート

おじいさんと河童(ショートショート49)

作者: keikato
掲載日:2016/11/16

 馬車引きのおじいさんがいた。

 仕事が終わったあと、毎日のように馬を川へつれていき、体のすみずみまで洗ってやっていた。


 ある日。

 おじいさんがいつものように馬を洗っていると、この川に住む河童があらわれた。

 この河童、たいそうないたずら者。さっそく川辺の岩の上から声をかけてきた。

「なあ、じいさん。なにをしてるんだい?」

「こうしてきれいにしてやれば、馬はこう思うんじゃよ。明日もがんばって働こうとな」

 おじいさんは手を休め教えてやった。

「ケッ! そんなこと、馬が思うもんけ」

「いや、いや。よくわかってくれておるんじゃよ、ワシの気持ちをな」

「馬のようなバカなヤツに、人間の気持ちなどわかるもんけ」

 河童がケラケラと笑う。

――河童なんぞになにがわかる。

 おじいさんはそう思った。

「なにがわかるかって? ところが、そいつがわかるのさ」

 心の中を言い当てられて、おじいさんはおもわず河童を見た。

 しかし……。

――まさかそんなこともあるまい。

 そう思い直し、ふたたび馬を洗い始めた。

「まさかじゃなくて、そんなことがあるのさ」

 河童にまた言い当てられる。

「おい、そこの河童。ワシの心の中がどうしてわかるんじゃ?」

「馬のようなバカじゃねえからさ」

 河童はケラケラと笑って、川の深みに飛びこみ消えてしまった。


 次の日。

 またもや河童があらわれた。

 そしてこの日も、おじいさんの心の中を読みとっては、からかっておもしろがった。

――捕まえて、こらしめてやれ。

 おじいさんがそう思ったとたん、河童はあっというまに川に飛びこんだ。おじいさんの心を読んで、先をこして逃げたのだ。

「ケッ! オイラを捕まえるなんて、だれにもできねえことさ」

 河童が水から顔を出し、バカにしたようにケラケラと笑う。

 それからのおじいさん。

 河童にとりあわないことにした。心をからっぽにして、もくもくと馬を洗い続けた。

 かたや河童。

 おじいさんにとりあってもらえなくなり、からかいがいがなくなってはちっともおもしろくない。

(シッポを引っぱってやれ。そうすりゃ、さすがにだまっちゃいないだろう)

 河童は馬の尻に近づき、水の中からそうっとシッポに手を伸ばした。

――けとばしてやれ!

 おじいさんはとっさに思った。

 と、同時に。

 馬がいきなりとびはねて、河童の腹をおもいきりけとばした。

 岩までふっ飛ばされた河童が、びっくりした顔であわてて逃げていく。

「やっぱりオマエは、ワシの気持ちがわかっておるんじゃなあ」

 おじいさんは何度もうなずいて、うれしそうに馬の背をなでたのだった。

 馬の尻から一匹のアブが飛び立ってゆく。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ラストのたたみかけがよいと思います。ひねりも効いていて、グーッです。あと、全体に安心感があり、落ち着いて作品を楽しめます。
2017/11/09 17:06 退会済み
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