表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/25

1 大陸間戦争

お久しぶりです。


「大陸北の港が見知らぬ戦艦、複数に攻撃されております! 大型戦艦です!」

 と、まあ、アルケニーから報告があった件について。


 「大陸北」と言えば、ガイヤベルトかと思ったんだけど、少しずれていた。

 迷宮陥没……ゲフンゲフン! 大陥没跡地、被災地域寄りの集落だった。


 敵の船は大型だ。大型と言っても所詮は帆船。産業革命前の一品。せいぜいが4・50メットルでマストが3本といっところか。

 側面にはこの大陸に無い大砲の列が顔を出している

 そんなのが12隻、港町の沖合に停泊していた。


 不安なのだろうね。大勢の村人達が遠巻きにして見ている。


 ボートを漕いで上陸してきたのは、ジオン軍みたいな制服に、モーツアルトみたいなカツラを被った軍人さん50人だ。

 50人全員が、この大陸にはない武器=銃を装備している。たぶんマスケット銃だ。マスケット銃って何なのかは知らないが!


 射撃体勢を取った中、一人、色違いの制服を着た偉いさんが進み出た。


「これよりこの地は我がオーバーブルク王国の領土となる。さしあたって奴隷を二千人差し出せ!」


 対応に出たのはオークキングである。 

「その喧嘩、買ったブヒ!」

「撃てっ!」

「ぶひーっ!」


 哀れオークキングは蜂の巣となった。


 ズドーン!


「な、なんだ?」


 全長百メットル越えの怪獣が、空から降ってきた!

 私、参上!


 破壊光線(ホーキング放射)発射!

 ドギャン!

 沖合の最新鋭戦艦が木っ端微塵に吹き飛んだ!


「ひいぃえぇえぇー!」


 ペタリと座り込むオーバーブルク占領軍の皆さん。


「先に手を出したのはその方共だからな。千豚将軍の敵討ちである」

 交渉の本命、エリザーベトが前に出てきた。


 ちなみにオークキング千豚隊長の部下は、悲しいかな、先の戦いで絶滅した。ここにオーク一族は完全絶滅となった。合唱、じゃなくて合掌。


「そして理不尽な行為に対し、我がシュタイン魔帝国はオーバーブルク帝国の宣戦布告をここに受理する!」


 オーバーブルク帝国の上陸部隊50人は、口や股間からエクトプラズムを放出していた。


 ……ミラベス達サキュバスに任せるか……。







 さて、時と場所を違えて……


 北の大陸オーバーブルク帝国にて。


 王族、貴族、並びに国民達は、奴隷制度がもたらした平和と栄華を満喫していた。


 そこに――、

 ズドーン!


 首都全域を震度5弱の揺れが襲った。


「なんだ? 何事だ?」

「あれは何だ!」


 例えるなら直立した狼。

 雲を突く巨体。

 背中から蝙蝠と鷲の翼を二対四枚。

 地のような赤い目。口から覗くのは鋭い乱食い歯。

 邪教の教典より抜け出た魔物の王。地獄の蓋を壊し這い出してきた怪獣。


「ギャァアアース!」

 それが吠えた!


 城壁が崩れ、教会の尖塔折れ、家々の屋根が飛んだ。

 犬が発狂し、気の弱い者がバタバタと死んでいく。


「駄目だ! 世界が滅びる!」

 絶望に膝を着かぬ者は居ない。

「神よ! 我等に慈悲の手を!」

 神に祈るにも気力を振り絞らねばならない。


 その甲斐あってか――


「あれは!」

「天使様!」


 怪物の周囲に舞う白い羽根。


「神様!」

「天使様!」


 人々の顔に希望が戻ってきた。

 天界よりの使者。天の使徒。天使(エンジェル)


 雲霞のごとき数のエンジェルが顕現し、怪物の動きを封じる為――

 バチュン!

 怪物の胸から発射された赤い光が天使の1人を貫いた。白い羽を撒き散らし、墜落していく。


 その姿に、人々は声を無くした。 


 怪物の腕と肩、足から無数の光が射出される。光は狙い違わず、天使達を撃ち落としていく。


 だが、天界はまだ負けない。

 怪物に匹敵する巨大な姿。聖なる方が顕現した。


「我が名はアテーナー! 愚かなり闇の怪獣よ! 神の力持ちて滅びを与えん!」


 凛とした声がオーバーブルク全土に轟いた。


「戦神アテーナー様!」


 人々の祈りが天に届いた。天も、この生物を野放しにする事を危ぶんだのであろう。


「やかましい」

 怪物が初めて声を発する。いや、この怪物、会話能力を持つのか?


 アテーナーの逡巡を突き、破壊光線が発射された。

 至近距離より発射された青白い光の束が、アテーナーの直前で遮られる。

 六角形に輝く不可視の盾がそこにあった。


 アテーナーが馬鹿にしたように唇をゆがめる。

「アイギスの盾だ」


 食い止められた破壊放線が、何倍もの太さになって跳ね返る。反射された光線の直系は、楽に怪物を飲む込む大きさだ!


「神をも恐れぬ愚か者と、恐れおののく子羊達に教えてやろう。このアイギスの盾はあらゆる力、災厄、邪悪、魔法を10倍にして跳ね返すのだ」 


 反射(カウンター)が続く。まばゆい光が市民達の目を焼く。

 正義の光は怪物を飲み込むだけに納まらず、後方の空へと抜け、入道雲を消し去った。


「強い力を持てば持つほど、攻撃は熾烈となろう。己が力で滅びるが良い! 魔界の醜き怪物め! ハハハハハ!」


 カウンター攻撃は、アテーナーが喋っている間も続いた。長時間の反射である。

 古竜ゾンマーラフ滅ぼした破壊光線(ブレス)の連続放射なのだ。その熱量たるや、想像を絶する数値であろう。


 そこで、一人の人間が、暗い思いつきに至る。

 オーバーブルク王国に征服された国で数学の教師をしていた奴隷だった。


 アイギスの盾による反射(カウンター)攻撃が今も続いている。と言うことは、怪物はあのカウンターの中、生きていて、今現在も破壊光線を発射し続けているのでは? と。


 空から硬質な音が聞こえたのはその時だ。アイギスの盾がある辺りだ。


「うん?」


 アテーナーが不審に思う。その瞬間。

 アイギスの盾を貫いて、青い光の一束がアテーナーの胸を貫いた。


「あれ?」


 人間で言う所の、食道と気管と肺と心臓の辺りに空いた穴から青空が見えている。


 アイギスの盾から何十匹もの龍の首が飛び出してきた。

 各々、個性的な軌道を描き、アテーナーの首に噛みついていく。

 その龍共は互いに絡み合い、黒い剛毛が密生した太い腕と化した。


 アイギスの盾が砕け、腕の持ち主が光を割りヌッと姿を現した。

 アテーナーを掴んだ右腕だけが、不釣り合いに太くて長い。


「我が血肉となる誉れを与えよう。名も知らぬ下位生物よ!」


 アテーナーの体が光った。いや、光になった。

 その光は、あっけなく怪物の体に吸収されこの世から消えてしまった。


 怪物は、アテーナーを取り押さえる為伸ばしていた腕を下げた。大きさは元通りになっていた。


「ふむ、さして旨くは無いな。味付けも薄いし。カンサイ風か?」


 今度こそ、オーバーブルクの全国民が、真に口を閉じ静かになった。


「さてと、自己紹介がまだだったな。私は向こうの大陸を統べるシュタイン魔帝国の皇帝である。その方らが『未開』と呼ぶ大陸の持ち主だ」


 怪物は親指で後ろの海を指ししめした。

 この戦いを目にした全員が海に目をやった。


「その方からの宣戦布告を受け、態々やってきた。この国には、なかなかに骨のある戦士が居るようだな。此度の戦争、楽しみである」


 楽しみか……全員が同じ言葉を無感動に思い浮かべていた。


「ちなみに、この大陸には居ないと聞き及んでいるが、ウチは魔族だらけだぞ。まあ、その方らより紳士的故、非戦闘民は三等市民として大切に扱ってやろう。半面、武器を手にする者には容赦ないがな!」


 絶対武器は持たねぇ!

 市民の総意であった。



「では、また会おう!」

 四枚の羽根をひと羽ばたき。長い尻尾を大蛇のように蠢かせ、軽々と巨体を宙に浮かべ……瞬間移動だろうか? あの巨体が消えた。


 その後、両大陸間に通商条約がまれに見るスムースさで結ばれたのだが、それはまた別の話。





鬱憤がたまった時の不定期掲載となります。w


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ