16.魔帝国への編入
5度目のテレポートで、シュテファン城へ帰還。
2.5メートルへ体を整える。
「フシュー!」
口からブレスの残滓だとか、アストラル系も優しくない煙だとか色んなのを出しながら、特性玉座へ優雅に腰を下ろす。
「3つの王国をシメてきた!」
ひれ伏す魔族共と、人間共。
あ、邪眼をしまい忘れていた。
「シュタイン魔帝国を脅かす外敵は敗退した。ドラフェンの内乱は消失した。まったく、手間をかけさせおって!」
まったくだ。私は不満を露わにした。
配下の者共はプルプルと震えている。
「基本方針を発表する!」
さらに居ずまいを正す配下の者共。
基本方針。それは、戦いながら考えていた各部署丸投げの手抜き政策のことである。
「ドラフェン王国は、シュタイン帝国の名の元、その存続を許す! 引き続き、現王による統治とする!」
「有り難き幸せ!」
ドラフェン王より、1階下に届きそうな土下座をもらった。
「なお、王子ヨアンはシュタイン帝国にて成人まで教育の後、強制的にドラフェン王とする!」
ヨアン君は10才。金髪でポヤポヤ系。ミラベルが好色な目でロックオンしている。
頑張れヨアン君!
君には内政の一環として、現代知識から選抜したエリート教育を施すつもりだ。内政、及び政治のテスト要員だから頑張って人の道を踏み外すな!
「国内政治様式、並びに法は、私のシュタイン帝国と同一とする!」
「税もですか?」
ドラフェン王は上目遣いに私を見る。
「死にたいか?」
「ははーっ!」
反論など許さない。機嫌の良い時にしか、聞く耳は持たない事にする。
「私の領土内で貴族制を続ける自由を認めよう。ただし、私はお前らを二等国民としか呼ばない。貴族であろうとスラムの住人であろうとな!」
人間は人間だからな。有益な個体しか、存在価値を認めん。
「以上。帝国会議の後、追加の沙汰は追って知らせる。下がってよし!」
「ははーっ!」
ドラフェンの現王が下がる。
あいつ、やっぱりバカだ。
私の命令に忠実な下僕としてこき使ってやる。
ドラフェンは属領であるから、そこに住む者は直接の領民じゃない。そこで冒険的な内政実験を行っても、文句は届かない。ドラフェン王がカットするだろう。
失敗しても心は痛まない。
なし崩しに帝国となってしまったが、それなりの利はあった。
……主に国名変更で。
どうせ帝国になったんだから、身分制を導入する!
魔族を一等帝国民と設定して、人間を二等国民として分別しよう。
ただし、努力次第で名誉一等国民になれるシステムだ。
シュタイン魔帝国は全世界を支配する権利を有する!
各王国は魔帝国に所属する。既に魔帝国に所属しているものと理解する。
我ながら、なんて挑発的な宣言だ!
諸外国から理不尽コールがかかるだろう。
理不尽ついでに、他国の国民を三等国民と設定しよう!
従属を誓うだけで二等国民に格上げだ。
……いろんな問題が起こるだろうな。……楽しくなりそうだな。
よーし、山の段々畑にトウモロコシ植えちゃうぞ!
(ドラフェン王国、国民の声)
ドラフェン王国は、シュタイン魔帝国の属領となった。
貴族にとって、屈辱の歴史が始まるのだ。
人間社会に激震が走る!
「魔王様がドラフェンを救ってくれたぞ!」
「三カ国を一発で蹴散らしたって話だぞ!」
「何て頼りになる魔王様だ!」
「それから頑張れば一等国民になれるってさ」
「貴族も貧乏人も無い平等な世界だ!」
とあるドラフェンの農業地帯。主立った者達が緊急集会に召喚された。
「シュタイン魔帝国と税が同じになったぞ!」
「7分3分から5分5分になるって事か?」
「よし、これで村民全員で冬が越せる! 食糧に余裕が生まれるぞ!」
「子供も生める。働き手が増える。シュタイン魔帝国万々歳じゃ!」
あちらこちらの酒場で、嘆きの声が聞こえてきた。
「暗愚王がお飾りになったってよ!」
「賢い事で有名なヨハン王子が、あの魔王様の元で英才教育を受けるって話だぜ!」
「先進の政治を学んでご帰還遊ばされた暁には、ドラフェン王国は栄えるぞ!」
「早く王様になってくれないかな! ドラフェン王国の未来は明るい!」
「乾杯だ!」
「ヨハン王に乾杯!」
とある高級レストランで、有名どころの商会長たちが極秘の集まりを持った。
「農民に現金が回りそうだな」
「こちらも農機具の売り上げ増が見込めます」
「鍛冶屋連中は夜なべで金槌をふるわせてますぞ!」
「いつもより多く仕入れられるから、値段も交渉しやすい!」
「むしろ品切れが心配じゃ。商会の名にかけて品切れだけは許されぬ!」
「日頃、脚を引っ張り合ってきた我らだが、今回だけは協力して儲けねばなりませぬな」
「大量発注大量購入。これより、売り先の仕分けを行いますが、異存有りませんな?」
「もちろんですとも! これからは魔帝国にも脚を伸ばせる。我々商人も忙しくなりますなぁ」
天下に金が回る。
商売をするには貨幣が必要。そしてその貨幣は絶対量が不足気味。
表面上、協力態勢にある彼らだが、水面下では貨幣の準備を抜け駆けで行っている。
これは業界的に、最も幸福感を得られる競争であった。




