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11.血税徴収

 白熱した国会闘技、もとい……討議は終了。

 ミラベルの配下が各国へ散っていった。命の危険が伴うというのに、嬉々として旅立つのは何故だろう。


 そんなこんなで、朝が来た。

 魔族共の多くは地下の迷宮で休息を取る。

 太陽が支配する世界は、なんだかんだで人間のものだ。


「魔王陛下、意見具申の許可をいただきたい」

「魔王じゃなく、王な! どうした?」

 誰かと思えばクッコロ騎士のエリザーベトではないか。


 (偽の)契約者命令でビキニアーマーへ装備を変更させたのだが、なかなかどうしてどうして、エロイ体をしている。

 本人もお気に入りのようだ。悔しがってる風だが、私は表層意識程度なら読み取れる。

 ……こいつ、嫌がってはいない。


「遠慮はいらぬ。申してみよ」

 徹夜でハイ状態の私は気分よく許可した。


「人間同士の繋がりで、……わたしの親戚の知り合いの親戚のご近所からの申し出なのですが――」

 人間の繋がりとは実に複雑で遠いものだな。


「どうした?」

「はっ! わたしを通して、御意志の確認を致したくと!」


 なんだろう? 人間から接触ししようとすればエリザーベトを通すしかないが……?

 あ、怪我の功名というか偶然というか、エリザーベトを配下にする事で、人間とのパイプを作った事になるのか!


 いや、計画通りだよ!


「話は明瞭簡潔に!」

「はっ! この者の話をお聞き下さい。我が国の重大事項と判断致します!」


 重大事項って何だろう? 

 仮にもエリザーベトは騎士だ。教養は豊富なはず。その彼女が重大事項と判断したのだ。

 なんだろう?



 禿げた親爺が平伏していた。


「お、お初にお目にかかります。魔王陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう恐悦至極に存じます。私、城下町商会組合の会長、ベルトと申します」

 私は魔王ではないのだが? 人間界では魔王になってるのか?

 

「私は魔王ではない。王だ!」

 私はこの国を乗っ取った、魔族の巣にした。

 連中の国王一家、並びに軍有力者、政治家共を殺害。さらに王妃と王女を閉じ込めた。

 あっ! だから魔王か? 嫌だなー、その呼び方。


「で、何を言いに来たのだ? おしゃべりに来ただけなら、殺すぞ」 

「ははっ! 申し訳ありませぬ、魔王様」

「魔王じゃなくて、王な!」


「もうすぐ納税の時期ですが、税金の率はいかが……あいなりましょうか? 魔王様」

「魔王じゃなくて王な。税金だと?」


 税金? そんなの求めてませんけど……。

 いや、まてまてまて!

 人間共を恐怖政治で縛るには重税もアリだ!


 どっちかと言えば人間なんてこの国から居なくなれば良い派の私としては、税を重くして、逃散していただくのがベストなスタイル!


 ベルト商工会会長を帰した後、税に関して相談すべく内務大臣のガーゴイル、アーラスを呼びつけた。


「と言うわけで、重税を課して人間共を締め上げたいのだが、税をかけた事などないのでな。まさか10割ではあからさま過ぎる。普通、人間の税はどのくらいなのだ?」


「さあ、私も税とは無関係の世界に生きておりましたでな。他の……六部衆に聞いても同じ返答が返ってくるでしょうな」

 そうか、魔族はタックスフリーだったな……良い世界だ。


「いまさら、前の税金はいくらだったっけ? とは聞けないし……仕方ない。ここは私に任せてもらおう」

「ご命令のままに」


 うーん、前の世界で税金っていくらだったっけ?


 消費税が8%から10%に上がったっけ? あれ、痛かったな。

 他にもガソリン税とか、重量税とか……、あ、思い出した!

 会社法人税とか大会社で25%とか聞いた事あるぞ!

 地方住民税とか、年金だとかいっぱい払わされてたよな?


 それらを総合的に判断するとしよう。上目設定でな。

 

 そうして、ぶっつけで税金額を発表することとなった。




 正午ちょうど。

 私は、巨大化して、城の外に立った。


 全ての地域に伝えるため、幻覚の能力を使って、首都の四方向にも幻の私を作り上げる。

 声を風に乗せる魔法を使用し、城下町の隅々に流した。

 文盲が多いので、私なりの心遣いだ。


『よく聞け、愚民共! 私がお前達の主である!』


 どうよこれ! 

 よいぞよいぞ!

 蒙昧なりし民衆共が、恐れおののいて空を見上げている。

  

『支配する者の権利にして、支配される者の義務として、ここに税率を発表する!』

 事実上の支配宣言。私の勇姿に、アーラス老は涙ぐんですらいる。


『5割を納税せよ! これを納められぬ者は、死を持って補填する事とする』


 半分だぞ。50%だぞ!

 前世でこんな税率を課したら暴動が起こる数値だぞ!


 民衆共よ! どうしたその顔は?

 絶望に打ちひしがれ、涙する者もいる。

 だが私は冷酷だ。容赦はしない。例外はない!


『ウハハハハ! 私の庇護を得たければ、従うのだな! ウハハハハ!』

 短い演説は終わった。


 幻を含め、私の姿は消えていく。

 これにより、シュタイン魔王国王都は、恐怖のズンドコに陥るのであった。





(町の人々) 


「税が5割!」

 町の人々は涙を流して震えていた。

 膝を付き、神に祈る者もいた。


「今まで7割だった重税が、たったの5割!」


「これで生きていける! 俺の家族は冬を越せる!」

「有り難うございます魔王様!」


 あちらこちらで感謝の声が上がっていた。

 前国王の悪政により、3割の元手で虫けらのような生活をしていた国民達。


 2割も増えた。

 農機具や生活用品に回せなかった余剰資金が、一気に2倍になった。


 いや、0.5割の資金で生活していた者からすれば4倍の資金増。


 これには商人も喜んだ。市場に金が回る。デフレから脱却できる。

 来年から、シュタイン王国は繁栄するぞ!



 国民は、こぞって魔王を褒め称える。

「それにあの巨大なお力」

「そうそう! ドラゴンを一発で殺したお力」

「簡単に他国が手を出せるもんじゃねぇ! 俺達の国に戦争をふっかける国は、よっぽどの馬鹿だ! この国で生きてる限り安全だ!」


「魔王様にこの国を治めていただく事により、俺達をいじめ抜いていた騎士共もいなくなったし」

「おお、あいつらは俺達に言いがかりをつけては、罪もない国民を処刑していた殺人狂のサディストだった。俺の叔父さんも殺されたんだ」


「他国との戦争に負けて、国が小さくなったのに、王の一族は贅沢三昧を捨てるどころか、より一層の贅沢をしやがって!」

「全くだぜ! 王妃のババアに至っては『食パンを食べられなければ、菓子パンを食べればよろしくてよ』とか? 頭悪いんじゃねぇ?」


「王子は体重200㎏越えだとよ。自力で歩けぬどころか、寝返りさえ打てねぇ。謁見の間にすら顔を見せられねぇクズ野郎だ!」


「王女も、歴とした妻帯者に横恋慕しやがって、みっともねぇ。国の面汚しめ!」

「相手の奥さんに、離縁を迫ったってよ!」


「こんな王家に王家に愛着を感じるやついる?」

「いねぇよ! この国の貴族より、ヤクザもんの方がなんぼかマシだぜ」



 その日の夜。

 商工ギルド(商工会)と農業ギルド(農協)の連合会議の席で、ベルト商工会会長が嬉々として話し込んでいた。


「魔王陛下により、この国の宿り木共を処分していただいたおかげで、平和を取り戻せました。町には笑顔が溢れ、子供が遊ぶ姿を見せ、商売人は明るい声を出すようになりました」


 こちらはニコニコ顔の農業組合長。

「最初こそ魔族だの魔王だのと、狼狽えたものですが、蓋を開ければ、魔族の民様は人間に対し危害を加える事無く、また財を奪う事無く、穏やかにこの町を治められております。魔族が恐ろしい生き物だと……我らの偏見でしたな」


 自警団団長も、参加している。

「バンパイアが心配でしたが、もちろん血を吸われますが、後遺症もなく、むしろちょっとした体調不良なら回復する次第でして……はすっぱな町娘などは美男子(イケメン)のバンパイア様に進んで血を提供する始末。さらに町の警備を司られるノムート様は公平なお方で、いやはや、魔族さまは貴族様ですよ!」



 笑い声と温かい光が窓から漏れる。

 ここはシュタイン魔王国。

 偉大なる魔王が永遠に支配する(ミレニアム)



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