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10.魔物が集いし会議


 会議は続く。


 先の討論により、私のシュタイン王国が、ちょっぴり外交的危機状態にある事を認識した王国閣僚共。

 案の定、ざわつきだした。


「私の国、シュタイン魔王国の建国理念をお前達は心得ておるか?」

「魔族による建国……ですか?」

 相変わらず答えるのはベレシェだ。


「間違ってはいないが、不正解だ! 正解は、私が私のために建国した。そして魔族を住まわせてやっている。である。そこを履き違えるな!」


 なんか、自分たちの国みたいに答えたので、一喝してやる。

 魔族共は首をすくめた。肝を冷やしているのだろう。


 そもそも――

 この国は、ワンワン、ギャンギャン、アンアン、ノンノン、その他、私の仲間であり家族である魔狼達の願いで建てたものだ。私に対し、「生きよ」と込められた願いを受け止めた「物」なのだ。


 私一人が居ればよい。


 よって、大きくなる必要も無いし、離れていく者を引き留める必要も無い。

 ましてや、大陸を制覇する必要も感じない。


「愚か者共め! 来る者は拒まず。例え人間だろうと古竜だろうと、すり寄って来たなら目をかけてやろう。敵意をもって来たら、死をくれてやろう。それだけだ。実に単純だろう?」


 そう。世の中単純が一番だ。

 男だったら直球勝負。能力バトルなぞ糞喰らえ! 直球勝負! 小賢しい罠など踏んで潰せ!


「それでは我が魔族は――」

「魔族は大いに数を減らした。世界征服は容易いが、全世界を魔族だけで維持するのは不可能。真っ当な世界征服は諦めろ。以上だ!」


 魔族はその数を減らした。全世界の支配者となるには、頭数が足りない。

 世界征服、そしてその維持などという面倒くさい事はしたくない。私は、内政チートという攻めのスローライフを目指したいんだっ!


 おっと、ちょっぴり興奮してしまったようだ。

 ほら、みんな顔中汗まみれになっている。


「よし、では話題を変える! 外国に動きは無いか? そろそろだろう?」

 やっと会議らしい事が出来る。


 ミラベルが立ち上がった。

「ドラフェン王国に動きあり!」

 オッパイが揺れる。

「よし! 発言を許す!」


 自分が主になって会議を進めるって、なんだか楽しい。


「先のノーマンズ大迷宮付近での小競り合いに続いて、古竜との戦い、先発隊の被害、などにより、王の権限を維持するため、軍が動きます」


 とんだバカヤロウがいた。


 しかし、まあ解らんでもない。

 ドラフェンに後がないのだろう。


 旗振り役兼、主力の古竜が殺された。

 さらに3分の1の戦力を喪失した。これは、全滅と言ってもよいだろう。経戦能力は無いに等しい。


 真相が知れ渡ると、身内の貴族が離れる。内部崩壊する。

 もはや撃って出るしか道はない。私が人間の王だったら、同じ事をしただろう。


国境を接する大国、ガイアベルトとコーブロックは、遅かれ速かれ行動に出る。

 北東部と南部を奪われたら、私のシュタイン魔王国とさほど面積が変わらぬ小国に落ちてしまう。だが、それで危機は終わらない。

 絵に描いたような内患外憂。昔の人は上手い事言った。


「いま、面白い事を考えついた!」

 使えそうな手である。


「我らが王よ、その考え……お考えとは?」

 この中で一番好戦的な目をしたヴァルディック将軍である。


「ドラフェンと戦うに当たって、ガイヤベルト、ホーエン、コーブロックの各王国に、使いを出そうと思う」


 みんな、互いの顔を見合わせている。

 うむ、理解してないな。


「ドラフェンと領土を接する北のガイアベルトには、ドラフェンの北東部を切り取っても我関せず。南部のコーブロックには、同じく南部の出っ張りを切り取っても我関せずと。但し、口頭でな!」

 こうすればドラフェンの国力が下がる。この国の事なんかかまってられなくなるだろう。


「ほほう、太っ腹ですな」

 アーラス老が顎髭をなで下ろす。


「新しい王として、ご近所づきあいは大切だ」

 HPを2,500消費してニヤリと笑う。


「ついでに、私の国は、何処とも不可侵並びに軍事同盟を結ばぬと伝えるつもりだ」

「それは、いかがなものでしょうか!」

 反対っぽい意見がベレシェから上がる。


「馬鹿! 攻めてくる者は心の狭い王だ。静観する者は侮れない王だ。それをここで仕分けする」

 まだなんか物言いたげだな。


「どうせ最後はシュタイン魔王国とぶつかるのだ。その順番を決めておく」


 各国は絶対勘違いする。

 シュタイン魔王国の戦力は、人間の騎士団でも狩り集めた農民兵でもない。

 私と魔族だ。

 全戦力は。計らずともシュタイン城とその城下町に集結している。この一地点を守れば良いし、どんな大軍が攻めてきても、私の敵ではない。


 よって、余分な領土をいくら取られても、なんら痛みを感じない。

 逆に、各大国は、大軍を動かす。


 大軍は、動かすだけで出血を伴う。この世界の事情は知らないが、少なくとも食べ物は国が出さねばならぬだろう。

 備蓄を吐き出すにしろ、商人から買い入れるにしろ、財布の中身を消費する事に変わりはない。


 しかも今は秋。間もなく収穫の時期。

 苦笑いでもって見つめなければならない事が、沢山おこりそうだ。


 その辺を説明してやると、皆喜んだ。

 こいつら、結局血が騒ぐんだ。命が関わる危険な出来事が大好きなんだ。


「くくく、私は伝言を1人で考えるなんて器量の狭い生き物ではないぞ。みんなで考えようではないか!」

 あきれた顔をする物が3名。

 無表情が2名。


 そして――

「さすがだぜ! 俺達の王……もとい、さすがですぜ、私達の王!」

「苦しゅうない、もっと褒めろ!」

 文字通り狼の目をするヴァルディックに3,000HPを消費してキツネの目で答えてやる。

 やはり狼はノリが違う。

  

「ミラベルよ! 伝えるのはそなたに任せる! 悪女共の手練手管を集大成して、各国の王を騙せ!」

「お任せを! 腕によりをかけて!」


 白熱した会議はこれからだ!  



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