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第五話「はじめての外」

 感知魔法で気絶して、両親のギシアンを間近で見てしまった翌日。


 両親は出かけていてクランボアは外で洗濯物をしているから、再びこっそり魔法を使うチャンスだ。

 昨日は感知魔法を魔力マックスで使っちゃって失敗したから、ちょっとずつ絞って試してみることにする。

 まずは昨日最初に成功した、部屋の中。うん、なにも反応がない。

 じゃあ今度は、ちょっとだけ使う魔力を上げてみて、と……。

 お、部屋から離れたところで、ちょこちょこ動いてるのが感知に引っかかった。たぶんクランボアだろう。昨日感知したからか、なんとなくわかる。なるほど昨日の両親の会話通り、やっぱり魔力には個体差があるみたいだ。


 よし、今度はさらに魔力を上げてみて、と。


 ……あれ? 全然引っかからない……?


 おかしいな、昨日はあんなにたくさん感知して、頭がパンク寸前だったってのに……。


 今日は近所の人はみんなお出かけなのか……?


 うーん……わからん。


 っていうか、これって感知できる対象は何なんだろう?


 とりあえず人とか魔族はできるんだろうけど……。


 そういえば昨日感知した時、個体によってかなり魔力の量にばらつきがあった気がする。あれって、仮に植物とか小動物にも魔力が宿っているとしたら、そういうのも一緒くたに感知しちゃってたからなんじゃないだろうか?


 それを前提に、もう一度同じ範囲で感知魔法を使ってみる。


「おぎゃあ……!?」


 一気に魔力が抜けていくのを感じると同時に、100個くらいの魔力を一気に感じてびびる。


 昨日ほどじゃないにしろ、一気にそれらの存在を感じて、肌がぞわっとして鳥肌が立つ。


 魔力量が大小様々で、動いてるのもあれば、止まっているのもある。

 

 ん……?


 止まってるのは、なんだか整列してるみたいにぴちっと並んでて、しかも群れてる……。


 あ、畑か何かに植わってる植物なのか? 確認できないけど、そんな気がする。


 あとは……なんだろう、部屋の近くにもすごいたくさんの魔力がある気がするんだけど……。

 もしかして、地下に何かあるのか? でも、植物の魔力と違って、すごく無機質というか何というか……。

 植物の魔力は、なんとなく息づいてて生暖かい感じだけど、部屋の近くのやつは、なんだか冷たくて堅い感じがする。なんだろう? なんか本とか道具とか、物かな?


 んーっと、あとは……クランボアよりも小さい魔力が、いくつか遠くのほうでちょろちょろ動いてるな。植物よりもさらに鼓動というか、生きてる感じがするから、たぶん小動物か子供だろう。


「おぎゃあ!」


 感知魔法たのしいな! いろんなもんに魔力が宿ってて、種類によって違うなんてな!

 すげえファンタジーっぽいなあ。ああ、早く自分で動けるようになって、いろいろ見て回りたい。

 こんな第二の人生を楽しんでるなんて知ったら、前世のオレの家族とか友達が怒りそうだな。ごめん。


 まあ、それはそれとして、今度は別の魔法を使ってみよう。これ以上感知をやっても範囲が広くなるだけな気がするし。……あ、でも面白いから常に使っててみようかな。魔力が効率良く減らせるし、なんか近づいてきたらわかるし、便利そうだ。うん、そうしよう。


 さて……感知以外となると、光と闇と地水火風か。

 昨日、魔力をどうやって使うかという自分の意思が大事っぽいって気づいたからな。昨日よりは何か進展がある気がする。


 じゃあまずは……光、かな?

 なんかやっぱり、光ができたら闇もできる気がするし。 


 イメージするのは、前世のLEDライトみたいな感じかな。


 魔力をちょこっと使って……とう!

「おぎゃあ!」


 おおお! できた! 指先に豆電球くらいの明るさの光が灯ったぞ!

 って、これ、指先が光ってる!?

 おかしいな、クラインはなんか球にして浮かせてたのに。


 意思の強さか魔力が足りなかったのか?


 よし、もっかい……!


「おぎゃあ!」


 おおお! できた! クラインみたいな光球が、手に乗った!

 重みを全然感じないけど、触れる! なんだこれ! おもしれえ!

 しかも、浮かべって思うと、ふわふわ浮かぶ! おおおおおおお!


 調子に乗って、5個作って、くるくる空中で回転させてみる。

 はっはっはっは! 面白いなこれ!


 って、なんか魔力が近づいてくる!?

 クランボアだ!

 もう洗濯終わったのか!

 わわわ!? 光球、消えろ消えろ!


「ふう、今日も良い天気で、お洗濯物がすぐ乾いてくれそうです」


 光球を消した瞬間、クランボアが扉を開けて入ってきた。

 ……ぎりぎりセーフ。


 クランボアは、オレの顔を見て笑顔になり、そのまま部屋の掃除を始めた。

 彼女が窓をあけると、涼しげな風が入ってくる。


 ……そうだな、次は風の魔法を使ってみよう。

 いきなり暴風とか竜巻が発生したら怖いから、そよ風をイメージしてみよう。


 そよそよ……。


 うーん、たぶん発生してるんだろうと思うけど、外から入ってくる風と混ざって、よくわからない。


 もうちょっと強くしてみるか。それに、外の風と混同しないように、ちょっとつむじ風っぽくして区別がつくようにしよう。とう……!


 ぶわぁあっ!!


 おお! やった! 成功だ!


「きゃんっ!?」


 あ……。


「も、もう! えっちな風です!」


 クランボアのメイドスカートがめくれあがって、白いパンツが……。


 …………。


 え、えーっと、あれー、さっきのがちゃんとオレの魔法なのかよくわからなかったなー。


 これはもういっかいやってみるしかないかなー。


 ……とう!


 ぶわぁああっ!!


「きゃっ!? ま、また……! もう……窓閉めよっと」


 クランボア、柄のない白いシンプルなパンツが似合ってるぜ。


 うむ、これはバッチリ成功したと見て間違いないな。快く協力してくれたクランボアに感謝だな!


「けほっ、けほっ」


 うえ……でも埃が舞ってばっちいや。


「あ、すいませんレオ様。もう、変な風が悪いんですよ」


 ごめん、それオレです。


「ちょっと外に出ましょうか」


 おお、やっと外に出してくれるのか!



 クランボアに連れられて、初めて部屋の外に出る。


「おぎゃあ」


 なるほど、全体的に木造の家なんだな。

 部屋を出ると廊下で、部屋がいくつかあって、クランボアは階段を下っていく。

 ああ、オレの部屋って二階だったんだ。


 一階には、ダイニングみたいな部屋。

 お、暖炉ある。

 ダイニングの奥には、小さいキッチンが見える。


「おぎゃあ?」


 あれ? なんか、家、小さくね?


 両親、勇者と魔王、なんだよな? もっとこう、城とまでは言わないけど、屋敷とかそういう規模じゃないんだ……。

 まあ、感知魔法でクランボアが洗濯してる位置が部屋から近いなー、とか、メイドってクランボアしか居ないの? とは思ってたけど……。

 んー……どうなってるんだろ……。


 そしてクランボアに連れられて家の外に出る。

 するとそこは……。


「おぎゃあ……」


 草原だった


 見渡す限り、青々とした、草原


 びゅうと風が吹くと、葉っぱが波のようにうねって遠くまで流れていく


「おぎゃあ……」


 すげぇ……


 言葉を失う


 なんて幻想的な風景なんだろう


 まるで映画の中


 ああ、遠くに小川が流れているのが見える


 そして地平線の近くには、野山が連なる


「お、おぎゃ……」 


 他には……うん、なんにも無い。 


 オレの家は、草原の小高い丘に立つ、小さな一軒家だった。


 景色は良い


 良いんだけど……これってつまり、めっちゃド田舎……。


 神様が、勇者と魔王のおかげで無駄な争いが起こらなかった的なこと言ってたから、なんか偉業を成して人気者な感じかと思ってたんだけどなぁ。


 これはあれか、もしかしてうちの両親……。


 駆け落ち?

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