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第十八話「妹に手とり足とり教えていく兄 中編」

 そんなわけで、オレがシオンに魔法を教えることになった。

 こと魔法において両親がオレより優れているのは、魔法の種類の知識と、その実戦経験だけだったからだ。

 初歩の段階であるシオンに実戦はまだ早いし、種類はオレがことごとく両親の使う魔法を再現していったらすぐに追いつけてしまうわけで。

 赤ん坊の頃から魔力を使いまくったおかげで魔力の扱いに関しては既に両親を超えてしまっているし。

 だったら、すでに両親を驚かせるほどの魔法を駆使しているオレが教えたほうがいいと思う、とオレから説得した。

 まだこの世界の常識が染みついていないシオンなら、たぶん両親よりもオレの科学知識を教えやすいと考えたからだ。


 両親にも教えようと思ったのだが、すでに培ったこの世界の常識が邪魔して、原子とか分子とか熱力学とかオレが考えてる魔法の原理の話についてこれそうになかったので今は諦めることにした。

 

 オレの話を理解できなかった両親は落ち込んで膝を抱えて、今は二人して家の中でクランボアに慰められていることだろう。南無。


 とりあえず当面の目標は、魔力を増やすことと、魔力そのものの操作に慣れていくことが大事だろう。これは自分が赤ん坊の頃からやっているので、教えやすい。


 可愛い妹の将来のためには妥協したくないので、バンバン教えていくことにしよう。


「じゃあシオン、まずは魔力の使い方を覚えよー」

「おー!」

「ガウガウ」

 お、シルバもやる気だ。魔法が使える狼として大成してくれることを願う。


「魔法を使うってことは、そもそも魔力を使うってことだから、これが上手くなれば色んなことができるようになるぞ」

「うん!」

 わかっているのかいないのか知らないが、返事はすごく元気なのでよしとする。まあまだ4歳だからな。


「じゃあシオン、まずはこうやって手に魔力を集めてみよう」

 オレは手の平に魔力を集めてみせる。

「んう?」

 しかしシオンはわかっていないみたいで、首をコテンと横に傾げる。なにそれ可愛い。

「えーっと、魔力って感じるよな?」

「うん!」

「それってさ、シオンの思うとおりに動かせるんだ。シオンが手とか足を動かせるみたいに」

「そうなんだぁ。じゃあ、やってみる!」

 そうしてシオンはうんうん唸るが、上手くいかない。

「おにいちゃぁん……」

 泣きそうな目でこっちを見るシオン。可愛い。


 そういえばオレが魔力を解放した時と違って、シオンが魔力を解放をした時って、かなり強引に力技でやったからな。操作するって感覚が掴めないのかもしれない。


「あ、そうだ。じゃあ、またアレやってみるか。シオン、ちょっとオレと両手繋いで目ぇ瞑ってみ?」

「うん!」

 シオンは嬉しそうにオレと両手を繋ぐ。シオンの手はすごく柔らかくて気持ち良い。

「えへへ、おにいちゃんのおてて、あっかたい」

「あったかい、な」

「んう?」

 また首をコテンと横に傾げるシオン。問答無用で可愛い。


 オレはシオンに自分の魔力を流して、シオンが魔力を解放してしまった時のようにサポートすることにした。


「んふふ、おにいちゃんがシオンのなかはいってくるみたーい」

 シオンがそう言ってくすぐったそうにきゃっきゃと笑う。


 あの時はかなりシオンの深部まで潜ったが、今はシオンの魔力とオレ自身の魔力を同調させて、こっちから扱いやすくする程度にとどめているから、正確に言えばシオンの中にオレの魔力は入っていない。

 シオンの楽しそうな顔を壊したくないので、訂正するつもりはないけども。


 だんだんと同調が上手くいって、オレとシオンの魔力が混ざり合っていく。


「んう……おにいちゃん……」


 はしゃいでいたシオンは、魔力が混ざりあっていくにつれて落ち着いて、なんだか心から安心しきっているみたいな表情になって微笑ましい。

 シオンの魔力とオレの魔力が混ざり合っているのが、まるで元からそうだったみたいでとても自然に感じて、オレもまたその感覚が心地良く、いつまでもこうしていたくなってしまう。


 って、いやいや、ちゃんとシオンに魔力操作を教えないとね。


「じゃあシオン、今からお兄ちゃんが魔力を動かしてみるから、その感覚をよく感じといてくれ」

「うん!」

 そんな元気の良い返事を聞いたオレは、シオンの魔力を操って、シオンの手のひらの上に彼女の魔力を集めていく。

「ふわぁあ〜、すごぉーい!」

 シオンはその感覚に歓声をあげた。


 そんなわけで、シオンに魔力操作をレクチャーしてあげると、シオンはあっという間に自分で操作できるようになった。


「おにいちゃん、できたーぁ!」

「ううむ……オレよりも上達が早い。我が妹ながら素晴らしい!」

 シスコン全開でシオンの頭を撫でてやると、シオンは嬉しそうにえへへと笑顔を浮かべる。


 次は魔力を魔法に変換しよう。

 まずは簡単なところで、石でも浮かせてもらおうか。


 ……と、思ったんだけど……。


「んぅ……ぜんぜんできないぃ……」


 物が浮かぶというのが上手くイメージできないのか、魔力操作が難しいのか、最初からつまづいてしまった。

 今は重力とかはどうでもいいから、浮くイメージをするようにと言ったんだけど、シオンにはできなかった。

 うーん、どうしたものか。4歳児にはちょっと難しかったのかな。


 と、思っていた時がオレにもありました。


 シオンが、もし出来たらご褒美が欲しいというので了承して、ちょこっと重力の説明してその反対の力を作ればいいんだよと教えたら……。


「できたぁ!」


 あっという間に出来てしまった。


 え、なに、もしかしてウチのシオンって天才?


 などと親馬鹿ならず兄馬鹿を発揮してしまう。


 まぁ単純に子供だからオレの言うことを受け入れやすかったんだろうけども。


「えらいぞ、シオン」


 ともかく出来たのだから褒めてやらねばね。


「それで、ご褒美は何が欲しいんだ?」


「んっとねぇ……あのねぇ……シオン、さっきのまたやってほしいの」


「は? さっきの?」


「うん! おててつないで、あっかた……あったかい!の!」


「え? それでいいの?」


「うん! それがいい!」


 よくわからないが、お気に召したらしい。


「わかった。じゃあ、ほい」


 オレはまた両手でシオンの両手を握って繋ぎ、魔力を同調させていく。


「んぅっ……おにいちゃん……」


 シオンは、なぜだかちょっぴり頬を染めて、嬉しそうに微笑む。


 それがすごく満たされたような顔で、オレまで嬉しくなる。


「おにいちゃん……きもちぃ……」


 シオンはこの魔力同調を大層気に入ったみたいだ。


 でも、なんだかいけないことを教えてるような気がするのは何故なんだぜ……。

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