第81話 最後の問題
「急ごう!あと二部屋!いける!と思ったのにな…。」
ケンちゃんはふぅーっと息を吐いた。
「簡単じゃないにしろ、これはあんまりだよね~。」
さすがにユウちゃんも苦笑いだ。
「時間はないからあたしは動く!何かわかったら呼んでくれ!」
セイちゃんは鍵を手に持てるだけ持ってドアの前に走っていく。
「セイ!足元の鍵と混ざらないように注意しろよ!混ざったら振り出しだぞ!」
コウちゃんは叫んでから足元に目をやる。コウちゃんの足元には大量の鍵が…。コウちゃんだけじゃない。部屋の足元には床を覆い隠すほどの鍵がある。南京錠の鍵や一般的な鍵、針金みたいな形の鍵まで。どうやって集めたのか知りたいほどの数の鍵があった。
「キュウ。時間がないから僕は正攻法で、足元の鍵で開くことを前提に考えるから。君はその逆で。頼んだ!」
ケンちゃんはそう言うと足元の鍵の上に自分の服を敷き、その上に近くにあった鍵をのせて種類別に分けていく。ケンちゃんらしい見事な正攻法だ。
「キュウちゃん。私にできることはない?」
メイちゃんが僕の顔をのぞきこみ、口を動かした。
「待ってね。今、考えるから。」
僕は落ち着いてそう答えてはみた。けどやっぱり焦っている。残り時間があと四分くらい。今までがうまくいきすぎたのは確か。だけどあと二部屋、どうにかクリアしたい。
「足元の鍵を使わないなら…。」
そう言いながら足元の鍵をどけてみる。床までは靴が埋まるくらいだから10センチくらい。
「あっ!そうか!」
今考えられる一番あり得る方法を思い付いた。ただ、人手がいる。
「みんな、手伝って。」
僕のその言葉にみんなが集まってきた。
「何を思い付いたんだ?何をすればいいんだ?」
セイちゃんが真剣な目で僕に聞いた。
「うん。僕の予想が正しければ、本物の鍵はたぶんこの鍵の下にあると思うんだ。」
「鍵の下~?」
「そうか!隠し部屋があるってことだな?」
コウちゃんが正解を言い当てた。
「うん。ただ全部探してたら時間切れは確実。だからみんなで手分けして鍵をどけて…。」
「キュウ!誰がどこを探すか指示を出せ!」
セイちゃんが叫ぶ。
「うん。じゃあ、セイちゃんは部屋の真ん中。コウちゃんは右奥、ユウちゃんは左奥。」
「僕は左手前、メイは右手前。みんな始めて。」
途中からケンちゃんが指示を出し、みんなが散らばった。僕は入り口のすぐ下を探す。
「キュウ。ちなみに君の予想は?」
ケンちゃんが鍵をどかしながら聞いた。
「たぶんセイちゃんのところ。」
「また僕と同じか。」
ケンちゃんと僕の意見は一致。だからこそ僕はセイちゃんにその場所を頼んだ。たぶんセイちゃんならすぐに見つけるはず。
「あ!あったぞ。」
セイちゃんが叫ぶ。みんなは部屋の真ん中に集まった。セイちゃんが床にある金具を引く。小さなスペースに箱が入っていた。
「これだな。」
セイちゃんが箱を取りだし開ける。中には金色の鍵が一つ、まるで宝物のようにしまわれていた。
「ケン!開けろ!」
「わかった!」
セイちゃんはケンちゃんに鍵を渡す。ケンちゃんは足元の鍵で転びそうになりながらもドアの前にたどり着き鍵を開けた。
「よし。開いた。セイ!鍵をその箱にしまってもとの場所に戻しておいてくれ。」
ケンちゃんはセイちゃんに鍵を投げた。
「あいよ。みんなは先に進んでくれ。あたしもしまったら行くから。」
みんなは最後の部屋に向かった。僕もメイちゃんを連れて移動する。途中でちらっとメイちゃんのノートをのぞいて見た。その恐ろしいほど正確に書かれた図面には頭が下がる。
「あー。何かの嫌がらせか?これは!」
最後の部屋からケンちゃんの叫び声が聞こえた。僕は慎重に急いで隣の部屋に入った。今までの部屋と違い、奥にドアはない。見回しても壁にも何もない。部屋の真ん中に台がありみんながそれを囲んでいた。僕も台の前に立った。
「あらら。確かに因縁だね。これは。」
台の上にはルービックキューブが20個ほど転がっている。そして真ん中にはキューブが一つ入るくぼみが見える。
「ここに『一つだけ違うキューブをくぼみにはめなさい。』って書いてあるんだけど…。わかるか!」
ケンちゃんはらしくない声で叫んだ。僕はくぼみをのぞく。くぼみには色が塗られていてたぶんその色に合わせてキューブをはめるということだろうけど…。僕は色の配置を確認する。
「あっ!違う。」
僕にはわかった。この最後の問題の解き方が。
「何が違うんだ?」
ケンちゃんがくぼみをのぞく。
「配色だよ。ケンちゃんは説明書を思い出せばわかるはず。青の反対側にくる色は?」
ケンちゃんは目をつぶって頭の中でルービックキューブを動かす。
「緑だ。そうか。このくぼみの配色は青と緑が隣り合っている。」
「うん。だからいじってみて配色があうやつを探せばいいんだよ。」
「わかった。やってみる。」
ケンちゃんはそう言って一つ手に取ると動かし始めた。
「ケンちゃん、完成させなくていいんだからね。」
「わかってるよ。一面をきっちりそろえればいいんだろ?」
ケンちゃんは手を動かしながら答えた。手の動きも頭の回転もさすがだと思う。
「メイちゃん、あと何分?」
僕がそう聞くとメイちゃんは腕時計を僕の前に出した。
「あと三分と少し。ありがとう。」
僕は手を動かすペースを上げた。隣ではケンちゃんか四個目を台に置いて五個目を手に取っていた。
「二人とも頑張れ~。」
ユウちゃんの声援を受けて僕たちは黙々とキューブを動かした。そして…。
「あっ、あった。」
僕のその言葉にみんなが集まった。僕が手に取ったキューブは一般的な配色じゃない。白と緑が入れ替わっていた。
「メイちゃん。もう一回時間を。」
メイちゃんは時計を見せる。あと二分と少し。
「ケンちゃん!お願い!」
僕はケンちゃんにキューブを差し出した。
「わかった。任せろ!」
ケンちゃんはキューブを受け取りすごい早さで動かしていく。
「頑張れ!ケン!」
「ケンちゃん!頑張って~!」
「ケン!あんたならできる!」
みんなから声援がとぶ。ケンちゃんの手は一切止まらずに次々と動く。僕はメイちゃんの時計とケンちゃんを交互に見る。
あと30秒。ケンちゃんは底と上の二面とまわりの四面の下二段を完成。
あと15秒。まわり三面の角の色が一致、一面は完成。
あと10、9、8秒。
「完成!」
ケンちゃんが叫ぶ。手には六面全部完成したキューブが握られていた。
「ケンちゃん!急いではめて!色に注意して!」
「わかってる。下が青で上が白!この向きだ!」
ケンちゃんはキューブをくぼみにはめた。
「クリアだ!」
コウちゃんが叫んで台を指差す。台のにはクリアの文字が出ている。上を見るとどうやらクリアと同時にライトがついてそのライトの文字が台に写し出される仕組みらしい。
「よかったー。間に合わないかと思った。」
ケンちゃんは力が抜けたように座り込んだ。
「お疲れさま~。ケンちゃん。」
「見事だったよ。ケン。」
「さすがはあたしが見込んだだけのことはある!」
みんながケンちゃんのまわりを囲む。ケンちゃんはほっとしたような顔で笑っていた。




