第75話 僕にやらせて。
僕とメイちゃんはパズルの部屋に入った。するとすぐにメイちゃんが僕の肩をたたいた。
「キュウちゃん、私にやらせて。」
「え?メイちゃんがやるの?」
驚いた僕を見てメイちゃんはまた口を動かす。
「私にやらせてください。お願いします。」
メイちゃんは真剣な目で僕を見ている。僕はうなずく。
「じゃあ、お願いします。」
僕のその言葉にメイちゃんは笑顔でうなずき、そして走り出した。
「メイちゃん。転ばないようにね。」
僕の心配をよそにメイちゃんは部屋の奥の像にたどり着いた。像についているスプリングからリングと鍵をひねってはずす。すぐに振り返り真ん中の箱の鍵を開け、パズルを出し並べた。
「メイちゃん、鍵を戻さないと。」
メイちゃんははっとした顔をして走って鍵を戻した。
「メイちゃん、焦らなくていいからね。」
「うん。ごめんね。」
メイちゃんは笑顔で口を動かし、パズルを並べた。
「じゃあ、いきます。」
僕と同じように口を動かすとメイちゃんはパズルを手に取った。今日ははずす作業。メイちゃんはパズルを見ながら角度を選び、スッと手を動かす。手がはなれる動きと一緒にパズルがはずれた。
すごい…。まったく無駄のない動きだ…。
メイちゃんは次のパズルを手に取り、また角度を選ぶ。そしてはずした。
「メイちゃん。すごい。すごいよ。」
メイちゃんは僕を見てニコッと笑い、最後のからくり箱を手に取った。カシャカシャとずらす音だけが部屋に響く。そして迷いのない手つきで箱を開けてしまった。
「キュウちゃん。中の金具ってどこ?」
口を動かして僕に聞く。僕はポケットからそれを取り出してメイちゃんに渡した。メイちゃんはそれを箱に入れてふたを閉めた。それをくぼみに入れると、ボタンが出現。それを押すと、入り口の上のライトがついた。
「メイちゃん!クリア!すごい!早かった!」
僕が拍手するとメイちゃんは照れながら僕のそばに来た。
「キュウちゃんの真似しただけだよ。手の角度とかを同じように動かしてみたらできただけだよ。すごいのはキュウちゃんだよ。」
「でも、真似するのだって難しいはずだよ。見たらできるのはすごいことだよ。」
メイちゃんは恥ずかしそうだ。
「じゃあ、メイちゃん。みんなのところに行こう。たぶんみんなは…。」
僕はそこまで言ってからゆっくりドアノブをつかんで勢いよく引いた。
「きゃあ。」
ユウちゃんとコウちゃんが倒れてきた。
「やっぱりね…。」
僕たちよりも早く終わっていたら階段を下りて待つはずだし、ユウちゃんがただ待ってるはずはないと思ったら…。
「私は悪くないよ~。終わったから呼びに来たんだよ~。」
「そうだね。ただ、ドアにくっつきながら中の様子を見る必要はなかったよね?」
僕はじーっとユウちゃんを見た。
「まあ、次に行こうぜ。ケンたちも待ってることだし。」
コウちゃんがドアの外を指差す。見るとケンちゃんとセイちゃんが階段に座ってこっちを見ていた。
「ケンちゃん。ムーヴはどうだった?」
ケンちゃんは笑顔でピースサイン。
「君の攻略法でクリアできたよ。」
「何がだ!うんていで落ちかけたくせに!」
「うんてい以外はできただろ!」
ケンちゃんとセイちゃんのいつもの光景が…。
「よーし。全員次に行くぞ!」
コウちゃんがそう言って笑いながら階段を上っていく。
「は~い。出発~!」
「あいよー。」
ユウちゃんとセイちゃんがすぐ後ろをついていく。
「キュウ。おいていかれるぞ。」
ケンちゃんが僕にそう言ってからみんなを追いかける。
「メイちゃん。行こうか。」
後ろのメイちゃんに言うとメイちゃんはうなずいて僕の隣に来た。二人でみんなを追って階段を上った。みんなは廊下を進んでいく。僕たちもその後ろを歩く。
「そういえば、みんなに頼みがあるんだけど。」
突然ケンちゃんがみんなに聞こえるような声で言った。
「なんだ?ケン。」
「どうしたの~?」
コウちゃんとユウちゃんが振り向いて聞いた。ケンちゃんは僕の顔を見た。
「二階のパズルを解いたら、最初の一回だけ僕にドア&キーを挑戦させてほしいんだ。」
ケンちゃんは真剣な顔をしている。僕はケンちゃんの言葉の意味がすぐにわかった。
「みんなでやればいいんじゃないか?」
コウちゃんがケンちゃんに言った。ケンちゃんは首を横に振る。
「キュウがいたら心のどこかでキュウに頼る気がするから。僕の今の実力が知りたいんだ…。」
ケンちゃんの声が途中から小さくなった。たぶん自分勝手な意見に思われそうだからだと思う。
「みんな、ケンにやらせてやってくれ!」
セイちゃんが叫んだ。みんながセイちゃんを見る。
「ケンの言いたいことはあたしにはよくわかる。たぶんケンじゃなくてもドア&キーに入って行き詰まったらキュウに聞こうとするはずだから。それに…、」
セイちゃんはそこで言葉を止め、息を吸ってから言った。
「あたしはケンのレベルアップがどれくらいなのかを知りたい。」
さすがセイちゃん。よくわかってる。
僕は心の中でそうつぶやいてから口に出そうとした。でも僕より先がいた。
「さんせ~い。私も見てみたいで~す。」
狭い廊下にユウちゃんの声が響いた。
「それにケンちゃんの意見もセイちゃんの意見ももっともだと思うし~。ね~?コウちゃ~ん?」
「そうだな。」
コウちゃんは当然のように間髪入れずに答えた。まるでユウちゃんに話を振られるのがわかっていたみたいだ。
「よし。最初はケンに任せた!」
そう言いながらコウちゃんは螺旋階段を上り始めた。
「で?ケンには誰がついていく?残りの人は何をするのがいい?」
コウちゃんが後ろに聞いた。間違いなくケンちゃんに意見を求めていた。
「私は見たいな~。」
ユウちゃんが言った。
「実は俺も見たいんだけどな。」
コウちゃんも答えた。
僕は自分が何をしているべきか考えていた。
「よし。じゃあ、ケンとコウとユウで行ってくれ!あたしはこっちの二人と何か考えるさ。」
セイちゃんが笑いながら言った。みんながセイちゃんに注目する。
「いいの~?見たいんじゃなかったの~?」
ユウちゃんから的確な質問がとんだ。
「まあ、見たい気はするけど…。でも報告を聞けばわかるし。」
セイちゃんはさらっとそう言って笑った。
「じゃあ、セイちゃんにやってほしいことがあるんだけど。」
セイちゃんが僕を見た。
「なんだ?あたしは何をすればいいんだ?」
「タイムアタック。メイズの。セイちゃんが全力で走ったらどれくらいでクリアできるのかが見たい。」
みんなが『おー』っと歓声をあげた。
「いいな!それ。あたしはやってみたい!っていうよりやる!絶対やる!」
「よし。じゃあセイたちはそれ、俺たちはケンのレベルアップを見学だ。そうと決まればさっさと二階へ行こう!」
コウちゃんが勢いよく階段をかけ上がる。みんなもつられてかけ上がる。
「コウちゃ~ん。急いでもケンちゃんとキュウちゃんがいないとダメなんだよ~?」
ユウちゃんが走りながら言った。
「わかってる。でも俺もパズルに挑戦したくなったから。俺も一つくらい解いてみたい。」
「ずる~い。私もやる~。待ってよ~。」
ユウちゃんはコウちゃんを追って階段を上っていく。ユウちゃんらしからぬ速さだ。
「キュウ、二人のためにも僕たちはゆっくり上ろう。」
ケンちゃんはそう言ってゆっくり上り始めた。
「うん。賛成。メイちゃんもあまり体力使ってほしくないし。」
僕はメイちゃんを見た。
「大丈夫だよ。このくらいなら。」
メイちゃんはそう口を動かすと、僕の横に来てゆっくり階段を上る。
「あたしは…。まあゆっくりでいいか。どうせパズルやってもわかんないから。」
セイちゃんは笑いながらケンちゃんの横に来た。四人でゆっくり二階へ向かう。階段の上が心なしか前より明るく見えた気がした。




