第74話 攻略の鍵。
「キュウ、メイ。走ってこなくてもよかったんだぞ?」
コウちゃんが僕たちを見て笑った。僕とメイちゃんは走ってきたから少し疲れている。
「そうだよ~。ラブラブでゆっくり来てよかったのに~。」
ユウちゃんはどこか残念そうな顔をしている。
「もう開く時間だから判断は間違ってないよ。それにキュウはパソコンやりたいだろ?」
ケンちゃんは僕の貸した手品の説明書のファイルを見ながら笑った。
「うん。もちろん。ケンちゃんもやりたいでしょ?あれ。」
「まあね。」
「ケンもキュウも気合い入ってるな。俺も気合い入れないと。」
「あたしもだ。気合いで負けたらおしまいだからな。」
コウちゃんとセイちゃんはそう言って体を動かしている。
「いいね~。みんな気合い入ってるね~。じゃあそろそろ行きましょ~う。」
ユウちゃんが鍵を持って入り口へ向かう。みんながついていく。みんなが曇りのない笑顔なのはたぶんここに全員が揃っているからなんだと思う。
ガチャリという音で鍵が開いた。
「よし。行くぞ!」
コウちゃんが電気をつけてから廊下を進む。いつものようにユウちゃん、ケンちゃんとセイちゃんが続く。そして一番後ろに僕とメイちゃんが歩く。
「キュウ。パソコンどうする?最初だけ僕がやるか?」
ケンちゃんが振り向いて僕に聞いた。
「うん。一問目はお手本でやって。二問目以降はやってみるから。」
「了解!」
ケンちゃんは元気よく答え、コウちゃんを追い抜いて先頭に立った。
「メイちゃん。僕もちょっと先に行くね。ケンちゃんのお手本を見たいから。」
笑顔でうなずくメイちゃんを見てから僕も走ってケンちゃんに追い付いた。二人でパソコンに向かう。ケンちゃんは慣れた手つきでキーボードをカタカタとたたいた。
「ケンちゃん。どこの部屋が開くかはどこでわかるの?」
「ああ。問題の上のこの部分だよ。これがムーヴでこっちがパズル。」
ケンちゃんが指差して説明してくれた。なるほど。言われてみて納得した。
「さて、キュウ。僕はこの問題を解いてムーヴに入るから。君に残りは任せたよ。」
「え?ケンちゃんはムーヴに行くの?」
驚いて聞くとケンちゃんは笑ってうなずく。
「君を見習ってできないことにも挑戦したいんだよ。攻略法も試したいしね。」
僕が不安そうな顔をしていたのか、ケンちゃんの後ろからセイちゃんが顔を出した。
「あたしが一緒に行くから大丈夫だ!いざとなったらこいつを担いだままクリアしてやるさ。」
「だって。体力バカが言ってるから大丈夫。」
「誰がバカだ!」
ケンちゃんとセイちゃんの漫才が復活した。この二人はこうじゃないとと思う。
「ちなみにこの問題がリバーシで開くのがテクニック、こっちとこっちはクイズの問題で開くのはパズルだから。」
ケンちゃんは指差しながらそう言った。そしてキーボードをパシッと叩く。
「お!開いたな。よし、ケン。行くぞ!」
セイちゃんが階段を下りていく。
「じゃあ、みんな行ってきます。」
ケンちゃんはセイちゃんを追いかけて階段をかけ下りた。みんなは笑顔で手を振って見送った。
「ケンちゃん、いい笑顔だったね~。吹っ切れた感じだったね~。」
「ああ。あの顔になったケンはすごい。たぶんキュウの知識をガンガン吸収してレベルアップするはずだ。」
ユウちゃんとコウちゃんは笑った。僕もキーボードを叩きながら笑う。
「さてと、リバーシやってみようかな。」
僕はケンちゃんに借りたノートを膝に置く。隣を見るとメイちゃんがノートとペンを用意してくれていた。しかもノートにはリバーシのマスがきちっと書いてあった。
「ありがとう。メイちゃんはやっぱりすごいね。」
ノートとペンを受け取りながら言うとメイちゃんは笑顔でうなずいた。
「スタート。」
僕は画面に出た数字をもとにノートのリバーシのマスを埋めていった。画面には僕の入力したマスとコンピューターが置いたマスだけが表示される。そして三分後…。
「どうだ?キュウ。
勝てそうか?」
横からコウちゃんの声が聞こえた。僕はうなずく。
「ケンちゃんの攻略法通りに進んでるから。角を二つ取ったし。」
すると反対側からユウちゃんがのぞきこんだ。
「ねえ。キュウちゃ~ん。その攻略法を簡単に説明して~。」
「ユウ。今聞かなくても。間違えたらどうすんだよ。」
コウちゃんが的確なツッコミをユウちゃんにいれた。ユウちゃんは口をあっと開けたまま固まっている。
「もう大丈夫。たぶん負けないから。説明できるよ。」
僕がそう伝えるとユウちゃんはほっとした顔で笑った。
「じゃあ、お願いしま~す。」
「うん。じゃあ説明するよ。まず、リバーシで勝つために一番気を付けることは?」
「は~い。角を取ることで~す。」
ユウちゃんがわざわざ手をあげて言った。
「うん。確かにそうだよね。じゃあ何で角を取ることが重要?」
「は~い。それはひっくり返されないからで~す。」
「うん。そのとおり。つまり勝つために重要なのは、いかにひっくり返されない場所を確保するかなんだ。」
「そうだな。ケンとやったらそうなった。」
コウちゃんが思い出して笑う。
「で~?角を取る方法は~?」
ユウちゃんが身を乗り出して聞いた。
「ケンちゃんのノートには『あまり考えない素人には勝てる方法』として『三の確保』っていうのが書いてあるんだ。」
「それはどんな方法なの~?」
「うん。つまり角を取るにはその隣を相手に取らせる。だからその隣、角から数えて三つ目のマスを取るようにする。そしてそのマスを取るためにはそのマスから数えて三つ目のマスを取るようにする。」
僕はノートのリバーシのマスを指差した。
「え~っと、つまり後攻の人が必ず置くことになるマスだよね~?最初に置いて始める真ん中の四マスの斜めの位置の四ヶ所~。それを取れると勝てるの~?」
ユウちゃんは不思議そうな顔をしている。
「絶対じゃないけど、難易度の低いコンピューターには勝てるって。実際に今も僕は勝ってるし。」
僕は自分のゲーム状況を書いた紙を指差す。今は一番上一列を全て確保して徐々に取られない『無敵のマス』を増やしている。
「へ~。こんなに勝てるんだ~。今度やってみようかな~。」
ユウちゃんが目を大きくして笑った。
「うん。それがいいよ。ただ、絶対じゃないから。ケンちゃんの言う『考えない素人』になら勝てるけど。」
「じゃあ、まずはセイとだな。」
コウちゃんがそうボソッと言った。一瞬時間が止まり、直後全員大爆笑だ。僕はキーボード操作を間違えそうになった。
「そこはわかってても言っちゃだめだよ~。」
「でも言わなくても全会一致だろ。」
「たぶんね。」
僕は相づちをうちながらキーボードを押した。画面にはクリアの文字。テクニックの部屋の電気がついた。
「お!開いたか。じゃあ、ユウ!行くぞ!」
「それは私のセリフ~。ちゃんとついてこないとおいてくからね~。」
コウちゃんとユウちゃんは笑いながら階段を下りていった。
「メイちゃん、すぐ開けるから待ってね。」
僕がそう言うとメイちゃんはうなずいてから隣に座った。僕は急いでキーボードをたたく。すると画面に問題が表示された。
「詰め将棋…かな?たぶん…。」
僕はケンちゃんのノートを開いて将棋のページを見る。将棋は特に詳しく書かれているから、おそらくこの問題もあるはず…。探す…。探す…。
「見つけた…。これかな。」
僕はそのノートに書いてあるようにパソコンに打ち込む。間違えないように…。
そして三分後。
「クリア!」
僕はそう言ってキーボードをパシッと叩いた。ケンちゃんみたいに。すると画面にはクリアの文字、パズルの部屋の電気がついた。
「メイちゃん。行こうか。」
メイちゃんは嬉しそうにうなずく。僕たちは階段を下りてパズルに向かった。
みんなが揃っている。頑張らないと。




