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アメイズ  作者: D-magician
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第72話 本当の気持ち。

 すー、すー。


 メイちゃんの寝息がときどき僕を浅い眠りに誘った。僕はウトウトしながらときどき時計を確認する。そしてまたウトウト。これを繰り返していた。


 何度目かの確認で時間が九時になろうとしていた。


 そろそろメイちゃんを起こそうかな…。


 僕はメイちゃんの頭をなでていた手をゆっくりと顔の横まで下げてほっぺたをさわってみた。


 よかった…。泣いてはいないみたい…。


「メイちゃん。そろそろ起きようか。」


 メイちゃんが顔をあげた。夢うつつ?目が半分しか開いていない。


「おはよう。九時になるよ。」


 メイちゃんは小さくうなずいて体を起こした。僕も起きて体をぐーっと伸ばす。メイちゃんを見ると眠そうな顔のまま笑って口を動かす。


「ありがとう。キュウちゃん。すごく気持ちよかった。ぐっすり寝られたよ。」


 僕はうなずく。メイちゃんは立ち上がってから毛布をたたんだ。僕は布団をたたむ。二人で階段を下りた。


「あら。メイちゃん。寝られた?」


 おばあちゃんが聞いた。メイちゃんは笑顔でうなずく。


「キュウちゃんのおかげでいい夢を見ました。」


「そう。よかったね。」


 おばあちゃんは麦茶を持ってきてコップに注いだ。僕とメイちゃんはそれをゆっくり飲んだ。


「ところで出かけなくていいの?」


「10時にセイちゃんの家だから。あとコウちゃんが迎えに来るって書いてあったから。」


「そうなの。じゃあまだ寝るの?」


 おばあちゃんが聞く。メイちゃんは悩んでいるように見える。


「メイちゃん。そこのソファーに座ってればいいんじゃない?」


 僕が見る先には三人くらい座れるソファー。僕はやることがないときによく座って寝ていた。


「じゃあそうする。キュウちゃんは?」


「ケンちゃんに借りたリバーシや将棋の攻略法ノートを見ようかなと思って。僕も隣に座るよ。」


 僕はノートを持ってソファーに座る。メイちゃんも僕の隣に座った。


「キュウちゃん、寄っ掛かっても…。」


「うん。いいよ。」


 僕の肩にメイちゃんの頭がのる。メイちゃんは目を閉じた。


「おやすみ。」


 メイちゃんは目を閉じながら笑顔でうなずく。そして二分後、眠りについたらしい。僕はケンちゃんに借りたノートを見る。


 あっ、なるほど。こうすれば…。


 ケンちゃんのノートの内容は本当にわかりやすく攻略法がどんどん頭に入っていく。僕は頭の中にリバーシや将棋をイメージしては攻略法の通りに動かしてみる。


 ドサッ。


 足に何かが…。と思ったらメイちゃんだった。バランスが崩れて僕に膝枕状態になった。でもまだ寝てるみたい…。


 メイちゃん…。今はいい夢を見てますか…?


 僕はそっとメイちゃんの頭をなでた。


 コン、コン。


 突然、窓を叩く音がした。見ると窓の外からコウちゃんとユウちゃんが手を振っていた。


「メイちゃん。迎えにきたみたいだよ。」


 肩を軽くゆすりながら声をかけるとメイちゃんが目を開けて体を起こした。僕は窓の方へ向かう。


「コウちゃん、ユウちゃん。おはよう。」


「朝からラブラブだね~。羨ましいよ~。」


 ユウちゃんは笑顔を通り越してニヤニヤしている。


「二人とも、この家にはインターホンがあるよ。鳴らしてくれればよかったのに。」


「ああ、そうだな。でも知ってる家だからさ。庭にいるかと思ったらソファーで仲良くおやすみ中とは思わなくてな。」


 ふぅーっと息を吐いて後ろを見るとメイちゃんがすぐそばにいた。二人に深々とお辞儀をして口を動かす。


「おはよう。朝から二人でデートなの?」


 メイちゃんの言葉を二人に伝えて気づいた。二人を見ると笑いながら答えた。


「セイからお前を起こすように言われたんだよ。しかも二人で手をつないで寝てるって言ってたから隙あらば覗こうかと思って。で、ユウに電話したら『私も見た~い。』ってことになったんだ。見れてよかった。」


 納得できなくはない説明だけど…。


 メイちゃんを見ると笑っていた。


「キュウちゃん。いこう。」


 僕に伝えてメイちゃんはおばあちゃんのところへ行き、お辞儀をして何かを話している。


「二人とも玄関の方へまわって。僕たちもすぐ行くから。」


 僕も出発準備をして玄関に移動する。メイちゃんは靴を履いて待っていた。


「いってきます。」


「いってらっしゃい。みんな、また遊びに来てね。」


 おばあちゃんに見送られて僕たちは自転車を走らせた。コウちゃんが先頭で進む。昨日と同じ土手の上を走るコース。今日も晴れている。風が気持ちいい。


「そういえば~、キュウちゃんどうやってケンちゃんを説得したの~?」


 ユウちゃんが僕の横から聞いた。


「誤解が解けただけだよ。ケンちゃんはすぐにわかってくれたよ。」


「そうなんだ~。確かに電話がかかってきたのが意外と早くてびっくりしたけど~。」


「そうだな。俺もさすがにこの電話は違うかなと思ったし。」


 コウちゃんも先頭を走りながら返事をする。


「ケンちゃんの頭がいいからだよ。」


 僕は笑顔で答えた。みんな笑顔だから嬉しい。僕たちは橋を渡って反対の土手を走る。そしてセイちゃんの家についた。メイちゃんは自転車を停めると急いで家に入っていった。


「おう。おはよう。ユウはやっぱりコウと一緒だったか。」


 セイちゃんが僕たちを出迎えた。


「ラブラブな二人を見て癒されてきたよ~。」


 ユウちゃんが手を振りながらセイちゃんのところへ歩いていく。


「キュウ!来たなら教えてくれ!セイの説明だとよくわからない!」


 奥の方からケンちゃんの声が聞こえた。


「あんたが悪い!あたしのせいじゃないだろ!」


 セイちゃんがケンちゃんの方に叫び、僕を見て笑った。


「キュウ。あいつは九時過ぎからやってるんだけど…。あたしの説明じゃわからないらしい。というわけで頼んだ!」


 僕はうなずいてケンちゃんのところへ走った。


「ケンちゃん、無理はよくないよ。」


「セイの説明が微妙なんだよ。やっぱり君の説明じゃないとね。」


 笑顔のケンちゃんに僕も笑顔でうなずく。そして説明をする。ケンちゃんはうなずいてボールを持ち投げる。距離と真っ直ぐ投げる方法を考えながら次々に投げる。


「キュウ。わかった。大丈夫だ。的を全部はめてくれ。」


「うん。わかった。」


 僕は的を全部はめた。


「いくぞー!」


 ケンちゃんはボールを投げる。次のボールを拾ってまた投げる。それを繰り返した。


「ふぅ。最初はこれでいいだろ?」


 ケンちゃんは11球で全部の的に当てた。


「十分すぎだよ。あとは慣れるだけだよ。」


 僕は笑って的をはめてボールを拾った。ケンちゃんのそばに並べる。すると家からメイちゃんが出てきた。怒られたのか下を向いている。僕はメイちゃんに駆け寄った。


「メイちゃん、大丈夫?」


 僕を見て笑顔でうなずく。


「明日からはちゃんと家に帰るようにって。キュウちゃん、迷惑かけてごめんね。」


 メイちゃんは深々と頭を下げた。僕は何を言おうか迷って言葉が出なかった。


「キュウちゃん。ちょっとこっち来て~。」


 家の中から声がした。セイちゃんのお母さんだ。僕は家に入る。


「キュウちゃん、メイちゃんが迷惑かけてごめんなさいね~。」


「え、メイちゃんは何も悪くないです。昨日寝られなかったから寝ちゃったって言ってました。今度からは僕がメイちゃんをちゃんと…。」


 そこまで言ったときセイちゃんのお母さんは首を振った。


「キュウちゃん、メイちゃんは今までも寝られなかったみたいなの。怖かったみたい。キュウちゃんと一緒だから寝られたって私に言ったの。泣きながら。」


「メイちゃん…、泣いてたんですか?」


 セイちゃんのお母さんはうなずいた。


「私が『次にこんなことがあったら朝出掛けるのは禁止』って言ったから…。」


 僕は言葉が出ない。


「キュウちゃん。ありがとう。」


 突然のありがとうにびっくりして僕はセイちゃんのお母さんを見た。


「キュウちゃんのおかげでやっとメイちゃんが本当の気持ちを話してくれたの。涙も流して大きく口を動かして『もうしません。だからキュウちゃんの家に行かせて。』って。半年以上たってやっと…。」


 僕の目から涙が溢れた。拭っても止まらない。


 メイちゃん…。ずっと気持ちを言えなかったんだ…。


 僕の顔にハンカチが当たる。メイちゃんが横にいて涙を拭いてくれた。


「メイちゃん。ありがとう。」


 メイちゃんは首を横に振る。


「私、これからはキュウちゃんみたいな素直な人になるよ。」


 メイちゃんはにこっと笑った。するとセイちゃんのお母さんが僕たちのそばに近づき僕とメイちゃんの頭をなでた。


「キュウちゃん、これからもメイちゃんをよろしくね。メイちゃん、これからはどんどん本当の気持ちをぶつけてね。良いことはちゃんと誉めるし悪いことはちゃんと叱るから。あなたのお母さんみたいに。」


 メイちゃんはセイちゃんのお母さんを見上げて大きくうなずいた。僕は二人を笑顔で見ていた。


 メイちゃんのお母さん…。どんな人なんだろう…。どうしてここにいないんだろう…。


 会ってみたいな…。

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