第55話 数式の答え。
「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
みんなで声をそろえて言った。そして食べた食器を片付けて庭に出た。
「さて、アメイズまでどうするか?」
コウちゃんがみんなに聞いた。
「そういえば~、一階のゲームの数式の解き方聞いてなかった~。あの三桁の引き算みたいなやつ~。」
ユウちゃんが思い出したように言った。
「何だ?数式って。もしかしてあのパソコンもキュウが解いたのか?」
セイちゃんが驚いて僕に聞いた。そういえば、セイちゃんはあのときいなかったんだ。
「リバーシとかのゲームは無理だけど、数式がたまたま手品と同じ数式だったから解けたんだ。」
「そうなのか…。そのときケンは?」
セイちゃんの顔がなぜか真剣だ。僕は落ち着いて答えた。
「僕の横にいて驚いてたよ。」
「そうか…。だから、あいつは…。」
セイちゃんはそう呟いて下を向いた。何か考えているように見える。
「セイちゃん、どうしたの?」
僕にそう言われてセイちゃんは慌てて顔をあげた。そして笑顔で、正確には笑顔を作って僕を見た。
「あ、いや。なんでもない。それより数式だ。数式。」
「うん。わかった。メイちゃん、あのときの数式メモしてある?」
メイちゃんはうなずいてノートを開いた。
○△7-7○△=□△○→□+△+○=□△
→□+△=○
「なんだ?こんなの解いたのか?」
セイちゃんが驚いている。
「ああ。しかもかなりの早さで。何か法則とかがあるんだろ?」
コウちゃんが僕を見た。僕はうなずく。
「まず、一番上の式を見れば○に当てはまる数字は限られるよね?」
「ああ。789のどれか。そうじゃないとマイナスになるからな。」
コウちゃんがそう答えた。
「そう。だから最後の答えも789のどれか。僕の知っている手品の中に相手に簡単な計算をさせて答えを必ず『9』にするという方法があるんだ。」
「え~?必ず『9』になるの~?」
「そんなのあるのか?」
僕は驚いているユウちゃんとセイちゃんにある問題を出した。
「頭の中に10から19までの数字を思い浮かべてみて。」
「え?ああ。考えた。」
「思い浮かべた数字を二つに分けて足して。」
「『19』だと~、『1』+『9』だから~、『10』だよ~。」
「最初の数から今計算して出た答えを引くと?」
「あ!確かに『9』になった。しかもどんな数字でもなるな。」
みんなが驚いて、そして納得した。
「これと同じ方法で、9の倍数は数字を分けてそれぞれを足すと必ず『9』または『9の倍数』になるよ。」
「本当か?待て、やってみる。81は8+1で9だな。54なら…。確かに9だな。」
「9999でも36だから確かに9の倍数だ。」
「すご~い。おもしろ~い。」
みんなが楽しそうだ。
「コウちゃん。3桁の数。同じ数字は2つまで。何か言ってみて。」
「じゃあ、372。」
「その数字の順番を入れ換えて。」
「じゃあ、273だ。」
「大きい方から小さい方を引いて。」
「待て。書くから。暗算だとみんながわからないし。」
コウちゃんはメイちゃんのノートのはしに数字を書いた。
「372-273だから、『99』だ。」
「『99』なら9の倍数だよね?だから数字を分けて足したら?」
「あー!確かにこれは最後は『9』になる。」
コウちゃんが叫んだ。
「え!つまり何でもこうなるのか?」
コウちゃんが僕を見る。僕はうなずく。
「3桁でも5桁でも。思い浮かべた数字から入れ換えた数字を引くと、それが0にならなければ9の倍数になるんだ。だから…。」
「どんな数字でも答えはそのうち必ず『9』になる!」
「すご~い!」
「マジか?ちょっと他のもやってくれ!5559は?9555から引くと?」
「答えは3996だ。9の倍数だ。」
「1001は~?11で引いたらどうなる~?」
「990。9の倍数だ。」
「じゃあ、じゃあ…、」
みんなが次から次へと数字を当てはめている。横を見るとメイちゃんが驚いた顔で僕を見ていた。
「おもしろいね。すごいね。」
「でしょ?だから例えば相手の誕生日とかでやれば驚いてもらえるみたい。」
メイちゃんは笑顔で僕の説明にうなずいている。
「ところで何であたしたちこの数式解いてたんだっけ?」
セイちゃんがいきなりそう言った。みんなが一瞬静まり返り、そして大爆笑。
「本末転倒っていうの~?これ~。おかし~。」
「さすがに今さらだろ。ここまできたら解れよ。」
コウちゃんはそう言って笑いながらメイちゃんのノートのゲームの数式を指差した。
「ほら。キュウの説明とこの問題が全く同じだろ?だからキュウは答えの方から逆算できたんだよ。だろ?」
僕はうなずく。
「○の答えが『9』ならその前の□△は『18』か『27』。問題の流れから『27』はありえないから答えは『18』。だから□は『1』、△は『8』。あとはそうなるか前の数式に入れてみたらあってたってわけ。」
「なるほど~。お見事~。」
ユウちゃんは拍手してくれた。
「僕が読んでる本を読めばみんなわかったはずだよ。」
「じゃあ、もしケンがもしその本を読んだら?」
セイちゃんが僕の肩をつかんで聞いた。僕は少し怖がりながら答えた。
「ケンちゃんが僕の持っている本を読んだらこの数式も僕より早く解いたはずだよ。ケンちゃんの理解力はすごいから。」
「そうなのか?ケンはあんたよりすごいのか?」
セイちゃんは真剣だ。
「それはそうでしょ。ケンちゃんの頭の良さは僕とはレベルが違うよ。」
「そうなのか~。」
セイちゃんはなぜかホッとした顔をしている。
「セイ。ケンと何かあったのか?」
「セイちゃ~ん?何か怪しいよ~?」
「悪い。何でもないんだ。何でも…。」
セイちゃんはそう言って口を閉ざした。空気が重く感じる。太陽が雲に隠れたからかもしれないけど。
「まあ、とりあえずそのことはおいといてだ。今からどうする?」
コウちゃんが話と空気を変えた。
「とりあえず、『ミラー』と『ドア&キー』の作戦を立てましょ~う。」
ユウちゃんの声が明るい雰囲気を持ってきた。
「よし。じゃあ作戦会議だな。」
そう言いながらセイちゃんが顔をあげた。みんながメイちゃんのノートを見ながら意見を出していく。僕も考えられる意見を出していく。
「よし。そろそろ行くか。」
コウちゃんが時間を見てそう言った。2時45分。余裕がある。みんなは片付けと準備をしている。
「キュウちゃん。どうかしたの?」
肩をトントンとたたいたメイちゃんが僕に聞いた。
「セイちゃんたち何があったのかな?って考えてたんだ。メイちゃん何か聞いてる?」
メイちゃんは首を横に振った。僕たちは準備をしながらセイちゃんを見ていた。なぜか辛そうな、なぜか悲しそうなセイちゃんを。




