第54話 昼食タイム。
「おい。もう昼だぞ。」
セイちゃんが時計を見てみんなに告げた。
「あら~。私が頑張りすぎたばっかりに~。ごめんね~。」
「いや、俺がみんなでやろうってけしかけたからだ。悪いな、みんな。」
ユウちゃんとコウちゃんが自分のせいだと謝った。確かに誰のせいかを考えればこの二人のせいだと思うけど。
「みんなで勝負しようぜ。これ。」
これがお茶を飲んでいた僕とメイちゃんをストラックアウトのそばに呼んだ理由だったみたいだ。僕は正直勝負事は好きじゃない。特に罰ゲームがあるものは余計に。勝っても人の困ってる姿を見るのは好きじゃないし負けたら最悪だし。
「罰ゲームなしならやってもいいけど。」
「ああ。むしろなしでいいのか。どう考えてもお前たちが有利だけど。」
確かに考案者の僕と正確な距離感を持つメイちゃんが有利。
「メイちゃん。なしでいいでしょ?」
メイちゃんは僕を見てうなずく。
「よし。じゃあやろう。1人9球で何個当てられるかだ。」
「は~い。負けないよ~。」
「おう。あたしも負ける気はない。」
みんながすごくやる気だ…。僕はそこまでやる気はないけど。
「じゃあ僕からやるね。」
一番にやれば負ける可能性が下がると思った。僕はボールを持って定位置に立った。そして投げる。当たり前だけど考案者だしこの中で一番投げた回数が多いから自信はあった。結果は1球ミスで8球。
「さすがだな。キュウ。」
「お見事~。」
「まあキュウなら当然か。」
みんなが誉めてくれた。素直にうれしかった。
「次は誰がやる?」
「は~い。じゃあ私で~。頑張るよ~。」
ユウちゃんがボールを持って的に投げた。結果は7球。
「次はあたしな。」
セイちゃんはボールを持って的から離れた。
「スゲーな。セイ。そんなとからなのか?」
「おう。あたしはここが定位置だ。」
セイちゃんはそう言ってボールを投げた。結果は8球。僕と同点だった。
「くそ。ミスった。パーフェクト狙ったのに。」
「じゃあ次は俺だ。」
コウちゃんはセイちゃんの隣に立った。
「あんたもここからか。コウ。」
「まあ、この辺だったよ。いくぞ!」
コウちゃんが投げる。すごい勢いでボールが飛んでいき的に当たる。でも結果は7球。
「場所、少し前だったかな?」
コウちゃんは首をかしげている。そして最後はメイちゃん。投げる場所は僕と同じ。ボールを持ってどんどん投げる。結果はパーフェクト。
「スゲーな。メイは。」
「才能なの~?これは~。」
驚く二人にセイちゃんは笑った。
「才能半分努力半分だよ。あたしとメイは昨日のうちにかなり投げてたから。『キュウちゃんが考えた方法は全部できるようになりたい。』って無心で投げ続けてたんだよ。こいつ。」
メイちゃんの頭をポンッとたたいたセイちゃん。それに対してメイちゃんは思いっきり背中をバシン!てたたいた。
「なにすんだよ!」
メイちゃんはノートを手にとった。
「そこまで言わなくていいでしょ。」
そう書いてセイちゃんに見せた。顔が赤くなったように見える。メイちゃんは僕の後ろに来て背中に頭をコツンて当てた。
「う~ん。メイちゃんは恥ずかしがるところが違う気がするな~。」
「ああ。そっちの方が恥ずかしいだろ。」
ユウちゃんとコウちゃんがツッコミをいれた。メイちゃんは動かない。
「メイちゃん。頑張ってくれてありがとう。うれしいよ。」
僕がボソッとメイちゃんにしか聞こえない声で言った。メイちゃんは顔をあげて笑顔を見せた。
「は~い。負けっぱなしは嫌だからもう一回お願いしま~す。」
「あ、俺もそう言おうと思ってた。やるぞ。もう一回。」
こうして昼までずっともう一回が繰り返された。負ける人が変わるたびにもう一回になった。ちなみに僕とメイちゃんは負けることはなかった。
「お昼どうする?」
僕が聞いた。
「は~い。準備できたよ~。」
家の窓が開いてセイちゃんのお母さんが顔を出した。テーブルには僕たちの分も用意されている。
「みんな、昼飯にしようぜ。」
セイちゃんがみんなを呼んだ。
「なんかすいません。」
「すいませ~ん。」
コウちゃんとユウちゃんがセイちゃんのお母さんに頭をさげた。僕もつられて頭をさげる。
「いいのよ~。コウちゃんとユウちゃんにはセイがお世話になってるし、キュウちゃんにはメイちゃんが昨日のお昼をご馳走になったし~。」
セイちゃんのお母さんはユウちゃんと同じようなテンションと明るい声で言った。
「え~?ご馳走になったの~?」
ユウちゃんの声が響く。
「ユウ。それはメイが昨日自己申告しただろ。驚く内容じゃないぞ。」
「あれ~?そうだっけ~。」
コウちゃんの冷静な発言にユウちゃんはとぼけた感じで答えた。たぶん確信犯だと思う。
「とりあえず、あがってくれ。ここにいても昼飯が食べれないだろ。」
セイちゃんはみんなを引き連れて家に入っていく。僕もメイちゃんと一緒についていく。
「おじゃましまーす。」
みんなが順番に靴を脱いで手を洗ってイスに座って…。
「すいません。電話貸してください。家に連絡するので。」
僕はそう言って電話をかけようとした。するとセイちゃんのお母さんが台所から出てきた。
「あら、キュウちゃん。必要ないよ~。もうおばあさんにはお昼はここで食べるって連絡しておいたから~。」
「え?そうなんですか?どうして?」
驚いて聞くとセイちゃんのお母さんは笑って答えた。
「みんながここに来た時間、ちょうどキュウちゃんのところに電話してたのよ~。朝に二人がお世話になった上にお野菜まで頂いたお礼の。それでその電話でお昼はこっちで出しますって言っておいたから~。」
「え~?メイちゃんは今朝も行ったの~?何時に~?何しに~?」
「さすがに俺も知らなかったな。俺が迎えに行ったのが九時だったからな。朝って一体何時だったんだ?」
ユウちゃんとコウちゃんが盛り上がっている。セイちゃんのお母さんの笑顔を見ると、どうやら確信犯はここにもいたらしい。
「わかりました。わざわざ電話してもらってすいません。」
僕は開いてる席についた。隣はメイちゃんとユウちゃんだった。
「で?で?で~?二人は朝から何をしてたの~?説明して~。」
ユウちゃんのテンションは最高潮、目がランランとしている。
「そもそも二人じゃないよ。セイちゃんもいたんだから。野菜の収穫を手伝ってもらっただけだよ。」
「ほ~。じゃあメイちゃんが今朝行くことを昨日は全く話してくれなかったのはなぜ~?」
「それは実際問題僕も知らなかったから。メイちゃんとおばあちゃんで話がまとまってたみたいで。」
「ほ~。じゃあメイちゃんとの仲はおばあちゃん公認なんだ~。いいな~。うらやましいな~。」
ユウちゃんは完全にストッパーを失い暴走気味だ。
「ユウ。それくらいにして飯食べようぜ。あたしは空腹なんだ。」
セイちゃんが絶妙なタイミングで話に割って入った。
「じゃ~あ~、続きはまたあとでにしま~す。」
「よし。じゃあ、いただきまーす。」
みんなで食べる昼ごはん。楽しい。美味しい。でも足りない物が気になる。
ケンちゃん。何かあったのだろうか?




