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アメイズ  作者: D-magician
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第4話 パズル

 部屋に入った僕は辺りを見回した。


 僕たちが入った部屋は、思ったよりも薄暗く、思ったよりも狭かった。外から見たときは明るいと思ったけど、実は狭い部屋に大きな蛍光灯があるために明るく見えただけだった。


 部屋の形は奥行きのある長方形。部屋のほぼ中央に大きな蛍光灯。そのちょうど真下に大理石でできたような円柱の形の台。高さは1mくらいで直径も1mくらいに見える。その上にはガラスでできたケースがあり、中に何かが入っている。

 左右の壁にはフックのようなものがたくさんあり、20cmくらいの金属のリングが全部のフックに掛けられている。そしてリングには大小様々な鍵が繋がりぶら下がっている。

 奥の壁は中世の鎧姿の像が飾ってあり、両手で何かを持っているように見える。またこの壁の左右の上には換気口のようなものも見える。


「時間がないから簡単に説明する。まず部屋の奥に行くぞ。」


 コウちゃんがそう言って早足で部屋の奥に向かう。僕とメイちゃんもついていく。


「よくわからないこの像を見てくれ。なんかスプリングみたいなのを持ってるだろ?それに鍵がくっついてるんだ。」


 近くで見ると、確かにこの像は直径15cmくらいで長さは1mくらいのスプリングのような物を持っている。スプリング自体は固い金属でできていて曲がったりはしなさそうだ。その真ん中あたりに直径20cmくらいの金属のリングがぶら下がっている。リングには南京錠がついていて、さらにそこには鍵がついている。リングはスプリングの金属に通っているため上下に動かしても取れない。さらにスプリングの螺旋の先はしっかりと溶接されているので、螺旋にそってにリングをずらしていっても外れないようになっているみたいだ。


 あれ?よく見るとこの像の左手はスプリングを持ってない。手からスプリングが浮いている状態になってる。何で…?


 僕が考えている間もコウちゃんは話している。


「おい、聞いてるか?南京錠を外して、その鍵で真ん中にある台の上のガラスケースを開けなきゃいけない。だからまずは部屋中の鍵を持ってきて南京錠を…。」


「コレクションNo.10、リング&スプリングと同じ。だとしたら…。」


 僕の頭の中で何かが閃く。僕が集めてきたパズルや手品のコレクションの中に同じような仕掛けがあった。頭の中でもう一人の僕が記憶の引き出しを開けて解き方を探す。そして、見つけた!


 気づくと僕は目の前の像の持つスプリングについたリングを手に掴んでいた。そしてリングをねじるように力を入れる。


「おい、何を。」


 コウちゃんが何か言いかけたそのとき、パチンという金属音とともに僕の持っているリングが向きを変えた。僕はリングを持ち上げる。するとリングは螺旋から外れ、スプリングにリングを通したような状態になった。そしてリングをスプリングから引き抜くと…、リングに南京錠と鍵がついた状態で取れた。


「な、なにした?何をどうしたらそうなった?」


 コウちゃんがすごく驚いている。まるで目の前で白い紙が一瞬で一万円札になるマジックを見たような反応だ。


「すごーーーーい」


 メイちゃんも驚いている。その驚きをノートに表現しようとしたから、あんなに伸ばし棒が長いんだと思う。


「この鍵でどうするんだっけ?」

「あ、そうだ。時間ないんだった。真ん中のガラスケースを開けてくれ。」


 コウちゃんに言われた通り、鍵を真ん中の台の上にあるガラスケースの鍵穴に差し込む。そして回す。すると、ガチャッという音とともにケースの扉が開いた。

 中にはパズルが二個とからくり箱みたいなものが入っていた。


「これを解けばいいんだよね?」

「あ、ああ。それを解いて…、あっ!その前に鍵をこっちにくれ。」

「えっ?うん。はい。」


 よくわからないけど、コウちゃんに鍵を渡す。コウちゃんは像のそばに走って行った。

 よく見ると像のある奥の壁にある換気口みたいなところから水がチョロチョロと流れている。その水のせいで像のある辺りは水溜まりができていた。コウちゃんがスプリングに鍵のついたリングをかけた。すると出ていた水が止まった。


「危なかった~。あれがスイッチか何かになってて鍵を戻さないと部屋が水浸しになるんだよ。」


 コウちゃんが話ながら戻ってきた。


「ごめん。知らなかったから。」

「謝る必要ないだろ?それより続き続き。あと3分くらいだし。急ごう。」

「うん。わかった。」


 再び三人で台の上のパズルに向き合う。


「解けそうか?」

「うーん。大丈夫そうなものと、よくわからないものと…。」


 一つはダイヤのマークにスペードマークが入ってくっついているもの。もう一つはクラブのマークにハートマークがくっついているもの。あと一つはどこかのお土産で売られていた気がする、仕掛けを何回か動かして開けるからくり箱。

 パズル二つは違うマークの組み合わせで似たようなものを解いたことがある。からくり箱も似たようなものを持っているけど…。


「二人とも手伝ってもらっていい?」

「おう。どうすれば?」「僕の両隣に立ってパズルを一つずつ手に持って。」


 コウちゃんは僕の右隣、メイちゃんは左隣に立った。コウちゃんはハートとクラブのパズル、メイちゃんはからくり箱を持っている。


「僕がメイちゃんにパズルを渡したらメイちゃんは今持っているのをコウちゃんに、コウちゃんは僕にそれぞれ回して。」


「わかった。」

「コクリ。」


 こうちゃんが返事をする。メイちゃんもうなずく。


 まず、自分の持つパズルを見る。スペードとダイヤのパズル。普通に引っ張ればスペードの方が大きくて引っ掛かるが少しねじりながら回すようにすれば外れる気がする。


「はい。メイちゃん。」


 僕のパズルをメイちゃんに渡し、コウちゃんのパズルを受けとる。


 二つ目はクラブとハートのパズル。ハートには切れ目があり、クラブにも少し細い箇所がある。角度を合わせればとれるはず。


「はい。まわして。」


 パズルを渡して、からくり箱を受けとる。


「解かなくていいのか?もう時間が少ないぞ。」


コウちゃんが少し焦っているように見える。


「どれが難しいか見ておかないと不安なんだ。このからくり箱以外はたぶんすぐ解けるから。そしてこれもたぶんいけそう…。よし。メイちゃんこれ持ってて。コウちゃんそれかして。」

「おう。」


 メイちゃんにからくり箱を渡し、コウちゃんからダイヤとスペードのパズルを受けとる。


「ここでひねって、ここを通して…。」


チャリーン。


 音とともにパズルが二つにわかれた。


「メイちゃん、これ。コウちゃん次のかして。」

「あ、ああ。」


 解けたパズルをメイちゃんに渡し、コウちゃんから次のパズルを受けとる。ハートとクラブのパズルだ。


「一度こっちに通して、向きを変えて切れ目を合わせて…。よし!」


 チャリーン。


 音とともにパズルが外れる。


「メイちゃん、これ。コウちゃん、最後の箱かして。」

「はいよ。」


 最後のからくり箱を受けとり動く場所を探す。


「すげーな…。二つで1分もかかってないぞ。何で解けるんだ?」


 コウちゃんが驚いた声で僕に聞いた。僕は解きながら答える。


「解いたことのあるパズルと形が似てれば解き方は大体同じだから。これもそうだけど…。」

「それも解いたことあるのか?」

「これと同じような仕掛けで18回で開く箱を持ってる。これは動く面が3面だから10回くらいで開くはず。」

「俺たちそれが解けなかったんだよ。」

「この箱は10回以上になると一度動かした場所をもう一度戻したりしないと次が動かないようになってるらしいよ。よし。クリア!」


 カシャ。


 最後の仕掛けが動き、僕が箱に力をかける。するとフタはスーッと滑り外れた。中にはアルファベットの「J」という文字の形をした金属が入っていた。


「すげー。本当に解いた。おーい。解けたぞ~。」


 コウちゃんが部屋の外に叫んだ。


「ホントに?この時間で?」

「マジで?解けたの?あのパズル。次はハンマー持ってくる予定だったのに。」

「うそ~。見たい見たい。」


 外にいた三人が階段をかけ降りてきた。


「ホントだ!すごいな。これは。」

「マジでとれてる。これ。ハハッ。やるな。コイツ。」

「どうやったの~?これ。教えて~。」


 みんながパズルを見て話す中、部屋の端の方に座った。


 解けてよかった。みんな喜んでる。役に立ててよかった。


 僕がそんなことを考えながらホッとしていると、前に誰かが立っていた。

 メイちゃんだった。メイちゃんは僕の前にしゃがんでノートを見せ、そして微笑んだ。


「お疲れさま。すごかったよ。」


「ありがとう。」


 僕も微笑んだ。


 メイちゃんは本当に幸せそうに笑うな~。


と、僕が思った次の瞬間!


「みんな逃げろ!」



 コウちゃんが叫んだ。


「え?」


 僕がコウちゃんの方を見ると、滝のように水しぶきが上がっていた。

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